CO2を資源に 最先端の「カーボンリサイクル」研究が瀬戸内の島で進むわけ

二酸化炭素(CO2)を資源として有効活用しようという技術「カーボンリサイクル」が注目されています。排出削減が課題となるなか、瀬戸内海に浮かぶ「長島」で最先端の研究が進んでいます

“やっかい者”を資源にして パワー半導体の材料を

広島県大崎上島町の「長島」には、二酸化炭素を資源にすることを目指し、全国から大学や民間企業など8つの研究チームが集まっています。

東北大学の福島潤助教の研究チームは、太陽光パネルなどをつくる際に出る産業廃棄物(余ったシリコン)を活用してカーボンリサイクルを進めようとしています。

余ったシリコンを粉末状にして特殊な装置に入れ…
2つのチューブからCO2を入れていく
加熱すると…
炭化ケイ素(SiC)ができる

この炭化ケイ素はEV車などに必要なパワー半導体の材料として期待されています。

東北大学 福島潤 助教
CO2という“社会のやっかい者みたいなもの”から、新しく有価物をつくっていく。非常に大きく貢献できるような技術だと思っている

なぜ島に研究チームが集まる?

この島に研究チームを集めたのは、国の研究開発法人NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)です。

活用したのは、島内にある次世代の火力発電所です。発電の際に二酸化炭素を90%以上回収できます。この二酸化炭素をそれぞれの研究チームに送り、盛んに研究が行われる環境を整えたのです。

国立研究開発法人NEDO 吉田准一 主任研究員
いろんな研究者が『私もやってみよう』とチャレンジする人が増えて、ここがカーボンリサイクルを実際に世間に出していくための起爆剤になればいい

新たな航空燃料につながる研究も

豊富な二酸化炭素を生かして、クリーンエネルギー開発の基礎研究を進めているチームもあります。日本微細藻類技術協会(IMAT)の研究現場には、たくさんのパイプが並んでいました。

パイプの中に入っているのは、池や沼などに生息している「微細藻類」と呼ばれる植物プランクトンです。

この植物プランクトンは二酸化炭素を吸収し、成長の過程で油を蓄えます。

この油は、二酸化炭素の排出量を大幅に抑えられる新たな航空燃料として期待されています。

課題は量産化です。微細藻類は成長のスピードや油を蓄える量もさまざまです。供給された二酸化炭素を使って、どの藻類が量産化に向いているのか、あらゆる条件で観察しデータを集めています。

日本微細藻類技術協会 青木慎一 研究開発部長
私たちの研究成果がみなさんの産業の加速に役立てればと思う。微細藻類を利用することで、よりよい環境を目指せればと思っている

この島の研究施設は今後さらに増えていくということです。二酸化炭素を資源にするさまざまな研究が集積する島。研究成果の社会実装に向けて期待がふくらみます。
(広島局 山本直樹)
【2024年2月16日放送】
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