2022年03月23日
(聞き手:石川将也 田嶋瑞貴)
コロナ禍もあり、ネットショッピングを利用する機会が増えた人も多いのではないでしょうか。注文した商品は翌日、早ければその日に届くものも。このスピードを実現するために、実はさまざまな工夫がされています。昨年度の宅急便の取り扱い個数が過去最高になったというヤマト運輸の人事担当者に『運ぶ』だけではない物流業界の魅力を聞きました。
学生
田嶋
コロナ禍に入って、物流業界の大切さをすごく感じる一方で、働き方があまりイメージできていないんですが…。
採用活動を行っていても学生さんからよく受ける質問です。
ヤマト運輸
小坂さん
セールスドライバーのイメージが強いのですが、それ以外にもセールスドライバーの体制構築や安全、運行管理をする、現場の配送業務を支える仕事がまず1つのパターンとしてあります。
さらに、新しいサービスの開発や業務を改善していく企画職などもあります。
お客さまのニーズが大きく変わっていく中で、どのようなサービスを提供すべきかを考えて、現場のオペレーションを改善していく、そういう仕事です。
ほかにも、需要を予測して業務量を調整したり、それぞれの業務をデジタル領域から支えたりといった専門職の仕事もあります。
最近では輸送手段として、新たにドローンの活用も検討されていると伺ったんですが?
ドローンに関しては現在、実証実験を行っています。
具体的には、岡山県や徳島県の自治体と協定を結び、医薬品を持続的に輸送できるネットワークの構築を目的に取り組んでいます。
山間地など輸送しにくい地域があり、陸路で走ると回り道となるところもあるので、新たな輸送方法を用いた運用の構築を目指しています。
最初に選ばれたのが「産業のEC化」。これはどうしてですか?
EC市場は今、非常に伸びています。
お客さまにいかにスムーズに荷物をお受け取りいただくかが重要なポイントです。
時代の変化に合わせたサービスを提供しているという点で選びました。
コロナによって変化があったということですか?
昨年度の宅急便の取り扱い個数は、過去最高でした。
ヤマト運輸
坪谷さん
日本の人口が減る中で取り扱い個数が増えているという事は1人当たりの荷物が増えているということです。
コロナ禍をきっかけにECを利用する方が増え、その傾向は今でも続いています。
買い物のために外出したくない人も増えたと。
消費行動はすごく変わってきていると思います。
コロナ禍で外出自粛による「巣ごもり需要」という言葉が生まれ、企業側でも実店舗に加えてEC店舗を強化するなど販売形態も変わってきています。
世の中の変化に応じて、物流も変えていく必要があります。
どのような取り組みをされているんですか。
2020年6月に開始したサービスは、ECの利用者様が直前まで荷物の受け取り方法をリアルタイムで変更できます。
みなさんオンラインで取材されていますが、コロナ禍で在宅勤務が増え、会議中など家にいても対面で荷物が受け取れないということが増えています。
わかります。
この時間帯は玄関前に置いて欲しいとか、直接受け取れるようになったら対面に変更するなど、リアルタイムで要望が反映できるようになり、利便性が向上しました。
ECの事業者様にとっても、利便性が上がることで顧客満足度の向上につながりますし、運び手にとっても一度で受け取っていただくことができ、三方良しの取り組みです。
学生
石川
次はDXですね。
はい。昨年度は約21億個の荷物を取り扱いましたが、お客さまにきちんと荷物をお届けするためにはデジタルの活用がなくてはなりません。
デジタルを活用した経営を進めているところですので、このテーマを選びました。
具体的にはどのように活用されているんですか?
例えば以前は、お届け先の住所は手書きで、データ化されていない状態で毎日それぞれの営業所で荷物を仕分けていました。
そのあと、担当ドライバーごとに送り状を1つずつチェックしながらどの順番で配達すれば効率がいいか、例えば、このお宅は午後にご不在のことが多いなど、経験と勘に頼っていた部分がありました。
いわゆる職人技のようなイメージに近いかもしれません。
すごいですね。
DXを活用することで、まず送り状のデジタル化を推進しています。
荷物がいつ、どの程度営業所に入ってくるかデータ上で管理され、きょう配達する荷物は何個あって、お届け先はどこかを事前に把握できます。
かつAIを活用することで、日々の道路状況なども踏まえながら、効率のいい配達ルートを自動で組む仕組みもあります。
ドライバーの皆さんの働き方にも影響しそうですね。
例えば鉄道のダイヤは、朝夕が込み合っていて、電車の本数も多いですよね。同様に配送の業務量も時間帯によって大きく変動します。
効率のよい働き方をするためには、業務量に合わせて適正な人数で働くことが非常に重要です。これを実現する陰の立て役者がDXだと思っています。
ドライバーの職人技に頼るという形をずっと続けてしまうと、このコースはAさんでしか回れないというふうになってしまいますよね。
ほかにはどのように活用しているのですか?
業務量の予測にも活用しています。
「ベース店」と呼ぶ各地域のターミナル基地が全国に77か所あります。そこの業務量は、これまで前年の実績や季節性によって担当者が表計算ソフトを使って予測を立てていたんです。
すごく時間がかかりそうですね。
それが、データ分析を行うことでより緻密な管理ができるようになりました。
例えば昨年12月はECの伸びもあって、過去最高の取り扱い個数にも対応しました。
事前に業務量が緻密に予測できる事で、どの拠点にどの程度の人員配置が必要か把握し対応できたのは、DXが非常に助けになったと考えています。
人員配置とおっしゃられましたが、物流業界では人手不足の現状があるのでしょうか。
マクロトレンドでは労働力人口の減少という問題はあります。
これについては、一人一人が働きやすい環境をつくると同時に多様な働き方を認めていく、ルール化していくことも必要だと思っています。
人材はどのようにして確保されているのでしょうか。
DXでいうと、デジタルに関するキャリアを持っている方、あるいは大学時代にデジタル分野を学ばれた学生の採用を強化しているところです。
一方で、去年4月からは社内の早期デジタル人材育成や、全社員のデジタルリテラシー向上を目指した教育プログラムも始めています。
最後はサステナブル経営ですね。
特に環境面において、当社は日本全国に多くの営業所を設けており、トラックを使って集配業務を行っています。
このため環境に配慮する取り組みを進めていくことは、とても重要な課題だと認識しています。
どのような対応をされているのでしょうか。
2050年までにCO2の自社排出実質ゼロを目指して取り組みを進めています。
以前からハイブリット車や電気自動車など環境負荷の低い車両へのシフトを進めており、市街地や住宅が密集している地域では電動アシストがついた自転車や台車を活用しています。
電気自動車は現在約600台保有しており、今後も環境に配慮しつつ、現場での使い勝手も検証しながら導入を進めていきます。
社会貢献という意味ではどのような取り組みをお考えですか?
現在、地域ではIoTを活用した見守りサービスを行っています。
具体的には、ハローライトと呼ばれる専用の電球の点灯・消灯を確認しながら、暮らしている方の安否を確認するサービスです。
点灯や消灯が24時間確認できない場合、異常な事態を予測する1つの目安になりますので、検知したら事前に設定した方、一人暮らしの方であればご家族などに通知される流れです。
その後、連絡が取れない場合や、ご家族が訪問できない場合は、ご依頼いただけば当社の担当スタッフが訪問して状況を確認します。
特に高齢者やその家族にとっては心強いサービスになりますね。
地域の見守りやコミュニティー作りという点では、一人暮らしをされている方たちも含めて皆さまが安心して快適に暮らせる社会を作っていくことが、大きな使命であると感じています。
日本全国に配送ネットワークを持っていて、日頃から対面のサービスを行っているからこその強みを生かしています。
最後に、どんな人と一緒に働きたいか教えてください。
ヤマト運輸は創業当初からイノベーションを繰り返してきた会社です。
1つに絞れるわけではないのですが、期待するところを強いてあげると、新たな視点を持って課題に気付ける力を持っている方と一緒に働きたいなと思います。
就活生へのメッセージもお願いします。
物流業界で働くことは、単純に物を運ぶだけではなく運び方をお客様と一緒に作っていくところが、クリエイティブで面白いです。
社会の発展に寄与することや、企業のサービスをサポートできるところなどは、面白さの1つだと思います。
縁の下の力持ちの役割があるんですね。
就職することが目的ではなくて、就職したあとにどのような働き方をしたいのか、就職後の生活を見据えながら、さまざまな業界や企業を見て自分の可能性を広げていっていただけたらなと思います。
就職活動をしていると、やっぱり就職人気ランキングや現在の企業の規模などがどうしても目に入ってしまうのは、仕方ないと思います。
ただ、これから変化が激しい時代だからこそ、その会社が大事にしている価値観や理念をよく確認して、自分が共感できるかということが実は一番大事なのではないかと思います。
本日はありがとうございました!
撮影:堤啓太、黒田光太郎 編集:秋元宏美
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