2020年11月27日
(聞き手:佐々木快 田嶋あいか)
「シェアリングエコノミー」の普及をめざす石山さん。目標を達成するため、意志を貫くためにどんなことを大切にしてきたのでしょうか。話を聞いてみると、学生時代から変わらない信念と、仕事に対する強い思いがありました。そんな彼女からの、就活生たちへのメッセージとは?
石山さんは年上の人と仕事をする機会が多いかと思いますが、若者が自分の意志を貫くっていうか、自分の手で世界を変えていくにはどういうことが大事ですか?
その分野で一番詳しいと言える人になることではないでしょうか。専門に年齢は関係ないと思います。
おお。
石山アンジュさん(31)
1989年4月生まれ。国際基督教大学卒業 リクルート、クラウドワークスを経て「シェアリングエコノミー」を通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行う。2017年に「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」に任命。「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」の事務局長も務める。
シェアリングについて知っているのは、上の世代じゃなく私だっていう確信もありますし、例えば、TikTokにめちゃめちゃ詳しい大学生がいたら、世代とか経験とか関係なくその人がTikTokの専門家になるわけです。年代は基本的には関係ないんじゃないかな。
シェアリングエコノミー…インターネットを使ってモノや場所、技能などを貸し借りすることを通じて生まれる経済のこと
確かに、言われてみればそうです。やっぱりシェアリングエコノミーについてすごく勉強されましたか?
そうですね。すごく勉強したし、自分でお金を払っていろんな国を見にもいきました。そういった積み重ねなんじゃないかなと思います。
苦労したことは何ですか?
まだ理解してもらえていない人に、どう共感をしていただけるか、価値のあるものだとわかっていただけるかというのは、すべてコミュニケーション次第なので、それを地道にやっていくことにすごく苦労しました。
例えば、タクシー会社や車のメーカーからしたら、ライドシェアとかシェアリングエコノミーって、我々の業界を奪うんじゃないかという不安があります。
そうですよね。
そういう人たちにもシェアの価値を分かってもらい、一緒にやってもらえるようにするためにどうやって働きかけるかっていうコミュニケーションはすごく大変だったかなと思います。
「人の思想を変えたい」っていう目標に向かって、いろいろ行動できるのがすごいです。
単純に、「社会のこういう部分が嫌だな、だったら変えたいな」っていう動機だけですね、モチベーションは。
学生時代、将来に向けて意識していたことはありますか?
いまと一緒で、世の中に対する違和感をすごく大事にしていました。それをすぐにアウトプットしたいっていうのが強かったです。
NHKで世界各国の有識者を同時中継でつなぐ番組があったんですけど、それを見て自分もこういったアウトプット作りたいっていうふうに思って、問い合わせページから働かせて下さいって直談判したこともあります。
自分から攻めていく感じですね。
既存の枠組みに、その機会がなかったとしても、自分が必要だと思うことと照らし合わせた時、何が必要かなって逆算しているんです。
ポストがなかったから、自分で問い合わせページから扉を開きました。
就職活動の時代にどういった事を考えて活動されていましたか。
ジャーナリストになりたいと思っていましたが、ちょうどその時、東日本大震災が起きました。迷いもありましたが、家族とも話し合い、当時お付き合いしていたベルギー人の彼とベルギーに渡りました。
現地でどのような就職先があるか、いろいろ考えていましたが、数か月後に大学が再開し一時帰国しました。
大学院や他の選択肢も考えていた矢先に、リクルートの面接をうけることになり、面談を受けました。ちょうど、二回目にお会いしたのが、当時の社長でした。
その中で、震災のような有事が起きたとしてもゼロから事業を作り出すことのできる人材になるにはリクルートは修業の場として良いのではないか、数年でやめてもいいから、とお話し頂き、リクルートに最初の就職先として働くことを決めました。
リクルート時代の経験って今に生きているんですか。
生きています。大企業や経済の構造がどういうふうに個人に影響を及ぼしていくのかを構造的に学んだので、いまの仕事をする上ですごく生きているなという感覚があります。
事前にいただいたスケジュールでは、ニュースピックスのプロピッカーとしてニュースをチェックして投稿するとありますが、これもアウトプットを意識しているんですか?
そうですね。なるべく自分の関心や関連があるニュースに関しては、チェックするだけではなく、自分の見解をちゃんと考えながらニュースを見ていますし、それをできるだけ発信するようにしています。
私はニュースをみるとき、「こういうのがあるんだ」で終わっています。
ニュースを見ることが目的ではなく、私の場合は自分が作りたい社会のために、ニュースを見ることが日課になっていると思います。
ニュースは何かを実現するための手段としても、活用することができます。
目的があって情報を得るんですもんね。そのためのニュースだと考えてみると、すごくもったいないことをしていたなと思います。
自分のやりたいことが決まっていないかもしれないですけど、関心があることを磨いていくことです。
興味があるなら、それを多角的に調べていく。そのアンテナがあると、ニュースを見る目も変わってきます。
「こういうことやっているんだ。どれぐらいの影響力があるんだろう?」って、どんどん調べることができるわけですよね。
興味のあるものが自分の中にあると、ニュースももっと面白くなるんじゃないかなと思います。
ニュースはいま、新型コロナウイルスが中心ですけど、石山さんの目にはコロナ禍の社会はどう映っていますか?
すごく危機感を感じているのは、社会的な信頼の総和というのが大幅に下がっていることです。
例えば、いままでは飛行機で隣になる人が「もしかしたら感染しているかもしれない」って疑うことってなかったですよね。
そうですね。
でも人を疑ったり境界線を引いたりするようになってしまったと思います。
きちんと包装された食品であれば安心だと思っていたのに、今は、いくら包装されていても「もしかしたら菌がうつるかもしれない」って思うこともあるわけですよね。
サービスにおいても、人においても、公共の場においても、信頼の総和が減ると治安が悪くなるっていわれています。
たくさんの人を疑うよりも、ほとんどの人は信頼できるって思っている方が、幸福度が高いという調査結果もあります。
面白いですね。
コロナ対策をしていかなきゃいけない中で、不必要に疑わなくても済むような仕組みができることを期待しています。
今の日本をどういうふうに変えていきたいみたいなものってありますか?
新たな豊かさの指標をつくっていきたいですね。時代の変化によって、私たちが感じる豊かさの物差しも変わっていくと思います。
例えば、これまではブランドや財産が豊かさの象徴としての資産として扱われてきたと思いますが、グローバル経済の中で資産の価値も不可抗力的に変動し得るし、企業価値もこれまで以上に変動が激しい時代です。
そんな不確定要素の多い時代のなか、外部影響の少ない確かな資産は、つながりと信頼だと思っています。そして、複数の選択肢を持つこと。
AがだめでもBがある、Cがあるという複数の選択肢を同時にもつこと、そして頼れる人やつながりを多く持つこと、それこそが幸せにつながると信じ、新たな豊かさの物差しとして世の中に普及していきたいです。
人とのつながりが特別なものになっていくんですか?
いま、接点自体が昔よりも格段に減っているんですよね。
極端に言えば「おひとりさま現象」になっている中で、彼氏・彼女とか家族としか強いつながりを保ちにくいというか、そこがスタート地点になってしまっています。
人と助け合うとか、人とつながる、人と支え合うっていうシェアの思想が価値観として広がっていけば、もっと優しい社会になると思います。
なるほど。
最後に、石山さんにとって仕事とは何か教えてください。
なりたいとか見てみたい世界を作っていくための活動です。
どういうことでしょうか?
仕事ってどんなものでも誰かのためになるものかなと思います。世の中の問題を解決したり、未来をつくっていったりするものだと。
自分が見てみたい未来、世界に向かって、いろいろ作っていくための活動が仕事であるというふうに思います。
なりたい世界をつくっていく上で、仲間を作ったり、いろんな人たちに働きかけたり、社会の仕組みを作ったりとか、そういったすべての活動に集約されると思います。それが私にとっての仕事です。
就活している学生にアドバイスはありますか?
「使命感を持つこと」。自己成長や趣味を目的に仕事にするのも良いですが、できるなら、その先にある目指したい社会や未来に共感して一緒に取り組んでくれる仲間が増える方が良いじゃないですか。
そうかも。
自己完結した目標だと、いつでも勝手にやめることができるけれど、誰かのためにやりたい、自分がやらなきゃいけないって使命感を持てば、自分を止めることはできません。
それを生きがいや喜びって感じるのが、私のモチベーションでもあるんですよね。
うん、響きます。そのとおりだと思います。
使命感が進んでいくためのヒントなのかなって思います。
自分が考えた意義とか、そういった視点で使命感を持つことっていうのを考えてみてもらえたらいいなと思います。
ありがとうございました。
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