オンラインと対面の相乗効果とは?企業イベントで考える

販売増加や顧客拡大などをねらう商談会や展示会。こうした企業イベントはコロナ禍で急速にオンライン化が進みました。しかし今、あえて従来型の対面方式を組み合わせてイベントを行うことで、より効果的に目的を達成しようという企業の動きが広がり始めています。どんな効果があるのでしょうか?

「ハイブリッド方式」のイベントが活況

岡山市の「両備ホールディングス」は、オフィスビルの内覧会をオンラインと現地開催の2本立てで行いました。

そのねらいについて経営戦略本部の蜂谷祐子さんは「施設の詳細とか建物の内部の広さとか、現場に来ないと分かってもらえない」と話します。

オンラインと現地開催を組み合わせた「ハイブリッド方式」のノウハウを提供したのが、イベント実施をサポートする東京都内の企業「Event Hub」です。オンラインと対面の双方の強みを生かし、相乗効果を得られるようなサービスの開発に力を入れています。

例えば、参加者どうしが会わなくてもオンラインで自由に名刺交換や面談ができ、新たなビジネスパートナーを見つけられる仕組みで、対面方式の商談につながることもあるといいます。

また、リアルな会場で行うイベント向けにはQRコードを活用。参加者に現地でQRコードを読み込んでもらうことで、どのようなイベントに、どれだけの人が、どのくらいの時間滞在したかデータを集め、顧客の興味の収集につなげます。オンラインのイベントでアプローチするターゲットの絞り込みにも役立つということです。

この会社では、イベントの内容に応じてオンラインと現地開催をどう組み合わせるか、それぞれにどう人員を配置するかなど効率的な方法を提案しています。会社の売り上げはコロナ禍以後、20倍に伸びています。

イベント実施をサポートする会社 山本理恵CEO
「(参加者と)接点を持つ意味ではオンラインを活用しつつ、密な濃い関係性に至るところではリアルのイベント。いかにリアルの世界とオンラインの世界を使い分けて融合させていくか」

オンラインと対面 相乗効果の成果とは

オンラインと対面を組み合わせた結果、成果をあげたという例もあります。熊本市の済生会熊本病院が、地域のクリニックや医師を対象に行ったイベントです。最先端の治療法や設備についてPRすることで、地域の医療機関からの患者の紹介数を増やそうというねらいです。

イベントではまず、総合病院の医師による発表をオンラインで実施しました。

そして、がんの治療方法を巡る質疑応答などオンラインで伝わりにくい部分については、参加者を招いて対面でイベントを行い、参加した地域の医師と患者の治療状況などを詳しく討議しました。さらに対面イベントの様子をオンラインでも配信して、後でいつでも見られるようにしました。

オンラインと対面の双方を通じて効率よく総合病院側の姿勢を理解してもらえたことで、患者を紹介してもらう数が増えたといいます。

熊本の病院 地域医療連携室 松岡佳孝さん
「きたんのない意見や質問をしっかり答える場面をシェアすることで、新規で患者さんの紹介をいただいた。ハイブリッド形式でのイベントは医療業界にとっても手放せないものになるのではないか」

オンラインと対面形式、この2つをどう組み合わせるかがビジネスのカギとなるようです。

(経済番組 ディレクター 松村亮)
【2022年4月22日放送】