月面探査に商機 ロボット開発者の挑戦

  • 企業・産業

アメリカの「NASA」や日本の「JAXA」が今、月面の探査計画を進めています。将来的には長期間、人を送り込んで探査を行うことを目指していて、居住空間をつくれないかという構想などもあります。月面にビジネスチャンスを見いだす企業が続々と参入しています。

居住し、野菜を作り、人工の海も…?

東京都内で3月に開かれた宇宙産業の展示会。大手ゼネコンなどが構想中の居住施設が展示されました。

遠心力で地球に近い重力をつくり出し、施設内部の空気はもちろん、人工の海も再現する計画です。

月で野菜を栽培する「月面農場」も展示されました。栄養が入った袋の中でレタスなどを育てられないかと研究が進められています。

展示を見た子どもの1人は「科学の進歩が感じられます」と笑顔でした。

転んでも起き上がる探査ロボット 元四駆部品エンジニアが開発

会場にはNASAの月面探査に参加する予定のロボットもありました。バッテリーとモーターで動き、地球からの遠隔操作で月面を撮影しながら、水などの資源がないか探査する計画です。

ロボットの特徴は、しっぽのような部品。凹凸の多い月面でもし転んでも、勢いをつけて元に戻ります。

このロボットを開発したのは、東京都内のベンチャー企業「ダイモン」の社長、中島紳一郎さん(56)です。

11年前、月面探査用の車を開発する有志のプロジェクトに参加しましたが、月面にはたどり着けませんでした。

しかし、あきらめきれずに自分でロボットをつくることにしました。

中島さん

「せっかくかかわることができたので、途中でやめてしまうのはとてももったいない。必ず月面に行ける時代が来る」

中島さんは元自動車部品メーカーのエンジニアで、四輪駆動車の部品が専門でした。その時培ったノウハウがロボット開発に生かされています。

「手のひらサイズ」「500グラム」

中島さんが目指したのは、月の隅々まで探査できる「小型」で「軽い」ロボットです。

しかしタイヤを小さくすると、モーターの力が伝わりにくくなり、砂地が多い月ではスリップしやすくなります。

そこでタイヤの形を工夫しました。半球状にしてタイヤの側面に深い溝をつけて、かき出す力を強くしたのです。

その結果、大きさは大人の手のひらサイズで、重さは約500グラムに抑え、悪路も力強く走れるようにしました。

完成したロボットは2022年中に、アメリカの民間企業が打ち上げるロケットに乗って月に向かう予定です。

中島さん

「好きなことに打ち込んで、突破するまでの壁はあるけれど、諦めずにやれば月面探査は個人でもできる時代になると思っているので、それを実証したい」

月面映像の配信なども構想

中島さんの会社では将来的に、探査したデータを販売したり、リアルタイムで月面の映像を配信して月を旅行しているような体験ができるサービスを提供したりすることも考えているそうです。

将来的に、月への観光旅行も構想される時代です。大企業からベンチャー企業まで月に可能性を見いだしています。
【2022年4月4日放送】