トラック“改造” 水素エンジンに 

【画像を選択すると動画をご覧いただけます】

自動車の脱炭素化が求められています。

EV=電気自動車や、水素で電気をつくるFCV=燃料電池車は、モーターを使って走ります。いま、これらとは違う形で、従来型のディーゼルトラックのエンジンを改造して「水素エンジン」にする取り組みが始まっています

ディーゼルエンジンから水素エンジンに改造

東京・江東区で2023年11月に行われた水素エンジントラックの出発式。新たに開発されたこのトラックは燃料が水素で、走行中は二酸化炭素をほとんど出しません

二酸化炭素をほとんど出さない

このトラックはもともと軽油で走る市販のディーゼルエンジントラックでした。それを、すでにあるエンジンを活用しながら、部分的に“改造”することで、水素で走れるようにしました。

ディーゼルエンジンから水素エンジンに改造

「内燃機応援したい」 ベンチャー企業の思い

開発したのは山梨県昭和町に拠点を持つベンチャー企業です。自動車メーカーでエンジン開発に携わった技術者や、長年水素エンジンを研究してきたメンバーが取り組んでいます。

水素エンジンはバッテリーを必要としないため、充電時間がかからないといったメリットがあります。

またこの企業では、日本が培ってきたエンジンの技術と雇用を守りたいという思いがあり、開発に取り組みました。

開発したベンチャー企業 太田修裕 社長
EVが進んでいけば部品点数は減るし、内燃機(エンジン)で培ってきた下請けの人たちの技術が必要なくなってくる。内燃機を応援したいという気持ちが大きい

安定した燃焼 どう実現?

しかし、ディーゼルエンジンをもとに水素エンジンに改造することは簡単ではありませんでした。

軽くて燃えやすい水素を燃料として使うと水素や空気の濃度が均一にならないなど、燃焼を安定させることが難しく、エンジンが壊れてしまうこともあります。

水素や空気の濃度が均一にならないなど、燃焼を安定させることが難しい

そこでこの企業の技術者たちは、エンジンに供給する水素や空気の流れを徹底的に分析しました。

そして、ピストンの上部の形を従来の「山型」から「皿型」に変えるなどさまざまな工夫を凝らし、エンジン内部の水素と空気の濃度を均一にすることを実現しました。

エンジンの部品の加工や交換などは全体の2割ほどにとどめながら、燃焼を安定させることができました。

実用化への道ひらく

こうして開発されたトラックは実用化が進み、2023年11月には運送会社が試験的に導入しました。観光客の荷物を運ぶため、千葉県のホテルと羽田空港の間を走行しました。

開発したベンチャー企業 太田社長
日本の強みの内燃機関を生かして、日本が世界から脱炭素化が遅れていると言われないように支援していく

普及にはインフラが課題

いま使っているディーゼルエンジントラックを改造して水素エンジントラックにできれば、水素の導入のハードルが下がるかもしれません。

一方、気になるのはインフラの状況です。業界団体によると水素ステーションの数は全国で約160か所にとどまっています。普及に向けては官民の一層の取り組みが求められそうです。
(甲府局 清水魁星)
【2024年3月13日放送】
あわせて読みたい