プラスチックの“燃やさないリサイクル” メーカーの模索

日本国内の廃棄プラスチックは87%が有効利用されています(2021年)。しかしその内訳を見ると、6割以上が「燃やした際に出るエネルギーの活用」となっていて、二酸化炭素が出るという課題も指摘されています。

そこで今、プラスチックを燃やさずに再生利用できるようにする新たな取り組みが広がっています。

廃棄する薬の包装シートが再び材料に

大手製薬会社「武田薬品工業」は6月から、薬を包装するシートの再生利用に取り組んでいます。

この会社の工場の一つでは、薬を製造する際に出る包装シートの切れ端が、年間約101トン廃棄されています。

焼却でリサイクルされていた切れ端

この切れ端はこれまで焼却によるリサイクルをするしかありませんでした。素材にプラスチックとアルミニウムが使われていて、分離するのが難しかったためです。

そこで新しい技術を導入した廃棄物処理の会社「オリックス環境」の協力により、素材へのリサイクルを始めました。

専用の機械に廃棄する包装シートを入れると、高温でかくはんされ、プラスチックとアルミニウムが分離されます。分離されたものはどちらも、新たな材料として販売できるようになりました。

廃棄するシートを機械に投入すると…
分離され、新たな材料として販売できる

この技術で、これまで焼却で出ていた二酸化炭素を94%削減できるといいます。

廃棄物処理の会社 営業第一部 井上昌則 副部長
「素材として、もう1回原料化できる。現状で処理している焼却よりは、はるかに高度な処理と言える」

この大手製薬会社は今後、廃棄される包装シートの大半を新技術を使った方法でリサイクルする予定です。

大手製薬会社 光工場 EHS室 山口健一 室長
「新しい技術を用いて、焼却処分するよりもマテリアル(素材)リサイクルをする。より環境負荷の低減に至る技術・方法を選択しなければならない」

この取り組みは、ほかの製薬会社に広げようという動きが出ているそうです。

廃棄プラスチック混ぜ「一点もの」に再生

燃やさないリサイクルをより手軽に実現しようという会社もあります。スマホケースなどを作っている会社「Hamee」は、さまざまな原料が含まれるプラスチック製品を分離せずそのまま混ぜ合わせることで、手間やコストを抑えて再生利用します。

スマホケースなどを作っている会社 宮口拓也さん
「プラスチックとプラスチックを混ぜているので、一点ものの模様が特徴になっている」

子ども用品の大手メーカー「ピジョン」は、この技術の活用を始めました。哺乳瓶などの製造過程で出てしまう廃棄プラスチックの再生を依頼し、客に配布する記念品などさまざまな用途への活用を模索しています。

廃棄プラスチックを再生。「ビジュアルが宝石に近い」

子ども用品の大手メーカー デザインソリューション部 久保田岳さん
「取り組めてこなかった(再生利用の)広がりをこのプロダクトに感じている。環境配慮への取り組みのきっかけづくりになるのかなと」

環境にやさしく、資源高の中での有効利用という意味でも、こうした動きの広がりが期待されます。
【2023年8月16日放送、初回放送6月26日】
あわせて読みたい