中小企業の省エネ成功 “現場を知る力”がカギに

電気料金やガス料金が高騰し、企業にとって切実な問題になっています。中小企業の中には、全従業員から省エネのアイデアを募集したり、専門家に省エネポイントの診断を受けるなどして、エネルギーコスト削減に大きな成果を上げているところもあります。具体例から省エネのヒントを探ります。

全従業員にアイデア募集 9割以上を実行

大阪府大東市の金属部品メーカー「大阪中央ダイカスト」は溶解炉に使う燃料のガス代高騰に悩み、3年前に全従業員250人から「省エネのアイデア」を募集しました。

会社の省エネを従業員の「自分ごと」に(募集時の様子を再現)

ポイントは、省エネを会社任せでなく“自分ごと”として捉え、それぞれの持ち場などからアイデアを出すことです。そのためにも、省エネで削減できた金額の半分を従業員全員に還元すると宣言しました。

その結果815件のアイデアが寄せられ、そのうち744件を実行しました。エネルギーコストを年間1700万円削減しました。

寄せられたアイデアの9割以上を実行した

出されたアイデアの中で大きな成果を上げた一つが、勤続40年のベテラン社員が出した「材料を溶かす前にあらかじめ溶解炉の上に乗せて温めておく」というアイデアです。炉の中との温度差を減らしたことで、年間14万円のガス代削減につながりました。

「この上にものを置いたらいいんじゃないか(画像右側)という意見があった」。製造部の包清秀泰係長が説明

また別の従業員からは「溶解炉にふたを作る」というアイデアが寄せられました。作業中に熱が逃げないようふたの形を工夫したところ保温効果が高まり、年間77万円以上を削減したといいます。

金属部品メーカー技術部 森 広史 部長
「効率のよいものづくりをするとか、社員にそういうふうな考えが芽生えてきている。それが究極の省エネ」

専門家に省エネ診断を依頼 改善ポイント明確に

和菓子作りであんを練る時などに大量の熱を使う

外部の目を通して省エネを進めようという企業もあります。千葉県成田市の和菓子製造会社「米屋」では、あんを練り上げる時などに大量の熱を使います。2022年度のエネルギーコストは1億円上昇しました。

会社は、経済産業省が所管する団体から派遣される省エネの専門家に、工場の省エネポイントの診断を依頼しました。

診断の様子を取材に行くと、専門家2人が工場に熱源を供給するボイラーの機器などを細かなところまで入念にチェックしていました。ボイラーは工場の消費エネルギーの4割を占めているといいます。

省エネ診断を行う専門家

そして専門家は、蒸気を送る配管に目をつけました。サーモグラフィーで見ると、断熱材がまかれていないところの温度が周りより高くなっています。

専門家は「このバルブには断熱材が施されていない。その分、バルブから放熱が多くなってロスがある」と指摘。設備を少し補強するだけで、大きな省エネ効果が得られると伝えました。

半日かけた診断で、この会社が指摘を受けたポイントは約10か所。1か月後には削減できるコストなどを詳細にまとめた提言書を受け取るということです。

和菓子製造会社 渋谷 敦 製造部長
「非常に参考になったというか、目からうろこが落ちるような。われわれだけでは気づかないところを、いろいろ気づかせていただいたので、早速着手して検討したい」

こうした診断によって、工場の場合、7%~20%のエネルギーコストを削減できるケースが多いということです。専門家に診断を依頼する企業は、22年は8割近く増えたということです。
【2023年7月21日放送】
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