海の見える化でのり養殖を救え

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私たちが食べている「のり」は2000年代以降、生産量が減少しています。三重県では海の様子を“見える化”することで生産を回復させようという取り組みが始まっています。

のりが黒くならない! 生育環境厳しく

のり養殖が盛んな伊勢湾では気候変動などの影響によって、ここ数年、のりの生育環境が厳しくなっているといいます。

伊勢湾漁業協同組合の黒田秀夫さんは次のように話しました。

色落ち」は海の栄養量が低下することで、のりが黒くならない現象のことです。色落ちしてしまうと売り物にはなりません。

IoTで海のデータを“見える化”

のり生産の課題に対応しようとIoT技術を活用した研究が進んでいます。伊勢湾でのりの養殖を行っている豊田有基さんは「海洋モニタリングシステム」を使って海の状態を計測することにしました。この機械は、水温やプランクトンの量など海のデータを“見える化”してくれます。

海洋モニタリングシステムの機械

豊田さんはこれまで長年の経験と勘で収穫時期を決めてきました。しかし最近は見極めが難しくなったといいます。

このシステムをで海の状態を計測して見える化したところ、川から流れてくる、のりに必要な栄養分が植物プランクトンに奪われていることが分かりました。

得られたデータをもとにプランクトンが増える前に収穫するようにしたところ、このシステムの効果もあってか、黒く高品質なのりを出荷できたといいます。

伊勢湾漁業協同組合 黒田秀夫さん
本来持つ、黒い色ののりをとるために、(海の見える化が)かなり重要になってくると思う

高専が地元企業とシステム開発

このシステムは、鳥羽商船高等専門学校が地元の企業とともに開発しました。江﨑修央教授を中心に実験と試作を繰り返し、水質データだけでなくカメラでの見える化にも取り組みました。

江﨑修央教授(右)と学生たち

「バリカン症」の原因 カメラで判明

カメラでの映像データがのりの生産量回復につながった例もあります。三重県桑名市の養殖場では、網からのりがちぎれて消滅する「バリカン症」という現象に悩んでいました。

そこで養殖場にこのシステムを設置したところ、カメラに映っていたのは…

カモだった!

カモが、人がいない時間を狙って、のりを食い散らかしていたのです。

養殖業者の太田幸貴さんは「(カモが)網の上に乗って頭を突っ込んでパクパクやっているのは本当に衝撃だった」と話します。

その後、この養殖場はカモよけの網を設置しました。のりの生産量が回復したといいます。

このモニタリングシステムによる成果がさらに出てくれば、養殖の分野に新規参入する人が増えるのではないか。鳥羽商船高等専門学校の江﨑教授はそう考えています。

鳥羽商船高等専門学校 江﨑修央教授
例えば10年、20年、(養殖の)経験を積みなさいと言われても、なかなか難しいんじゃないか。データをもとに未来の漁業をつくっていかないといけない

カキ、サーモン、ウニの養殖にも

このシステムはのり養殖だけでなく、広島ではカキ、北海道ではサーモンやウニの養殖にも使われているそうです。
(津局 杉野希都)
【2024年2月26日放送】
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