工事の騒音減らす新技術 “働き方改革”にも貢献?

騒音の苦情件数は2020年度は2万件近くに上り、前の年度に比べ3割近く増えました。最も多いのが工事などによる騒音で、コロナ禍で在宅勤務が広がるなど家にいる時間が長くなったことが影響して、騒音を訴える人が増えたとみられます。

“静かな工事”のニーズが今、高まっています。

音の小さい工具 続々開発

金属の手すりを切る作業は通常、大きな音が響きます。

東京・品川区の建物の改修工事などの現場では、油圧の力で金属の手すりを挟んで切る工具を導入し、騒音が大幅に減りました。

品川区の建物の改修工事担当者
「『ガガガ』という音がまずないので、音を気にしないといけない現場ではかなり使いやすい」

工事の騒音を減らしたいというニーズは年々高まっています。挟んで金属を切る工具を開発した東京の建設会社「丸高工業」が開発した工具は、約30種類に上ります。

例えば、天井などにボードを貼り付ける工具を使うと、従来は「85デシベル」程度でゲームセンターの店内と同じくらいの音がしました。

新たに開発した工具では消音器を付けるなどした結果、「68デシベル」程度と、15デシベルほど数値が下がりました。カフェの店内くらいの音に抑えられたといいます。

ボードを貼り付ける作業。従来の工具(左)に比べ、開発した工具(右)は音が小さい

工具を開発した建設会社 サイレントシステム事業部 吉田哲朗 主任
「従来品と開発品、どちらも遜色なく施工できている」

音の小さい工具を導入することで、騒音による時間の制約が緩和され、工期の短縮につながった現場もあるといいます。

品川区の建物の改修工事担当者

「この時間だけしか(工事が)できないという現場も多々ある。そういうところが改善されると、工程的にもコストの面でも大幅に改善できる」

音+音=より小さな音

騒音に別の音をぶつけて小さくしようという技術もあります。茨城県つくば市にある、建設会社「奥村組」の技術研究所では、建設機械の騒音対策を進めています。

重機から出る音のうち低い周波数の音は、防音壁などでは防ぐことが難しく対策が課題となっていました。そこで、別の音の波を発生させて騒音を減らす方法が考え出されました。

音の波形を見てみましょう。黄色は騒音、水色が別に発生させた音、紫色は実際に人の耳に届く音を表しています。

水色の波が、黄色の波と逆の形になると、紫色の波が小さくなります。対策の前後で、実際に人の耳に届く騒音が減ったことが分かります。

建設会社の技術研究所 柳沼勝夫 主任研究員
「世の中的にはどんどん静かになっていく方向ではあるが、その分、工事騒音が逆に目立つようになってきているのではないか。少しでも騒音を低減できる技術を今後も続けて研究していかなければならない」

騒音の苦情が入ると、工事を中断して工期が延びてしまうといったケースもあるということです。こうした騒音対策を行うことで、建設業界の課題である長時間労働の解消にもつながるのではないかと期待されています。
(経済部 寺田麻美)
【2022年11月30日放送】
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