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建物の内装などに使われるタイルは通常、窯で焼いて作られます。そのため生産の過程で二酸化炭素(CO2)が出るという課題を抱えていました。
岐阜県では、あるメーカーが「焼かないタイル」の開発に取り組み、脱炭素を実現しました。いったいどのように作っているのでしょうか。
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CO2排出・コスト上昇 タイルメーカーに課題
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岐阜県多治見市にあるこのタイルメーカーは、美濃焼の技術を生かしてマンションの外壁用のタイルなどを約60年にわたって生産してきました。正月や盆を除いて毎日、窯に火を入れてきました。
しかし、この方法だと生産過程で二酸化炭素を排出してしまいます。
さらに燃料費の高騰によって生産コストが上昇し、経営を圧迫することも大きな課題となっていました。
突破口は「水酸化カルシウム」
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そうしたなか、このメーカーはある原料に目をつけました。二酸化炭素と反応して固まる「水酸化カルシウム」です。
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この原料をタイル用の鉱石と混ぜて、空気中の二酸化炭素を吸わせて固めれば、焼く必要がなくなると考えました。
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当初、焼かない手法では強度を十分に出せず、タイルとしての基準を満たせませんでした。そこで素材や調合の割合を変え、100回以上試作を重ねました。
その結果、十分な強度があり、量産もできる配合にたどり着いたのです。
この焼かないタイルの実用化によって、年間6000万円ほどかかっていた燃料費を削減することができました。
タイルがCO2を吸収する!?
しかも、二酸化炭素を出さずに作るタイルは、タイルそのものが二酸化炭素を吸収するといいます。
実験しようと、タイルが入った袋に濃度99%の二酸化炭素を入れました。すると、約20秒でタイルに貼りつくように袋がしぼみました。
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硬くなったあとも数十年にわたって二酸化炭素を吸い続けるということです。
タイルに含まれる水酸化カルシウムには、時間をかけて二酸化炭素を吸収する特性があり、その効果が現れました。
建材商社「時代に合っている」
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取材した日、タイルメーカーの加納芳喜社長たちが建材商社を訪問し、焼かないタイルの商談に臨みました。
商品を紹介する加納社長。商社の担当者は次のように話しました。
建材商社 担当者
「時代に合っている感じがして、とてもいい商品だと思う。壁にかけたりして、アートみたいなかたちでも楽しめるかなと思う」
焼かないタイルで「地球に恩返しを」
メーカーはこの製品に活路を見いだし、火を入れ続けてきた窯を閉じる決断をしました。焼かないタイルで再出発です。
タイルメーカー 加納芳喜 社長
「地球に負荷をかけるだけじゃなしに、地球に何か恩返しをしたい。“焼かないタイル”というものを新たな形として知られていったらいいなと思う」
メーカーによると、価格は一般的な内装用のタイルと大きく変わらないということです。
生産に必要な機械なども従来のものを再利用できているということで、メーカーは今後、さらにコストカットを図り、多くの人が使いやすい価格を目指したいとしています。
(岐阜局 齋藤恵実)
【2024年7月19日放送】