世界で脱炭素に向けた動きが加速する中、50年ほど前に開発された日本のある技術が、発展途上国を中心に再び注目されています。
ケニアの道路工事に日本の「土壌硬化剤」
ケニアのエルドレッドで、1月に行われた道路工事。土を固めるために、半世紀前に日本で開発された「土壌硬化剤」の技術が使われています。
土壌硬化剤はカルシウムやマグネシウムを原料にしています。
ケニアの大学教授
「(ケニアの土壌は)非常に問題のある土壌だが(土壌硬化剤のおかげで)改善されている」
土の道路整備減り、日本での出荷減少
土壌硬化剤が日本で開発されたのは1975年(昭和50年)。短時間で簡単に道を整備できるとして全国各地で使われるようになりました。
しかしコンクリートやアスファルトが普及して土の道路を整備する需要が減り、徐々に使われることが減りました。
一部では今も使われていますが、出荷量は最盛期の10分の1ほどに落ち込みました。
「この技術はアフリカに必要」 社員が提案
土壌硬化剤を専門に扱う会社の社長、久保祐一さんは2016年、初めて土壌硬化剤をアフリカに出荷しました。転機となったのは、アフリカで働いた経験のある社員の提案でした。
土壌硬化剤を専門に扱う会社 久保祐一 社長
「(社員が)『この技術は絶対アフリカ地域には必要です』と、本当に目をキラキラさせながら私に言ってくれて、じゃあ一歩踏み出そうと」
久保さんたちは現地の企業と連携しながら少しずつ販路を広げていきました。
脱炭素を追い風に 15か国で使用
さらに追い風となったのは、世界的な脱炭素の流れでした。高度な脱炭素技術がない発展途上国でも取り組みの強化が急務となっています。
この土壌硬化剤を使えば、補強のために鉄筋コンクリートを使う舗装と比べ、二酸化炭素の排出量を50%以上削減できるといいます。
国が進める、脱炭素技術の海外展開の支援も受けて、アフリカや東南アジアなど世界15か国で使われるようになりました。
ケニアの教授は次のように話しています。
また別の教授は…
ケニアの教授
「農村部の道路にこの技術を利用する可能性は非常に高い」
久保さんは次のように話しています。
久保社長
「『目の前を生きていかなきゃいけない』という人たちがたくさんいて、こういうもの(土壌硬化剤)があることで、生活ができるように下支えできたらいいな」
この土壌硬化剤を専門に扱う会社では、今後ほかの国でも、パートナーとなる企業や自治体と協力して土壌硬化剤の利用拡大を目指したいとしています。
(経済番組 佐野嘉紀)
【2024年2月20日放送】
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