EV充電インフラ 維持管理に課題

EV=電気自動車の普及には、ガソリンスタンドのようにいつでもどこでも充電できるインフラが必要です。

全国に設置されているEVの充電設備(公共用)の数の推移を見ると、国が10年前から補助金を出して数を増やしてきたものの、4年前の2019年に3万口を超えたあとは伸び悩んでいます。中国やアメリカなどと比べて普及が遅れているのが現状です。

さらに今、すでに設置された設備の老朽化維持管理の課題が浮かび上がっています。

EVで片道30キロ通勤 道中の充電設備は「故障中」

EVを8年前から利用している男性は、自宅から職場までの約30キロをEVで通勤しています。

充電5時間で「100キロくらい走る」

しかし2年ほど前に思わぬ事態に直面しました。通勤の時に利用した充電設備が故障で使えなくなってしまったのです。

利用していた充電設備が故障
別の場所の設備も故障中で、今も修理されていない

EVを利用している男性
「EVの一つのわずらわしさは、いつ電気が“電欠”になって(車が)止まるかどうかという恐怖心。(充電設備は)社会的インフラとして非常に重要なものだと思うので…」

故障報告 約10年で2万3000件超

充電設備の情報をまとめている会社「ゴーゴーラボ」によると、利用者からの故障の報告は、2014年からの10年近くで2万3873件に上っています設置から時間がたち、老朽化したことなどが原因だとみられます

事業から撤退する修理業者も

修理がままならない現状も見えてきました。山梨県道志村にある「道の駅どうし」は13年前に充電設備を導入しましたが、最近、故障や不具合が起きやすくなったといいます。

道の駅の支配人 柏村承徳さん
「どうしてもコネクター部分は、お客様が出し入れで直接触れて扱うので、部品が壊れて破損してしまう」

故障しやすいというコネクター部分

この道の駅は修理やメンテナンスを業者に依頼してきましたが、この夏に「事業から撤退したため修理はできない」と告げられました。EVの普及が遅れて採算がとれないことを背景に、撤退する業者が出てきているのです

また、ほかの場所では「設備が古く必要なパーツが製造されなくなったため直せない」というケースがあることも分かりました。

「国がメンテナンスサポートを」

道の駅では自分たちで修理をして何とかサービスを継続していますが、充電設備を長く使うためには、国が維持管理をサポートすることも必要だと考えています。

道の駅の支配人 柏村さん
「設置にあたって『国から補助を出しますよ』だけでは済まない問題がほかにもあるのかなと。メンテナンスのような継続して利用するためのサポートに保証がでるといいかと思う」

経済産業省は2030年までに全国に設置する充電設備の数値目標を30万口と大幅に引き上げ、設備を増やすための予算を拡充しようとしています。ただ、維持管理への支援制度は今のところありません

設備を設置したあと、どう維持して活用するのかも、あわせて考えるべきタイミングに来ているのではないでしょうか。
(政経・国際番組部 亀谷佳人)
【2023年11月14日放送】
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