メタバース “お笑い”で市場開拓

「メタバース」とはインターネット上の仮想空間のことです。自分のデジタル上の分身「アバター」で自由に動き回ったり、ほかの人と交流できたりします。このメタバースを使って“お笑い”の新たな市場を開拓しようと、大手芸能プロダクションが取り組みを始めています。

所属タレントをアバター化 活動の場を劇場以外にも

大阪に本社がある大手芸能プロダクションの「吉本興業」は2021年12月、社内にメタバース事業を検討するチームを立ち上げました。コロナ禍を機に、所属タレントの活動の場を劇場などでの公演以外にも広げたいと考えたからです。

岡本昭彦社長
「なかなか人の行き来がまだ(元どおりに)なりきらない中で、より多くの人に喜んでいただける環境が生まれたと捉えれば、それはトライをしていく」

いま進めているのが所属するタレントのアバターづくりです。東京都内のベンチャー企業が開発した機械を使って、28台のカメラで全身を撮影してアバターを制作します。

撮影を終えたお笑いコンビの「ダイヤモンド」は自分たちのアバターが動く姿を見て、「こんな動きをしてくれたらもっとウケると思う。お笑いの枠は広がりそうですね」と話しました。

将来的にはメタバース上でアバターを動かして漫才などをする計画です。また客とタレントがステージで交流するなどメタバースならではの演出も考えています。

メタバース事業を検討するチームの会議では、出席したお笑いタレントから「参加型の劇とか、めちゃくちゃ相性よさそう。一般の方も舞台に上がって『せーの』でずっこけるとか」とアイデアが披露されていました。

地方自治体のメタバース アバターで盛り上げる

この芸能プロダクションは、地方自治体とも手を組んでメタバースでの活躍の場を広げていこうとしています。

取材した日に会議を行っていたのは、デジタル化に力を入れる兵庫県養父市の担当者です。

養父市では芸能プロダクションと連携して、メタバース上に地元の観光名所の鉱山跡地やレジャー施設などを再現する計画です。そこで有料のイベントを開催したり特産品をネット販売したりして、市の新たな収入源をつくりたいと考えています。

会議の中で養父市の担当者は「こういう空間(メタバース)の中でお笑いイベントを開いていただいたり」と期待を込めました。

この芸能プロダクションでは、養父市をPRする専属タレントのアバターを派遣することも検討しています。

養父市経営企画部 苗村孝之さん
「芸人さんの力やネットワークをフル活用していただいて、さらに一歩踏み込んだ楽しみ方ができるのではないか」

芸能プロダクション 岡本社長
「時代時代で新しいメディアのプラットフォームが生まれていく中で、何がお客さんに求められるかを僕らみんなで勉強していく」

養父市のメタバースは22年6月ごろの公開を予定しているということです。コンサートや歌舞伎の公演などもすでにメタバースで行われる中、新しいエンターテインメントの形としてメタバースがどのように広がっていくのか注目です。
(経済番組 ディレクター 有賀菜央)
【2022年4月19日放送】