宇宙ビジネス 無限の可能性!?

民間人の宇宙旅行が話題になるなど、注目が集まる宇宙ビジネス。ロケットの打ち上げにかかるコストの低下などが追い風となって、いま国内のベンチャー企業や中小企業などが続々と参入しています

ベンチャーが狙う“宇宙の通信サービス”

茨城県つくば市にある従業員20人のベンチャー企業「ワープスペース」は、通信用の人工衛星の設計や開発を行っています。

開発している衛星には、レーザー光を送受信することで大容量のデータをやりとりできる機能が搭載されます。

計画では、この衛星を、他の多くの衛星が飛んでいる軌道のさらに高い位置で周回させます。すると、低い位置を飛んでいる複数の衛星との間でデータのやり取りをすることができます。

そうして集めたデータを高い位置から送ることで、地上により長い時間、より多くのデータを送ることができるのです。

実現すれば、衛星が撮影した画像などを、一度により多く届けられるようになるといいます。

常間地悟 代表取締役CEO

「地上で言えばNTT やKDDIが 通信サービスを届けていらっしゃるが、われわれはそれを宇宙空間で供給していく」  

この会社は去年、衛星の実証機の打ち上げを、アメリカの輸送船に相乗りすることで実現しました。3年以内に実用化し、売り上げ1000億円を目指しています

常間地さん

「人工衛星の打ち上げのハードル自体、格段にどんどん年々下がっている。日本の宇宙スタートアップにとって非常にありがたいことだと思っている」

“宇宙に自社製品を”支援するベンチャー

一方、“宇宙ビジネスへの進出を支援”することに特化したベンチャー企業もあります。

都内にある「Space BD」は、ロケットを打ち上げる国内外の事業者から、相乗りできる余剰スペースがないか、情報を収集。企業や研究機関などに、人工衛星などを打ち上げる機会を提供する事業を手がけています。

永崎将利社長

「われわれ“宇宙商社”という言い方をしていまして、(宇宙に)早く安く簡単に物を運ぶことができたら、いろんなチャンスを(獲得)する人が増えてくるだろう」

受注はすでに50件以上に上っています。ある総合化学メーカーからは、自社が作る瞬間接着剤で貼り合わせたアルミ板が宇宙空間でもはがれないことを証明し、「強度のアピールにつなげたい」という依頼もありました。

塗装会社の宇宙進出もサポート

さらにこの会社では、技術力のある企業と連携し、人工衛星などの製造を手助けする事業も始めています。

連携している企業のひとつ、自動車部品の塗装を行う「相模塗装」では、自社の技術を応用して、宇宙空間の過酷な環境に耐えられるよう、金属などの表面をコーティングする加工を始めました。

会社では、宇宙ビジネスの広がりがこれまでにない需要を生むと期待しています。

相原敏行社長

「ふだんのわれわれの仕事のレベルで宇宙という事業に通じるものができるんだと。今後ニーズが増えれば是非とも積極的に参加させていただきたい」

いま世界では1000社以上の宇宙ベンチャーがひしめいているといわれています。そうした競争の中で、宇宙ビジネスを日本の強みが生かせる産業に育てていくことが期待されます。

(経済番組 ディレクター 笠原伸浩)

【2022年1月31日放送】