人手不足を乗り越えろ!トンネル工事自動化の最前線

建設業界は作業員不足が課題です。特に限られた空間で作業するトンネル工事は作業員の負担や危険も多く、人が集まりにくい状況です。この課題を乗り越えようと、自動化技術の開発が進んでいます。

削岩機のドリル 熟練の操作を自動化

山岳地のトンネル工事。人が大型「削岩機」のドリルのアームを操縦して岩に穴を開け、その穴に爆薬を仕込んで発破して掘り進めていきます。ドリルの操縦者は経験と勘が必要で、技術の伝承が課題です。

岩に爆薬を仕込む穴を開け…
発破して掘り進める

機械メーカーの「古河ロックドリル」は、このドリルの自動化に力を入れています。

全自動のドリルは、トンネルの高さや幅を入力すると、爆薬を仕込むのに必要な穴の位置が表示され、すべての穴を開ける最短ルートを割り出してくれます。

穴の位置や、すべての穴を開ける最短ルートを表示

安全のため操縦席に人が乗り込みますが、自動でアームが動きドリルで掘り進めるため、操作する必要はありません

この機械メーカーが、建設会社から作業員不足を補いたいと相談を受けて開発したところ、ほかの企業からの発注も増えているといいます。

機械メーカー 大洞健治さん
「将来的に技能を持った技術者の確保が難しくなっていく。トンネル現場の中に、人(作業員)がいない環境をつくっていけたらと思う」

危険伴う「支保工」設置 ロボットが担う

トンネル内の危険な作業を自動化することで、作業員の安全を守る動きもあります。大手建設会社「前田建設工業」は、「支保工(しほこう)」と呼ばれる鉄の枠を設置するロボットを開発しました。

この鉄の枠は、掘削したばかりのトンネルの壁面を支えるために使われます。設置するには細かい調整が必要で、人がトンネルの先端に入る必要があり、岩盤の崩落などの危険があるといいます。

開発したロボットは自動でトンネルの形状を計測します。アームを1センチ単位で調整し、支保工を設置することができるといいます。

会社はこのロボットの導入現場を増やすことで安全性を高め、ひいては人材の確保にもつなげたいと考えています。

大手建設会社 土木事業本部 水谷和彦さん
「危険作業だと、なかなか若手が入ってこない。作業が機械化され、かっこいい機械に乗れれば、トンネル業界にも人が入ってくる環境になるのでは」

このロボットを導入することで作業のスピードも上がって、工期の遅れが減るメリットもあるといいます。安全を守りながら効率化も図ることができれば、業界にとってメリットが大きそうです。
【2023年8月18日放送、初回放送5月15日】
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