2023年12月20日
人生100年といわれる時代。65歳以上で働く人の数は18年連続で増え続け、2021年では900万人を超えています。88歳になっても精力的に活動している“世界最高齢のアプリ開発者”若宮正子さんに、仕事への向き合い方を聞きました。
年齢に関係なく成長を続ける生き方、就活中のみなさんにもきっとヒントになるはずです。
※こちらの記事は11月23日のNHKラジオ第1「NHKジャーナル」で放送した内容をもとに編集しています。
人生100年といわれる時代、昔のように“高齢者は引退”というライフスタイルは変わりつつあります。鈴木記者が取材したのは、88歳になっても精力的に活動している女性ですね。
はい、若宮正子さん(88歳)を取材しました。
若宮さんは、80歳の時にプログラミングを始め、スマートフォン向けのゲームアプリの開発に乗り出したんです。
ニュースなどでも取り上げられていますので、名前を聞いたことがあるという方もいるかもしれません。
80歳でアプリ開発に挑んだ理由を、若宮さんに聞きました。
若宮正子さん
「ガラケーからスマホに変える人が増えたんですけど、お年寄りが楽しめるアプリがなかったから、『若宮さん作ってよ』って言われて、やむをえず作ることになったんです。」
お年寄りが楽しめるアプリがなかったから、ですか! どんなアプリをつくったのですか。
12種類のひな人形を、ひな壇の正しい位置にはめていくパズルゲームです。
スワイプ、指をスライドさせて操作する方法が高齢者には難しいということで、タップだけで操作できるようにしたのが特徴です。
スマホも使う高齢者は増えていますものね。高齢者の目線で工夫を凝らしたわけですね。
そうなんです。若宮さんは、そのアプリ開発が注目されたことなどからデジタル庁の有識者会議のメンバーにもなっています。
いろいろなところから引っ張りだこで、ことしだけで北海道から沖縄まですでに150回ほどの講演活動で飛び回っているとのことです。
ことしだけで150回!
すごいですよね。さらに若宮さんの活躍は国内のとどまらず海外にも広がっています。
アプリをきっかけにアメリカのテレビ局の取材を受けたことで、その噂がアップル社のCEOティム・クック氏も知るところになりました。
「どうしても会いたい」というオファーを受けて、「世界最高齢の開発者」としてアップルの会議に特別招待されたんです。
若宮正子さん
「シリコンバレーでは年寄りっていうものの存在は、ほとんど無視したっていったらおかしいけど、あんまり存在に気がついていなかったんじゃないかと思うんです。で、私の事がいろんな記事になって出たときに、びっくりしたっていったらおかしいですけど、じゃあそのおばあさんに会って話を聞きたいと、ティム・クックさんが思われたみたいで。」
世界をリードするあの大企業に呼ばれるなんて、すごいですね。
クック氏からは「なぜゲームを作ったのか」などの質問があったそうで、「なければ自分で作ろうと思った」と若宮さんが答えたところ、その柔軟さに驚いていたということです。
80代で大活躍の若宮さん、これまでどんな人生を歩んでこられたか興味がわいて来ました。
生まれたのは1935年(昭和10年)、太平洋戦争が始まる少し前です。10歳の時に終戦をむかえ、それまでの軍国主義の社会の価値観があっという間にひっくり返ったのが強く印象に残っていると言います。
高校卒業後は大手の銀行に就職しましたが、お札を数えたり書類を記入したりといったオフィスワークは苦手だったということです。
そんなオフィスで進んだ機械化は自分の変化のきっかけにもなったそうです。
若宮正子さん
「どんなに器用な人だって機械より早くお札を数える人はいないわけですから、その時に感じたのは、人間の能力という評価は時代によってすごく変わるものなんだなと思いました。それで私はその後、企画開発セクションに異動になったわけです。私は高卒の女の子ですから、あまりそういうところに異動するというのは一般的ではないんですけど、若いときから何かをいろいろ思いついちゃう癖がある。業務改善提案みたいなのありますよね。新商品とかそういうところにせっせと投稿していましたので、たぶんそれを見て異動になった。」
若宮さんは高卒の女性としては異例の管理職昇進も果たしました。
若宮さんのバイタリティーがうかがえるエピソードですね。
そうなんです。さらに若宮さんは定年前の58歳の時にパソコンを購入、パソコン通信で交流を広げたかったからだということです。
その後、インターネット上にお年寄りの憩いの場を作るなど活動の場を広げてきました。
年齢に関係なく新しいことに挑戦するその「やる気」はどこから湧いてくるんでしょうか。
その質問、よく聞かれるそうです。尋ねると、次のような答えが返ってきました。
若宮正子さん
「例えばバンジージャンプをするとかだったら決断が必要かも分からないですね。かかりつけのお医者さんに相談するとか。でもプログラミングをやったって誰かが死ぬわけじゃないですし、嫌になったらやめればいいわけで、変な干物を焼いていたらご近所迷惑ですけど、ご近所迷惑にもならないんだったら、どうして勇気と決断がいるんだか分からない。」
関心があれば、まず「やってみる」ということですね。
そうです。若宮さんがまさに大事にしていることは「まず、やってみる」ということでした。
若宮さんは「人生100年時代の仕事への向き合い方」について次のように話しています。
若宮正子さん
「人生100年っていうと、いろんな人生を複数体験できることだと思うんですね。一生の仕事を決めて肩にこうやるのではなくて、とりあえずやってみる事を決めればいいんじゃないですか。自分も変わるかも分かんないし、世の中も変わるし、会社も変わるかも分かんない。」
若宮さんは銀行時代に目の当たりにした機械化がパソコン通信への興味となり、アプリ開発につながりました。
取材して感じたのは、好奇心と経験、それにしなやかさです。さまざまなことに興味を持って「まずやってみる」。それが経験として蓄積され、さらに新しいことに関心が向く、そのサイクルが回ることで年齢に関係なく成長を続けているのだと思います。
組織や肩書きではなく「若宮正子さん」が求められる理由はそこにあるのではないかと感じました。働くことへの向き合い方、私も参考になりました。
この記事は11月23日のNHKラジオ第1「NHKジャーナル」で放送した内容をもとに編集しています。音声で聞くには👆の画像をタップしてください。
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