メタバース成功のカギは?アメリカ企業に見る“明暗”

インターネット上の仮想空間「メタバース」。アメリカでは先端のIT企業だけでなく一般の企業にも利用が広がっています。リアルとデジタルの店舗を上手に客に行き来してもらうことでビジネス拡大につなげる企業がある一方で、取り入れてはみたものの、うまく使いこなせない企業も出てきています。

閑散とした仮想空間上の店も

社名をフェイスブックから変更したIT大手の「メタ」は、メタバースに力を入れるため、5月にVRゴーグルなどの製品を購入できる店舗をカリフォルニア州にオープンしました。

メタバースの市場規模は2030年までに5兆ドルに達するとも言われています。

ただ、メタバースに詳しいユーチューバーの アンディー・サザンさんは、“参入したすべての企業が使いこなせているかというとそうでもない”と説明します。

例えば、アメリカの大手ハンバーガーチェーンのメタバース。参入直後には大きな話題となりましたが、いま店を訪ねると来店客は少ないように見えます。

また、金融大手のメタバースでは店を訪ねて目に付いたものをクリックしても、何も起きませんでした。

メタバースに詳しいユーチューバー アンディー・サザンさん

「ネット上の仮想空間をどうやってリアルな世界と関連付け、意味を持たせていくのかがいちばんの課題だ。現時点では多少残念な形になっている」

リアルとの融合で成功した外食チェーン

一方、メタバースを多くの顧客獲得につなげている企業もあります。全米に約3000店舗を展開するメキシコ料理のチェーンです。

まずこだわったのはリアル感です。メタバース上の店舗を、そのモデルとなった本物の店と比べてみると、外観だけでなく看板の字体まで忠実に再現されています。

そしてさらに大切にしたのが、「メタバースとリアルの融合」。この店のメタバースでは店員になりきってブリトーを作るゲームができます。時間内に具材を選ぶことができれば勝ちですが、「具材の量を増やしてほしい」など、実際の店舗でもありがちな客の要望もクリアしながら進めます。

ゲームに勝つと、実際の店舗で商品と交換できるクーポンが発行されます。

メキシコ料理チェーン マーケティング担当 トレッシー・リバーマンさん

「ほかの会社のアイデアをまねするのではなく、自分のブランドに何ができるのか個性を出すことが大事」

リアルの再現とエンターテインメント性がカギに

専門家は、企業がメタバースで成功するには、リアルさの再現エンターテインメント性の両方が必要だと指摘しています。

メタバース専門家 サビネイ・ベリー氏

「人々は単にゲームをするためにメタバースを訪れるわけではない。ブランドがメタバース上でより革新的だと受け止められれば、リアルでの商品の購入につながる」

取材したメキシコ料理のチェーンは、社内にメタバースの戦略を練る専門のチームを立ち上げました。特にZ世代と呼ばれる若者たちが何を求めているのか、詳しく分析を行ってプロジェクトに生かしています。

仮想空間が身近に感じられるようになれば、日本企業の間でも導入する動きが広がりそうです。

(ロサンゼルス支局 記者 山田奈々)

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【2022年7月28日放送】