「培養肉」とは? 細胞を増やして作るチキンの可能性と課題

培養肉」を知っていますか?ニワトリの細胞を増やして作った「培養肉のチキン」の販売が6月、アメリカで初めて承認されました。どんな味なのでしょうか?

食感・味 「チキンそのもの」

ニワトリから採取した細胞で作られた培養肉のチキン。食べてみると、食感も味もチキンそのものという感じで、培養して作ったとは、言われなければ分かりません。

アメリカ・カリフォルニア州で培養肉の開発・販売を行っているスタートアップ企業「グッド・ミート」は、植物由来の食品を製造するかたわら、7年前から培養肉の研究を進めてきました。

この企業を訪ねると、担当者が案内しながら「動物から採取した細胞を仕分ける場所。うまく育ちそうな細胞を見極めている」などと説明してくれました。

動物から採取した細胞を仕分ける場所

培養肉 どうやって作る?

培養肉を作るにはまず、元気な細胞を選び、プロテインやミネラル、脂肪、糖分などが含まれた培養液の中に入れます。餌に含まれているものと同じ成分を細胞に与えるのです。

そしてニワトリの体温に近い温度で温めていくと、細胞が増えていきます。

細胞が一定の量まで増えたら、さらに増やすため巨大なタンクに移動させます。タンクで1か月ほど培養したあと培養液を取り除きます。

巨大なタンクに移し1か月ほど培養

そして特殊な機械で加工すれば、もも肉や胸肉が完成します。

温室効果ガス削減・動物愛護につながるか

この企業は、家畜が出す温室効果ガスを減らせるほか家畜を殺す必要がなく、動物愛護の観点からも優れていると強調しています。

培養肉の開発・販売を行うスタートアップ企業 共同創業者兼CEO ジョシュ・テトリックさん
「アメリカで販売を承認されたことは大きなインパクトがある。将来的には、飽和脂肪やコレステロールが少なく、多くの栄養素を含む鶏肉・牛肉・豚肉を作りたい」

多額のコストが課題

一方、培養肉の製造には多額のコストがかかるという課題があります。現在この企業は販路を広げるために、製造費用の大半を負担してレストランに提供しています。

今後は生産設備を増やすことでコストを抑えていきたいとしています。

レストランに提供されている培養肉で作った料理

日常的に食べるのは「まだ先」と専門家

専門家からは、広く普及するにはまだ時間がかかるという指摘も出ています。

食品安全センター 政策担当部長 ジェイディー・ハンソンさん
「まだ十分な量の培養肉をたくさん作れるというわけではない。培養の技術は維持費が高額で、市民が日常的に食べるようになるのは、まだ先だろう」

イギリスの調査会社によると、世界の培養肉の市場規模は10年後~20年後の間に6倍以上になると予想されています。培養肉を作る動きが豚肉や牛肉にも広がれば、食料危機を救うことにもつながるかもしれません。

今回取材したスタートアップ企業は、いずれ日本市場にも展開したいとしています
(ロサンゼルス支局 山田奈々)
【2023年9月14日放送】
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