温室効果を抑える“自然冷媒”とは

暑い日が続きエアコンを使うことが増えています。空気を冷やすために欠かせないのが「冷媒」という物質。これまで主に「フロン」が使われていましたが、温室効果による悪影響が問題になってきました。

そこで今、活用が広がっているのが、自然からつくられた「自然冷媒」です。

国内すべての冷凍機を自然冷媒へ 大手食品メーカー

大手食品メーカー「ニチレイフーズ」の山形県天童市の工場。2022年から冷凍食品の製造に乗り出し、新たに二酸化炭素などの「自然冷媒」を使った冷凍機を導入しました。

導入された冷凍機
自然冷媒の使用が表示されている

会社は気候変動対策として、2030年までに全国の工場の冷凍機をすべて自然冷媒を使ったものに切り替えることにしています。

大手食品メーカー 佐藤友信 部長
「自然冷媒を使うことによって、温室効果をいかに食い止めるか。冷凍食品でサステナブルな社会をつくっていきたい」

冷媒の仕組みは?

「冷媒」は空気から熱を奪うことで冷却を行います。冷媒には「代替フロン」が多く使われていますが、地球温暖化につながる懸念が指摘されています。

そこで注目されているのが、二酸化炭素やアンモニアなどを使用した「自然冷媒」です。温暖化への影響をフロンの1万分の1に抑えられるケースもあります。

課題は「夏の暑さ」 研究開発進む

しかし二酸化炭素の特性として、気温が高くなると冷却機能が働きにくくなるため、特に夏場は制御が難しくなります

産業用の冷凍機の製造を手がける会社「日本熱源システム」は11年前から、夏場でも安定して稼働する冷凍機の研究開発を始めました。

冷却機能を保つためには、二酸化炭素を安定した圧力で制御しなければなりません。そこで、冷媒をタンクに送る量を調整する「バルブ」が重要な役割を果たします。4年かけて、自動で一定の圧力を保つ技術を開発し、40度近い気温の中でも安定して冷却できるようになりました。

冷媒をタンクに送る量を調整する「バルブ」

この会社は食品会社などからの受注が増加していて、23年3月には工場を拡張し、生産能力を3倍に増強しました。見学も相次いでいるといいます。ある食品会社の担当者は「以前から興味はあったが、今後の検討にはぜひ加えていきたい」と話していました。

見学が相次いでいる

産業用冷凍機の製造を手がける会社 瀬戸山謙治 取締役
「地球の環境に非常にやさしい自然冷媒、これを用いた冷凍機、幅広く普及できるように、日本のトップランナーとして頑張ってまいりたい」

家電に導入できるか?

こうした自然冷媒は二酸化炭素を使いますが、フロンガスより温暖化への影響が小さいということです。

ただ、自然冷媒をエアコンや冷蔵庫などの家電に導入するのは、まだ技術的に難しいといいます。大手電機メーカーの「パナソニック」が研究所を新設して空調向けの自然冷媒の研究を加速させるなど、導入に向けた動きが広がっています。
(経済部 小野志周)
【2023年7月25日放送】
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