起業を目指す若者と人材確保に悩む地方企業をつなぎたい

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人口減少が進み、地方企業ではアイデアや情熱を持つ若い人材の確保が課題です。一方、若者の中には、将来起業することを目指して責任ある立場で経験を積みたいと考える人もいます。

起業家を目指す若者と地方の企業をつないだら、日本経済を底上げできるのでは?そうしたねらいで始まった取り組みを、神子田章博キャスターが取材しました。

若者と地方企業を結ぶ社団法人

東京・千代田区で開かれた新入社員の研修。どんなことを学んでいるかというと…

「その結果、もうかった利益をどう分配するのか」

新入社員には難しい内容です。なぜこんなことを学んでいるかというと、この社員たちは全員、地方企業にいきなり“事業責任者”として迎え入れられることになるからです。

一体どういうことなのか。地方では、事業の拡大を担えるような若い人材を確保するのが難しいという中小企業も少なくありません。

一方、若者の中には、将来起業するために若いうちから責任ある立場で経験を積み、成長したいと考える人も増えてきています。

そこで始まったのが、若者と地方企業を結びつける取り組みです。2年間の限定で、社長直属の事業責任者として働きながら経営者として必要なノウハウを学ぶことができます

この取り組みを始めた社団法人「ベンチャーフォージャパン」の代表、小松洋介さんは、東日本大震災のあと現地で復興ボランティアに携わりました。その際、事業の担い手不足に悩む地方企業の声を聞いたことが、取り組みのきっかけでした。

小松洋介代表
東日本大震災の復興ボランティアに携わっていたころの小松さん

社団法人「ベンチャーフォージャパン」 小松洋介 代表
いまの若い子たちは優秀だし、(経営者側から)『自分たちもモチベーションを持って(若者と)一緒に取り組めそうだ』と話をいただいて、この両者をつないだら新しい事業が本当に広がっていくんじゃないか

宮城の巨大野菜工場 生産管理責任者を担う若者

宮城県の農業法人は、この取り組みを通じて若い人材が活躍し、成果が出始めています。美里町にある野菜工場は東京ドームがすっぽり入る大きさで、レタスを栽培しています。

この巨大な野菜工場の生産管理の責任者を務めるのは、吉永圭吾さんです。農学部を卒業後、商社に就職しましたが、将来の起業に向けて自分で課題を解決する力を身につけたいと、この農業法人に入りました。入社してすぐに、いまの仕事を任されたといいます。

吉永圭吾さん
さっそうと登場し、神子田キャスターとあいさつした

吉永さんは、生産しているレタスの品種と苗の数、そして生育状況がひと目で分かるツールを独自に開発しました。

いつどれだけの数が出荷できるか、営業部とリアルタイムで共有できるようになり、販売の効率化が進んだといいます。

吉永圭吾さん
(経営陣に)見守っていただきながら、それ(課題)に対してしっかり成果を出したい。もがき苦しみながら、なんとか成果につなげていく

商品開発に挑む若者も

商品開発に取り組む西古紋さん(左)

またレタスの商品開発に取り組む西古紋さんは、みずから事業を率いる立場になりたいとIT企業勤めから転身しました。

前の職場で身につけたマーケティングのノウハウを生かして、3種類のレタスが1つになった商品の開発に取り組んでいます。

黒字化成功 2人の活躍は「少なからぬインパクト」

吉永さんや西古さんらの活躍もあって、この野菜工場は黒字化に成功したといいます。

農業法人 伊藤啓一 専務
会社にとって少なからぬインパクトを2人の活躍によっていただいている。なくてはならない人材になっている

「会社の未来変え、日本の未来を変える」

取り組みを始めた社団法人の代表、小松さんは、成長意欲の高い若者がこうした地方企業に広がれば、日本経済の底上げにつながると考えています。

社団法人 小松代表
若者が地方の中小企業やベンチャー企業に入って、会社の未来も変えると思う。そういった会社が日本中で生まれていくと、日本全体の未来が変わっていくと思う

“課題を見つける力がある人材”が求められている

企業にも若者にもウィン・ウィンのこの取り組み。現場に行って気づいたのは、いま求められているのは“みずから課題を見つける力がある人材”だということです。

こうした人材を取り組みを通し育成することが、地方を含め日本経済の活性化につながっていくのかもしれないと感じました。
(解説委員 神子田章博)
【2024年4月26日放送】