視覚や聴覚に障害のある人がより安心して出かけられるよう、「振動」に着目した最新技術の開発が進められています。
靴に装着した機器 振動して道案内
東京都内のスタートアップ企業「Ashirase」は、目の不自由な人の外出を支援するシステムの開発を進めています。
専用のアプリで目的地を設定すると、靴に装着した機器が、位置情報などをもとに振動して道案内をします。
システムの開発に協力した谷田光一さん(41)は、23歳の時に網膜剥離で弱視になりました。初めての場所に行く時はスマホの音声案内などが頼りですが、音声に集中すると周囲の状況に気を配ることができないといい、振動のサポートを得ることで余裕が生まれるのではないかと期待しています。
システムの開発に協力した谷田光一さん
「周囲の環境に耳や目を向けながら、かつ足でナビゲートしてもらうことができるので、人混みが多いところにも積極的に足を向けることができるのではないか」
開発した会社では、今後、要望があった横断歩道や信号など、きめ細かい情報も伝えられるよう、改良を重ねていきたいとしています。
開発するスタートアップ企業 千野 歩 代表取締役
「より安心感とか心構えができた状態で歩いていける。そういった情報を増やしていくことが大きな課題」
レーダーと腕時計型の機器 車などの接近知らせる
耳が不自由な人の外出をサポートする製品の開発も始まっています。松島亜希さんは重度の難聴で、補聴器をつけても後ろから近づく車や自転車に気づかないことがあるといい、「いつも怖くて、しょっちゅう振り返りながら歩くようにしている」と話します。
松島さんは、京都市で行われている、外出をサポートする製品の体験会に参加しました。背中に取りつけるレーダーと、腕時計型の機器を体験しました。
これらの機器は大手電機メーカー「パナソニック」が開発を進めています。車が近づくと背中に取りつけたレーダーが検知し、腕時計型の機器が振動して知らせます。
周囲の環境や対象の速度などにもよりますが、最も早い場合は5秒前に接近を知らせるということです。
松島亜希さん
「子どもの安全を見ながら自分の安全も見ないといけないのが憂うつだったが、(子どもの)安全を見ながら散歩できるかなと期待している」
開発する大手電機メーカー 松田淳一プロジェクトリーダー
「連続して車とか自転車が来る場合は、通知が難しくなってくるところはある。安心感を持って使っていただけるような商品を目指していきたい」
視覚に障害のある人はふだん「耳」から得られる情報を活用し、聴覚に障害のある人は「目」からの情報を活用しています。これらを邪魔しないように振動を使うということです。
ただ、こうしたシステムや機器は利用者の安全を保証するものではありません。社会全体でバリアフリー化を推進していくことが欠かせません。
【2023年6月14日放送】
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