“社内ラジオ” 声で伝える社内報 社長みずからDJも

コロナ禍を機に、離れた場所にいる人をつなぐテレワークが普及しました。今この仕組みを使って、社内限定の音声コンテンツ、いわゆる「社内ラジオ」を始める企業が増えています。

販売や商品開発 社員の工夫を「声」で配信

飲料メーカーで「社内ラジオ」の企画・制作を担う金井菜々美さん

「第66回デジコミ放送局ラジオ。本日も皆様のお耳を拝借!」
「ようやく来ました!日本茶の日・直前スペシャル!」

大手飲料メーカーの「伊藤園」。「社内ラジオ」の企画から制作を一手に担うのが、広告宣伝部の金井菜々美さんです。商品開発の裏側や消費者の声などを紹介する30分程度のコンテンツを希望する社員に隔週で届けています。

社員は、営業車で移動する途中や休憩時間など好きな時に、スマートフォンやパソコンで聞くことができます。流通担当の社員は「耳よりな情報なども聞けるので、よく聞いている」と言います。

社内ラジオを始めたきっかけは、コロナ禍で導入されたオンラインの会議システム。収録した会話を配信すれば、「声で伝える新しい社内報」ができると考えたのです。

広告宣伝部 金井菜々美さん
「声は人の感情をすごく表すものだと思っていて、音声メディアにはすごく可能性があるのかなと」

開始から2年。特に人気のコーナーが、全国各地の支店などの担当者へのインタビューです。取材した日は、長野支店の支店長が登場しました。

支店長は「長野県は女性の就労率が高い。企業の売店とかで『美活(美容の活動)』のコーナーをつくって取り組んでいます」などと話しました。

金井さんは、販売の工夫などを発信することで全国にいる社員の刺激になればと考えています。

金井さん
「社員の人が日々お客様と接する中で気づいたことや、思っていることを発信してもらって、会社の中でのシナジー(相乗効果)を生み出したいと思っている」

パーソナリティーは社長 経営陣と従業員の壁をなくしたい

一方、大手金属メーカー「三菱マテリアル」で配信されているのが、小野直樹社長がパーソナリティーを務める社内ラジオです。

オンライン会議のシステムを使い、2021年から月に1度、20分間生配信しています。

内容は、社員から「匿名」で寄せられた質問に小野社長が答えていくというものです。

「ガーベラ」さんからの質問は…

「人間関係で苦労したことはあるか」との質問に、小野社長は「もちろん人間ですからイラッとすることがあります。会社においても、家でも。(怒りを)そのままぶつけてしまうかどうか、よく考える必要があるんだと思う」と答えていました。

この社内ラジオは、経営陣と従業員の壁をなくしたいと始まりました。この1年で250件ほどの質問が寄せられ、その多くが30代以下の若手からだといいます。

小野直樹 社長
「経営の1つの大きな課題としてコミュニケーションをよくしていく。社長や経営陣の人となりを知ってもらうことが必要なんじゃないか」

ラジオはリスナーと発信者の距離感が近く感じられます。コロナ禍で社内のコミュニケーション不足が多くの企業の課題になっており、参考になるかもしれません。
(経済番組 ディレクター 新野高史)
【2022年10月4日放送】
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