獣害対策に意外な会社が参入 鉄道会社に警備会社

耕作放棄地の増加などで、シカやイノシシなど野生動物による被害が深刻化しています。2021年度の農作物の被害額は約155億円に上っています。

こうした中、“思いもよらない”会社が獣害対策に乗り出しました。

鉄道会社が狩猟の体験講習を開くワケ

神奈川県小田原市の山林での、狩猟の体験講習。講師が「箱わな」を使った野生動物の捕獲方法などを教えます。

参加者は初心者からすでに狩猟免許を持った人までさまざまで、期間は3か月、費用は3万円です。参加者の1人は「これを入り口にして狩猟できたらなと考えている」と話しました。

この講習を実施しているのは、大手鉄道会社の小田急電鉄です。線路に野生動物が入り込み電車の遅延などが起こることもあったため、始めました。

鉄道会社は野生動物の線路立ち入りなどに悩んでいる

会社では講習をきっかけに、参加者に狩猟の新たな担い手になってほしいとしています。

大手鉄道会社 経営戦略部 有田一貴さん
「(狩猟の)人手不足が課題になるだろうというのを先行して解決しようということ。地域の社会課題を一緒に解決していくことで、地域全体を盛り上げていきたい」

警備会社がジビエ工房 本業のシステムも活用

一方、千葉県茂原市にあるジビエの工房をつくったのは、大手警備会社「ALSOK千葉」です。野生動物から田畑を守る警備の仕事で捕獲もしていたことから、食肉の販売を事業として立ち上げ、工房で食用に加工しています。

野生動物が捕まると、契約している猟友会の人などから連絡が入り、捕獲場所や時間を記録して工房に持ち帰ります。

取材した日は、すでに捕獲してあったイノシシを加工していました。いつどこでとれたかなどの情報は、QRコードで確認できるようになっています。

さらに食の安全を守るため、すべての工程を映像に記録しています。こうした仕組みは、現金輸送などで行っている情報管理のシステムが生かされています。

本業の情報管理システムを食の安全のために活用

会社では2022年度、すでに1400頭ほどを扱っているそうです。

この警備会社のジビエを定期的に仕入れるレストランもあり、シカ肉のグリルが人気だといいます。レストランの店主は「相当、衛生面にはこだわっているのを肌で感じる。安全性と供給の安定の部分ですごく信頼を置いている」と話しました。

大手警備会社 取締役 竹内崇さん
「被害を与えるので捕獲せざるをえないが、それもちゃんと有効に使える。ジビエもきちんと事業として成り立つということをやっていきたい」

獣害対策は、捕獲する人手の不足や、捕獲してもそのあとの処理に困るといった課題がありますが、企業が新たな人材の育成に取り組み、食肉として有効活用することで捕獲量が増え、獣害が減っていく流れができることが期待されます。
【2023年1月30日放送】
あわせて読みたい