水素社会推進へコストをどう抑える? 北海道で取り組み始動

次世代のエネルギーとして期待される水素の普及に向けて、政府は13日、天然ガスなどとの価格差を埋めるための補助金を支給する制度の創設などを盛り込んだ、新たな法案を閣議決定しました

脱炭素に向けたエネルギーとして注目される水素ですが、課題はコストです。北海道では地域が一体となってコストを抑え、水素エネルギーを普及させようという取り組みが始まっています。

既存のガス配送網で水素を運搬

水素を燃やして熱湯をつくり駐車場の雪を溶かす

北海道室蘭市では、行政と企業が連携して水素エネルギーを普及させる取り組みを進めています。例えばロードヒーティング。水素を燃やすボイラーで熱湯をつくり出し、雪を溶かしています。ほかにも…

町工場では水素のバーナーを使って金属を切断
宿泊施設のふろも水素でお湯を沸かす

普及に向けて課題となっているのが、いかにコストを抑えるかです。

そこで、特別な技術で安全性を高めたタンクを採用しました。ガス会社が従来のプロパンガスの配送網をそのまま使って運搬することで、新たな投資を抑えることができます。

特別な技術で安全性を高めた水素タンク
ガス会社が既存の配送網で水素を運ぶ

ガス会社 前山芳輝 常務取締役
既存のインフラに本当にうまくのせて使えるかどうか。コスト以外、使う側でも利便性が同等になれば需要はある程度広がる

「グリーン水素」コスト抑制へ研究

二酸化炭素を出さない電力からつくる「グリーン水素」の製造コストを抑える取り組みも始まっています。

北見工業大学と旭川高専の研究グループは、水を電気分解して水素と酸素に分ける装置の改良を進めています。

水を電気分解して水素と酸素に分ける装置
生成した水素が気泡となって浮かび上がった

この装置で特に重要なのが「セル」と呼ばれる部品です。原料はこれまで主にレアメタルのプラチナが使われ、コストが高くなる要因となっていました。

部品の「セル」

そこで代わりとなる原料を探した結果、「ニッケルCNO」を見つけました。豊富にあるニッケルから作ったセルは、価格を10分の1ほどに抑えられるといいます。

ニッケルCNO。部品の原料に使うことで価格を抑えられるという

プラチナに比べて電気分解の効率は劣るものの、風力発電のように出力が変動する電力でも安定して水素を生み出せることが分かりました。

風力や太陽光で発電したものの使われずに余った電力を有効活用でき、コストを抑えることにつながるとして、研究グループは期待しています。

石狩湾の洋上風力発電。風力や太陽光発電の余剰電力で水素をつくればコストを抑えられるという

北見工業大学 小原伸哉 教授
水素を貯蔵して、例えば冬場の暖房用エネルギーとして使う。クリーンな水素を使って、われわれ電力や熱をまかなう。そういった流れにするべきではないか

地域ぐるみで取り組むことで見えてきた課題は、水素エネルギーのコスト削減にむけて他の地域でも参考になりそうです。
(札幌局 黒瀬総一郎)
【2024年2月14日放送】
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