宿泊客を増やすには・・・“個性”で勝負

温泉などの観光資源に頼るだけでなく、どうすれば宿泊客を増やせるのか。宿泊施設がみずから“個性”を打ち出すことで集客アップにつなげようという取り組みが広がっています。その“個性”とは?

温泉街を「分散型ホテル」に

山口県長門市にある俵山温泉はかつて多くの湯治客でにぎわい、昭和30年には旅館が44軒ありましたが、今は16軒に減少しました。

女性客の一人は「昔みたいに、にぎわいを取り戻したらいいなと思う」と話します。

かつての温泉街。湯治客でにぎわった

そこで長門市と地域住民などは「分散型ホテル」というコンセプトで俵山温泉を活気づけるプロジェクトを立ち上げました。“町じゅうを1つのホテルに見立てる”ことを目指しています。

構想では、運営や宣伝、予約などを一括して受け持つ新たな会社を立ち上げます。そして温泉施設をフロントにするのです。

利用客は、気になる旅館を選んだり町の飲食店で食事したりと、好きなところを組み合わせて温泉街を楽しんでもらおうという考えです。

俵山温泉の活性化を手がける 藤永義彦さん
小さい旅館が分散しているので、それを一つの宿として見ようと

この取り組みに参加を検討している、ある旅館は、客が大幅に減って廃業も考えています。しかし分散型ホテルの取り組みで宿泊客がいない部屋を借り上げてもらうことで、利用料を受け取ることできてメリットは大きいといいます。

「今こっちは使っていない」。旅館の代表が館内を案内してくれた

プロジェクトでは今後さらに、空き店舗に飲食店や雑貨店の出店も促して活性化につなげたいとしています。

藤永さん
健康をテーマにしたテーマパークになったらいいなと思う

「ゼロエネルギーホテル」でインバウンド客ねらう

徹底した環境への配慮をアピールポイントにした宿泊施設もあります。愛媛県西条市では2023年「ゼロエネルギーホテル」が開業しました。

環境省が進める、ビルなど建物全体のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指す「ZEB(ゼブ)=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」に、ホテルとして初めて認証されました

エネルギー消費量の実質ゼロを達成するために、まずは「省エネ」でエネルギー消費量を50%ほど削減します。そして必要な電力はみずからエネルギーをつくり出す「創エネ」でまかなう設計です。

このホテルでは省エネの取り組みとして、すべての部屋で冷暖房効果を高めるため二重窓を採用しました。

二重窓を採用

また照明を最小限にするなど、むだな電力を徹底して削減しました。

一方創エネの取り組みは、太陽光パネルをホテルの屋根だけでなく、一体となって開業した商業施設にも設置しました。

昼に発電したエネルギーをためる蓄電装置も備え、エネルギー消費量の実質ゼロを実現しました。

蓄電装置

ホテルの運営会社 明山淳也 社長
環境配慮は欧米の方を中心に意識が高まっている。直接インバウンドの方を呼び込めるホテルになっていきたい

このホテルはインバウンド客を中心に環境に配慮したいという利用客のニーズを捉えようとしていて、全国の自治体から視察にも訪れているそうです。
(山口局 中尾貴舟、松山局 伊藤瑞希)
【2024年1月24日放送】
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