原材料や光熱費などの高騰で、水産加工会社が苦境に立たされています。かまぼこなどの生産で知られる宮城県塩釜市の水産加工会社では、ある工夫で売り上げを伸ばすなど実績を上げています。どんな工夫なのでしょうか。
ささかまぼこと牛タンがコラボ 付加価値商品で販路拡大
宮城県塩釜市で水産加工品を生産する会社「武田の笹かまぼこ」。原材料費などの負担が増す中、新たに、ささかまぼこをオリーブオイル漬けにした缶詰を開発しました。県内で有名なチェーン店とコラボし、牛タンを使うなどして高級感を高めました。
価格は1缶1000円ほどで高めですが、お酒を好む30~50代にターゲットを絞り、おつまみとして購入してもらうねらいです。
この会社が力を入れているのが、新たな販路の拡大です。取材した日は武田武士社長がみずから、雑貨や食品、書籍などを広く扱う大手チェーン店と商談を行いました。この店がこの春からアルコールの販売を始めると聞きつけたのです。
こうした努力の結果、会社では販路を5倍に増やすことができ、売り上げは2倍以上になったといいます。
水産加工会社 武田武士 社長
「新たなニーズを掘り起こしていかないと生き残っていけない。お客様に(商品が)しっかり“刺されば”いいと思う」
食品業界に詳しい専門家は次のように話しています。
日本大学大学院 加藤孝治 教授
「より付加価値のある商品であれば、全国、さらに海外にもマーケットが拡大する可能性がある」
原材料を国内産にシフト 収益安定図る
仕入れルートを見直して利益アップを実現した会社もあります。
揚げかまぼこを生産する塩釜市の会社「水野水産」は、これまで原材料の魚のほとんどを輸入に頼っていましたが、国内産を全体の6割にまで引き上げました。円安で輸入コストが高騰する中、国内産に大幅にシフトしたことで安定した収益につながっているといいます。
ただ国内産は輸入に比べると加工に手間がかかり、コストが課題になっていました。
通常、国内産の原材料を加工する場合は、魚の下処理からすり身の製造まで、複数の工場で分かれて行います。また手作業で進められるため多くの人手がかかります。
この会社は下処理の工程を見直しました。特定の工場が下処理の工程を一括して行い、機械化も進めることで人件費を抑えることにしたのです。
かまぼこを生産する会社 水野暢大 社長
「現代のマーケットにきっちり合わせていくのが、われわれの仕事。長く後世に伝えていけるビジネスのサイクルをしっかりとつくっていかなければいけない」
単なる価格転嫁でない取り組みは、ほかの業種でも参考になりそうです。
(仙台局 小斉平真樹)
【2023年2月14日放送】
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