“買い物弱者”支援が継続の危機 持続するための方法は

自宅近くにスーパーなどがなく困っている「買い物弱者」は、2015年時点で全国で824万人余りに上るという推計もあります。現在はもっと増えているとみられます。

買い物弱者への支援を継続するのが難しくなっている地域もあり、課題となっています。

買い物代行・送迎が休止の危機に

岩手県山田町田の浜地区では3年前から、公益財団法人「共生地域創造財団」の職員が高齢者を対象に週1回、無料で買い物の代行やスーパーなどへの送迎を行っていました。

 

この地区は東日本大震災のあと人口減少が続き、人口が以前の半分以下になりました。近所の商店も次々と閉店しました。

最寄りのスーパーまでは約7キロあります。バスの本数も少なく、高齢者には遠すぎる距離です。

1人暮らしで足が悪いという高齢の女性は、送迎が買い物の手段として欠かせません。「ありがたい、ありがたい、本当に感謝感激だ、ありがてえ」と話します。

しかし、ことし2月、この財団法人によるサービスは休止せざるをえなくなりました。めどをつけた3年分の運営資金を使い終えたからです。今は地域住民などからボランティアを探して運営を続ける方法を模索しています。

公益財団法人 芳賀美智子さん
「(利用者が)あんなに喜んでいるのに休まざるをえなくなったのは、すごく大変。人も必要だし財源も必要だと思っている」

補助金で支援 ボランティアの高齢化危惧する声も

行政が補助金を出すことで買い物を支えている地域もあります。陸前高田市横田地区では、住民の有志が週1回、レンタカーで高齢者を商業施設や病院に送迎しています。

運営費用はレンタカー代など年間約70万円で、そのうち市が補助金として50万円を支給し、残りを地区ごとの資金でまかなっています。

サービスを利用する高齢の女性は「こういう人たちに助けられて、陸前高田市の中心地に毎週、連れてってもらえて、本当に幸せです」と話します。

ただ、ボランティアでサービスを提供している有志の多田幸喜さん(67)は、今後高齢化が進む中で担い手を確保できるか危惧しています。

ボランティアで送迎している多田幸喜さん
「現役の世代は(ドライバーは)難しい。平日休みはそうそう取れるわけじゃない。われわれも今は元気でドライバーをしているが、年齢を重ねていくと運転できなくなってくる」

「ポイントは人が集まる場の活用」

買い物弱者への支援をボランティアだけに頼って続けるのは難しさがあり、人やお金の面で運営を続けられる仕組みが求められています。

流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は「ポイントは人が集まる場所の活用」と指摘しています。

例えば、北海道のあるスーパーでは、店舗や近隣の病院などを結ぶバスを週5日、1日3往復運行しています。経費はスーパー側が負担し、利用者に買い物をしてもらいつつ地域の生活を守ろうとしています。

また新潟県村上市山北地区では、高齢者がバスなどで通う福祉施設に、週3日、コンビニや衣料品店などが出店する「マルシェ(市場)」を設けています。

こうした「病院」や「福祉施設」という人が集まる場所を活用した事例のように、知恵と工夫をこらしてきめ細かい支援につなげていくことが求められています。
(盛岡局 橋野朝奈)
【2023年3月22日】
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