Q.インドで見つかった変異ウイルスとは?

A.
インドでは、2021年4月以降、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大し、その原因として宗教行事や政治の集会で多くの人が集まったことや、人との間に距離を置くなどの対策が十分取られなかったことと並んで、インドで見つかった変異ウイルスの影響があると考えられています。

WHOによりますと、インドで2020年10月に初めて報告され、2021年4月後半までにインドで陽性となった検体のおよそ0.1%について行われたゲノム解析のデータでは、あわせておよそ28%が同様の特徴を持つ変異ウイルスだったとしています。

懸念される変異株

インドで見つかった変異ウイルスは3つのタイプに分けられますが、このうち、最も拡大している呼ばれるタイプについて、WHO=世界保健機関は警戒度が最も高い「懸念される変異株」に位置づけて監視を強化しています。

この変異ウイルスはウイルスの突起の部分にあたる「スパイクたんぱく質」のアミノ酸が変化していて、主な変異として感染力が高まるのに関わるとされる「L452R」のほか、「P681R」という変異があります。

WHOによりますと、このタイプが報告されている国や地域は、2021年6月1日現在で62に上ります。

特定の国への差別的な扱いを防ぐため、WHOは変異ウイルスについてギリシャ文字による呼称を使うことを推奨していて、この変異ウイルスを「デルタ」と呼ぶよう推奨しています。

この変異ウイルスの感染力について、イギリスの公衆衛生当局は、2021年5月7日、イギリスで見つかった変異ウイルスと同等の感染力があることが示唆される一方、これまでのところ、感染した際の重症度が上がったりワクチンの効果に影響が出たりするという証拠は確認されていないとしています。

イギリスでの分析で、イギリスで見つかった変異ウイルスと比べてもさらに50%感染力が強いという試算もあり、数理モデルを使った感染症の分析が専門の、京都大学の西浦博教授は「イギリスで見つかった変異ウイルスより、感染性が高く世界中で置き換わる可能性が高い。イギリスのものが日本に侵入するのには2か月ほどかかったが、それによりも短いスパンで、突如として流行が始まり拡大すると考えられる」とコメントしています。

また、ワクチンの効果について、イギリス政府が2021年5月22日に出した報告では、ファイザーのワクチンを2回接種した後、▼イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては発症を防ぐ効果が93%だったのに対して、▼インドで見つかった変異ウイルスに対しては88%、アストラゼネカのワクチンを2回接種した後、▼イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては66%だったのに対して、▼インドで見つかった変異ウイルスに対しては60%だったとしています。

ほかの2つのタイプ

インドで見つかった変異ウイルスのうち、ほかの2つのタイプは主な変異として「L452R」と「P681R」に加えて、「E484Q」という変異も含まれています。

これらの2つのタイプについて、WHOは▼一部で拡大しているものの各国への波及は少ない1つのタイプを「注意すべき変異株」に位置づけていますが、▼もう1つのタイプについては報告が比較的少ないとして「懸念される変異株」にも「注意すべき変異株」にも位置づけていません。

一方、新型コロナウイルスでは2つ以上の変異が同時に起こるのは珍しいことではなく、感染力などの性質にどの程度影響のある変異かどうかが問題となります。

イギリスで最初に確認された変異ウイルスはスパイクたんぱく質に主なものだけでも5つ以上の変異があり、このうち感染力を高めるとされる「N501Y」という変異が問題となっています。

また、南アフリカで見つかった変異ウイルスとブラジルで広がった変異ウイルスでは、「N501Y」に加えて免疫の効果が低下する可能性のある「E484K」の変異もあり、インドで見つかった変異ウイルスと同様に問題となる2つの変異を合わせ持つウイルスとなっています。

(2021年6月2日現在)