“月に住む” 企業の挑戦

アメリカが主導し日本も参加する国際的な月探査計画「アルテミス計画」では、2025年を目標に宇宙飛行士の月面着陸が計画されています。

月では将来、月面に建物を建設し人が住むことも想定されていて、企業の間で研究が始まっています。

「月に木造建築を」日本の住宅メーカーが南極で挑む宇宙への夢

平均気温がマイナス50度以下の南極の内陸部。ここに、住宅メーカー「ミサワホーム」が、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や国立極地研究所と開発した「木造の基地」があります。

雪原に建つ黒い建物に近づくと…
日本の住宅メーカーなどが開発した「木造の基地」

開発の最終目標は“月に住むこと”です。この木造の基地では、月と同様に極寒の南極で、気密性や耐久性の試験を行っています。

木造の基地の内部

木造の建物で“月に住む”ことを目指すのは、理由があります。月への運搬コストは1キログラム当たり約1億円とも言われています。金属より軽い木を使うことで、運搬コストを減らせる可能性があるのです。

この住宅メーカーは、木を接合する特殊な接着剤を開発しました。月の過酷な環境にも対応できると考えています。接着剤が木の断面に無数にある穴に入り込んで固まり、強い力で接着させ気密性を高めます。

この技術には、「月面に木造建築を」という住宅メーカーの技術者の夢も込められています。

かつて昭和基地で宿舎の改修などに携わった秋元茂さん

住宅メーカー 技術部 秋元茂さん
「南極も同じだったが、極限の地域にいればいるほど木材の温かみを感じる。宇宙でも今後、使っていければいいと考えている」

月面で精密な建設作業を ロボットアーム開発進む

月面での建設作業を見据えたロボットの開発も始まっています。東京・品川区の従業員24人の機械メーカー「小野電機製作所」がいま開発を進めているのが、遠隔操作ができるロボットアームです。

開発を進めているロボットアーム

この機械メーカーは複雑な金属加工が得意で、医療や介護用のロボットをつくっています。JAXAと共同で月面などを想定した探査ロボットを手がけたこともあります。

開発しているロボットアームの特徴は、スナック菓子もつかめる精密な動きです。慶應義塾大学が開発した技術「リアルハプティクス」(ものの硬さを感じながら操作できる技術)を使っています。

スナック菓子を壊さずにつかむこともできる

月では宇宙服や手袋を装着する必要があり、繊細な作業は難しいと見られています。このロボットアームを宇宙船などから遠隔で操作することで、建設などさまざまな細かい作業に活用できるのではないかと期待しています。

機械メーカー 小野真徳 取締役
「宇宙産業は地上でのロボットと異なり、精度とか、求められているクオリティー、完成度が非常に高い。非常に有意義な会社のビジネスと思っている」

月に家を建てて人が住むようになるのは、もう少し先のことかもしれません。しかし、登場したいずれの会社も、あえて月面という厳しい環境を目指して技術開発を進めることで、建築や医療、介護といった身近な分野でも技術を進化させていきたいとしています。
【2023年4月10日放送】

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