2022年12月26日
(聞き手:芹川美侑 堀祐理 幕内琴海)
「人材」の価値がますます高まっています。紙媒体からデジタルへと時代に合わせて新たなビジネスを切り開いてきたというリクルート。大切なポイントは人の「便利!」と思う感覚と「これがやりたい」という思いだそうです。
皆さんはリクルートに対してそもそもどういうイメージを持っていますか?
リクルート
小栗さん
学生
幕内
人材のビジネスに強いイメージがあります。
そうですね、元々は企業の採用説明会の情報や求人広告を大学新聞に掲載していた「大学新聞専門の広告代理店」でした。
そこから住宅とか旅行とか結婚とか、どんどん事業領域を拡大してきました。
今ではテクノロジーを使ってWEBやアプリでサービスを提供しているITサービスの会社です。
学生
芹川
じゃあ業種としては「ITサービス業」なんですか?
基本的にはそうです。
ひとつめのマストなニュースに選んでいただいた「SaaS」って何ですか?
「Software as a Service」の略です。
クラウド上にあるアプリやソフトウエアを、インターネットを通じて利用できるサービスのことです。
弊社も、近年はこれを活用した業務支援や経営支援に力を入れています。
学生
堀
どのような事業をやっているんですか?
例えば、ホットペッパービューティーってご存じですか?
使ってます!
ヘアサロンなどをすぐに予約できるんですが、なんでできるんだと思います?
データで一括管理されているからですか?
そうです。でも、予約が空いている枠を一元管理することって、そんなに簡単にできることじゃないんですよ。
1つのサイトからだけ予約が入ってくれば良いのですが、他の予約サービスからも入ってきますし、電話予約や、予約せずに当日来店される方もいらっしゃいます。
それら全部をつないで一元管理することで、ようやく実現できる。こうした便利なサービスを作っていくのがSaaSビジネスです。
ほかにも「Airペイ」というサービスがあります。
カードや電子マネー、QRなどさまざまな決済手段に対応しているお店の決済サービスです。
例えばクレジットカードの決済端末ってもともとカード会社ごとに違って、何種類もの端末を用意しなければいけない状況でした。
決済ルートがバラバラなので、売り上げも紙で集計していました。
大変…。
それがこのサービスでは端末1つで対応できます。
さらに別のサービスと組み合わせれば、全ての決済データが蓄積され、売り上げがいくら上がったとかも全部わかるんですよ。
便利ですね。
まさにその「便利!」が重要で。
すごく手間がかかる部分を効率化すれば、ヘアサロンではより多くのお客さんの髪を切れるし、飲食店であれば新しいメニュー開発に時間を注げる。
そうすれば店舗の売り上げアップにもつながります。
裏でサポートするようなサービスを生み出している?
消費者から見えづらいという意味ではそうですね。
予約や決済サービスのほかにも、顧客の管理とか、あるいは人事労務管理のサービスも展開しています。
なぜSaaSに力を入れようと考えたんですか?
こうした業務の効率化って、これからの日本の状況を考えてもすごく重要なことだと思っています。
労働力人口が減っていく日本において生産性を上げることは非常に重要ですが、そのためにはデジタルの活用を推進して業務を効率化することが欠かせません。
もっとこういうものがあったら良いよねというものをどんどん生み出しながら、顧客が本来やりたい業務に注力できるように事業運営を支えていくことが当面の目標だと考えています。
続いてのマストなニュースですが、これはどういうことでしょうか?
新型コロナの影響で、リモートワークの浸透など働く環境が大きく変わってきています。
それが働き手にとってキャリアや人生を見つめ直す契機になっていて、仕事のやりがいや本当にやりたいことを改めて考える人が増えています。
また、同じ業界の中だけでなく、全然違う業界や職種にチャレンジするような動きもどんどん増えています。
比較的最近の考え方なんですか?
もともとあった考えですけど、新型コロナによって強制的に世の中が変化したことで、それが加速していると思います。
自分のリソースを1社にだけ費やすのではなく、副業のような形で社外でも活かしてみようという動きも増えてきています。
特に今の若い方を見ていると、ライフデザインというか「自分自身の人生をどう生きるか」の中の1つにキャリアがあるというように変わってきています。
私の周りでも、自分の人生を第一に、就職を考えている人が多いイメージがあります。
弊社では2021年から副業のマッチングサービスを本格化していて、特に最近では都市部で働く人が地方企業で副業を行うような動きが高まっています。
「キャリア志向の多様化」は、就活生にも言えることなんでしょうか?
そうです。日本の教育システムのなかでは、キャリアについて考える機会は多くはありません。
大学3年生になったけどまだまだやりたいことがたくさんあるから、今はまだ就職活動に時間使いたくなっていう人も中にはいると思います。
でも今の日本では、そのタイミングでの就職活動の機会を逃すと“新卒”でなくなってしまうような企業もまだ多くて、機会損失になっているんじゃないかって思うんです。
弊社は30歳までを新卒として通年採用の形をとっています。
いろんな選択肢があって、もっと自由に皆さんのタイミングでキャリア選択ができるような世界を目指していきたいです。
3つ目は人的資本経営ですね。
「人的資本経営」は、人材を資本として捉えて、その価値を最大限に引き出していくことで企業の価値を高めていく経営手法です。
弊社は創業以来、「価値の源泉は“人”」ということを掲げて、社員の成長を支援し続けてきました。
それが新しいビジネス展開や事業の成長につながっていると考えています。
なぜいま世の中で人材に注目が集まっているんですか?
いま産業構造の変化や労働力人口の減少、キャリア観の変化など、企業を取り巻く環境が大きく変わっています。
こうした変化に対応しながら生産性を高めていくために、いま企業が保有している人的リソースを最大限活用することがますます重要になっているんです。
さきほど話題にあった副業の制度なんかもあるんですか?
はい、以前から副業・兼業は認められています。
去年からは、一日の所定労働時間を30分ずつ増やすかわりに自由に設定できる休日も増やして、結果的に週休“約3日”となる制度を導入しました。
副業・兼業の時間や、大学院進学など学びの時間に使うこともできます。
小栗さんもこういった制度を活用されていますか?
僕は民泊を経営しています。
えっ、すごい!
バックカントリースノーボードが20年来の趣味で。
コロナ禍でリモートワークができるようになったことをきっかけに北海道に家を買って、使っていない期間に貸し出しています。
こういった制度が人材の価値を高めることにつながるんですか?
1人1人が生き生きと働きながら、それぞれの価値を最大限発揮することが、会社のパフォーマンスを最大化するところにもつながるんだと思います。
ほかにはどんな取り組みをしているんですか?
「ジェンダー平等」への取り組みがあります。
今後のキャリアに悩みを抱えやすい28歳前後の女性従業員を対象にキャリア研修を行ったり、管理職を対象にジェンダー平等について考えるイベントや研修をしたりしています。
女性の管理職の比率は2006年にはおよそ10%でしたが、今ではおよそ30%に増えました。
グループ全体では、2030年度までに管理職や従業員などの女性比率をそれぞれ50%に高めることを目指しています。
最近は能力による判断を徹底できるよう、管理職の要件を明文化する取り組みも始めています。
社内で変化を感じることはありますか?
明文化することで、今までの管理職に暗黙的に求められていたリーダー像や働き方が「これ全部必要なんだっけ?」と考えるきっかけにもなっています。
でもこれって、女性だけに関わる話ではありません。
管理職の要件を明文化した結果、女性だけでなく男性も管理職候補者が増えていて、多様なリーダーが生まれる兆しが見えています。
これから社会人に求められる素質は何でしょうか?
“人生100年“と言われる時代における長いキャリアを考えたときに、変わっていくことを恐れないことが必要なんじゃないかと思っています。
変化を好めとまでは言わないですけど、変化に恐れず対応して、ちょっと楽しめるくらいになれば、結果的に自分のスキルも磨き続けられる。
そうすれば、変化の激しい世の中で活躍したり、長く価値を提供したりできる人になれると思います。
変化に柔軟に対応できる学生に入社してほしいですか?
そうですね、重要なのは「当事者意識」を持っていることです。
仕事のやり方や表現のしかたは人それぞれでいいと思っていますし、いろんなキャラクターの人がいた方がいいと考えていますが、自ら動く姿勢が大切だと思います。
これからのキャリアに悩んでいる就活生に向けてアドバイスはありますか?
キャリアの選択のしかたは人それぞれですが、それが正解かどうかはわからないと思います。
さまざまな経験をして、いろんな社会人の話を聞きながら、こういう部分が私は大切なんだなとか、逆にこういう部分があったら嫌なんだなっていう部分を見つけてください。
やりたいことや得意なこと、好きなことを大事に、後悔しない選択をしてもらえるといいのかなと思います。
ありがとうございました!
撮影・編集:松原圭佑
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