ソフトバンク 採用・人事担当者に聞く

通信だけでは稼げない? 変わる携帯電話業界

2022年10月20日
(聞き手:小野口愛梨 幕内琴海)

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わたしたちの生活に欠かすことのできない携帯電話。各社がさまざまなサービスを展開するなか、業界全体が大きく変わろうとしているんだそうです。力を入れようとしている分野は“非”通信?将来のビジネスの在り方は?ソフトバンクの人事担当者に聞きました。

携帯電話業界ってどうなってるの?

学生
幕内

いま、携帯電話業界ではどんな会社がサービスを提供していますか?

ソフトバンクのほかに、NTTドコモやKDDI、楽天モバイルなどが携帯電話のサービスを提供しています。

ソフトバンク
齋藤さん

これらの会社はそれぞれ独自のブランドやプランを展開しています。

ソフトバンク
青木さん

ソフトバンクだと大容量の「ソフトバンク」、小中容量で割安な「ワイモバイル」、オンライン専用の「LINEMO」の3つがあります。

採用担当の齋藤さんと青木さん

それぞれ特徴が異なるので、ユーザーがご自身の使い方にあったブランドを選んでもらえるようにしているんです。

楽天モバイルが新しく参入してきたことの影響はあったんでしょうか。

携帯電話の市場自体が盛り上がったっていう意味では大きな影響がありました。

その結果、楽天モバイルに変更する人もいれば、逆に楽天モバイルから変更する人もいる。

正常な競争が生まれやすくなったという意味で、我々もメリットを享受した部分がありましたね。

学生
小野口

楽天モバイルの新規参入をきっかけに契約している会社を見直そうとする人が増えたということですか?

まさにそういうところかなと思います。

「経済圏」の構築

知っておくべきニュースの1つ目として『「経済圏」の構築』をあげていただきました。

この「経済圏」の意味がちょっと分からなくて・・・。

そうですよね。弊社を例にとって説明しますね。

わたしが所属する通信サービスを提供する事業会社の「ソフトバンク株式会社」は「ソフトバンクグループ株式会社」という親会社の下にあります。

孫正義氏はソフトバンクグループの社長

ほかにもLINEやヤフー、PayPay、ZOZO、とご覧のような会社をグループ会社に抱えています。

スマホなどの通信サービスを提供するだけではなくて、グループ全体でその先にあるサービスも提供しているんです。

ZOZOTOWNで服を買ったり、その決済をPayPayで行ったり、LINEでコミュニケーションをとったり。

ほかにもグループとして銀行や保険、フードデリバリーなど、スマホを通じて使えるたくさんのサービスを提供していますが、それらの相乗効果によりさらなる収益を生む仕組みを目指しています。

これを「経済圏」と言っています。

私たちが生活するなかで、さまざまなシーンで利用している場所というか。

そういったイメージです。

ほかの携帯会社もそれぞれの経済圏を作るっているんですか?

決済サービスを例にとっても、各社ともそれぞれサービスを展開してますよね。

確かに、いろんな決済サービスがある気がします。

携帯各社が提供する決済サービス

ですので、自社サービスでシェアをどう高め、経済圏をどう広げていくかということも、各社で考えていると思います。

今後、経済圏をどのように発展させていくんでしょうか。

経済圏を広げることで多くの人々に利用してもらえるサービスを提供し、将来的には集まったデータを分析し活用することで便利に使えるサービスを目指していきたいですね。

携帯電話会社って通信事業がメインだというイメージでした。

通信事業は設備投資などに多額の費用がかかりますが、料金の値下げなどもありそれ以外の領域で収益を上げる取り組みに力を入れています。

―携帯電話料金の値下げー

携帯大手3社は政府からの要請に応える形で2021年3月に相次いで割安なオンライン専用のプランを導入するなど、競争が激しくなっている。各社とも通信事業で稼ぐことがだんだんと難しくなってきている。

弊社では「Beyond Carrier(通信事業を超える)」という成長戦略を掲げて、非通信領域で何ができるのかというのを1つの大きなポイントとして捉えています。

ソフトバンクの掲げる成長戦略 “非通信”が今後の成長をけん引するとしている

今後は業界全体が「非通信」で稼いでいく時代になってくるんですか?

「非通信」も重要な領域になってくると思っています。

通信の上にどんなサービスをどういう風にのせていくのかが勝負になってきます。

またデータを活用した新たなビジネスを創造していくことも求められてくるのだと思います。

「非通信」といってもネットワークを使わないということではなく、今までの通信事業を基盤に新たなビジネスにチャレンジし、成長を続けていくことが必要かと思います。

メタバース

2つ目の「メタバース」についてですが、具体的なイメージがわかなくて…。1から教えてください。

いろいろな定義があると思うのですが、簡単に説明すると、アバターを使いながらコミュニケーションができたり、ちょっと未来の話かもしれませんが経済活動をしたり…。

そういうことができるバーチャル空間のことを指しています。

フェイスブックもメタに社名を変更するほど

―メタバースー

インターネット上に作られた仮想空間で、いわば現実とは違う、もう一つの世界のこと。meta(=英語の超越、超)とuniverse(=宇宙)を組み合わせた造語。2030年には市場規模が200兆円を超えるとの試算もあり、国内外の多くの企業がサービス展開を進めている。

そこの空間に入りたいって思ったらどうすればいいんですか?

パソコンやスマホなどから入れます。

例えばソフトバンクが提供している「バーチャルPayPayドーム」。

体験させてもらいました

スマホの画面でスワイプなどをすると視点が切り替わったり、自分を模したアバターがドームの中に入って自由に動き回ることができます。

自分が動けなくてもアバターを介して球場に行けるってことですか?

まさにそういうねらいです。

バーチャルで投球も体感できる

オンラインでも、現地に足を運んでいるかのように試合を観戦できたり、ドームの雰囲気を感じることができたりしたらいいよねっていう思いもあって作りました。

なぜ、今、メタバースは注目しているんですか?

やはり1つは「5G」かなと思っています。

―5Gー

高速・大容量などの特徴を持つ第5世代の通信システム。これまでの4Gと比べても大量のデータを瞬時にやり取りでき、携帯各社が全国的に基地局の整備を進めている。5Gの利用には5Gに対応したスマートフォンが必要になる。

5Gだと2時間の映画を10秒もかからずにダウンロードできるようになりました。

本当にスムーズに待ち時間もなくカクカクすることもないというのが生活の中に浸透してきました。この技術的な進歩は非常に大きいと思います。

いま5Gってどのくらいの普及しているんですか?

人口カバー率でいうと90%以上なんですけれど、地方ではまだこれからというところもあります。

各社とも整備を進めているので、これからどんどん生活のなかで使える状況になってくると思います。

メタバースは今後どう広がっていくのでしょうか。

まずはエンタメから入りつつ徐々にビジネスに広げていくという動きではないでしょうか。

メタバースで携帯電話ショップも開設している

メタバース上で何ができるのかということには、いろんなアイデアがあると思っています。

例えばPayPayドームでいえばお客さま自身がアバターに着せるユニフォームを作ったりとか、そのユニフォームを現実世界でも売ったりとか。

メタバースの世界だけで完結するのではなく、現実世界と相互に関係しあうような購買体験ができるんじゃないかという発想です。

まだどういう形で楽しんでもらえるのかは実験段階のところです。

メタバースはこれからますますホットになっていくはずです。

働き方の多様化

最後は「働き方の多様化」についてです。なぜ、こちらを選ばれたのか教えてください。

ソフトバンクは在宅勤務をしたり、営業先の近くにサテライトオフィスがあればそこで仕事をしたりと、働く場所を社員自ら選べる特徴があります。

自由ですね!

会社として「生産性」をすごく大事にしています。働く場所が家であれ会社であれ、自分のやるべき仕事は変わらないというか…。

一人一人が働きやすい環境作りには全社的に力を入れてますね。

「週何回くらい来てる?」「私は今1回(笑)」

業界全体として、そういう流れなんですか?

そうですね。業界もそうですが、社会全体がそういう方向に向かっていると思っています。

ほかにも働きやすい環境づくりの工夫ってありますか?

例えば本社ビルでは出社時に非接触で勤務フロアに行ける工夫がされています。

どういうことですか?

自分がどのフロアで働いている人物なのかという情報があらかじめ登録されているので、顔認証でゲートを通過すると、エレベーターが自動で来て、勤務する階のボタンがもう押されているんですね。

顔認証なので社員証も必要ないとのこと

え~っ!すごい。

来客フロアには飲み物を運ぶ配膳ロボットが導入されていたり、ビル内には掃除ロボットやセキュリティーロボットも導入されていたりしますね。

自動で動く掃除ロボット

さっき見てびっくりしました。

ほかにも、社員の方が働きやすい環境づくりはありますか。

社外の副業に加えて社内における副業も制度化されました。

社内で副業?

例えば、大学でプログラミングを学んできたのに今の部署で生かす場所がない、という社員がいたとしています。

その一方、新規事業を立ち上げたいけどエンジニアがいないという悩みを抱えた部門があった時に、その両方のニーズをマッチさせた仕組みです。

全社的に募集がかかるんですが、採用されると通常業務と並行して、副業先での仕事を行うことができます。

会社全体のメリットにもなるんですか?

メリットしかないっていったら変だけど、個人が挑戦をしたり、成長したりしていかないと企業は大きくなりません。

自分がいま持っているスキルと、これから身につけるスキル、副業によって身につけるスキルの掛け合わせで社員はどんどんスキルアップしていくことができます。

人手不足もよく聞くので、人材の流出を抑えることにもつながりそうですね。

そうですね、長く同じ業務をやっていた人が副業に挑戦して、新たな視点を本業に持ち帰る機会を提供することで、仕事のマンネリ化の解消にもつながると思っています。

変化を楽しむ

最後に、求める人材像について教えてください。

「変化を楽しみ何事もチャンスと捉え挑戦する人」です。

とにかく変化がめまぐるしい業界です。

変化を楽しんで、これを機に自分も新しい経験をするんだ、って前向きに捉えられる人の方が、この環境に適応できると思いますし、仕事を楽しむことができると思います。

結局、仕事って楽しくないと長続きしないと思うんですよね。

ありがとうございました!

撮影:本間遥 編集:岡谷宏基

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