Q.世界・日本での広がりは?

A.
WHO=世界保健機関は、感染力が強まる、感染した際の重症度が上がる、それにワクチンの効果が下がるおそれがある変異ウイルスを「懸念される変異株=VOC」に位置づけ、国際的に警戒するよう呼びかけています。現在、「VOC」として警戒が強められている変異ウイルスは4種類あります。

イギリスで報告の変異ウイルス「アルファ株」

イギリスで最初に見つかった感染力が強い変異ウイルス「アルファ株」は、2020年12月上旬に報告されましたが、その後行われたウイルスの解析から2020年9月20日にはこのウイルスに感染した人がいたことが分かっています。

イギリスでは、2020年12月上旬には1日あたりの感染者数は1万人台だったのが、その後急増し、12月下旬には5万人台に、そして2021年1月に入ると6万人を超える日もありました。

この増加の大きな要因は変異ウイルスによるものと見られています。

この間、世界各地に広がっていて、WHOによりますと、2021年7月27日までにこの変異ウイルスが報告されている国や地域は182に上ります。

国立感染症研究所によりますと日本国内でも2021年5月下旬の段階では各地で全体の90%以上が従来のウイルスからこの変異ウイルスに置き換わったとされています。

南アフリカで報告の変異ウイルス「ベータ株」

南アフリカで最初に見つかった変異ウイルス「ベータ株」は、2020年5月に初めて報告され、11月中旬に南アフリカで行われた解析では、ほとんどがこのタイプの変異ウイルスだったとみられています。

WHOによりますと、2021年7月27日までにこの変異ウイルスが報告されている国や地域は131に上ります。

日本国内では、2021年7月26日までに25人から検出されています。

ブラジルで広がった変異ウイルス「ガンマ株」

ブラジルで広がった変異ウイルス「ガンマ株」は、2021年1月6日、ブラジルから日本に到着した人で最初に検出されました。

WHOによりますと、2021年7月27日までにこの変異ウイルスが報告されている国や地域は、81に上ります。

ブラジルでは、北部のマナウスで2020年12月ごろまでに出現したとされ、WHOによりますと、ブラジルでは2021年3月・4月の時点では遺伝子を詳しく調べた検体のうち、83%に上ったとしています。

日本国内では、2021年7月26日までに86人から検出されています。

インドで報告の変異ウイルス「デルタ株」など

WHOは、インドで見つかった変異ウイルスのうち、最も感染が拡大しているタイプの「デルタ株」を警戒度が最も高い「懸念される変異株」に位置づけて監視を強化しています。

イギリスで行われた分析で、「アルファ株」と比べて感染力がさらに50%程度強く、従来のウイルスと比べるとおよそ2倍に上ると分析されています。

WHOによりますと、このウイルスが報告されている国や地域は、2021年7月27日現在で132に上ります。

インドでは、2021年4月ごろに爆発的に感染が拡大しましたが、多くの人が集まった宗教や文化の行事があったことと並んで変異ウイルスが拡大の原因の1つと考えられています。

国立感染症研究所によりますと日本国内でも置き換わりが進み、東京都など首都圏では2021年7月下旬の段階でおよそ75%がデルタ株になっていて、2021年8月下旬にはほぼすべてが置き換わると推定しています。

ほかの変異ウイルスも

WHOが「懸念される変異株=VOC」や「注目すべき変異株=VOI」に位置づけていないものの、国立感染症研究所が独自に「VOI」に位置づけている変異ウイルスがあります。

その1つが、2021年2月25日にフィリピンから日本国内に入国した人で確認された変異ウイルスで、感染力が高まる変異と、免疫の攻撃から逃れる変異があると報告されています。

この変異ウイルスは「シータ株」と呼ばれ、WHOは一時「VOI」に位置づけていましたが、検出される割合が少ないとして2021年7月に「VOI」という位置づけを外しました。

国立感染症研究所では2021年4月に「懸念される変異株」と位置づけましたが、フィリピンでも大幅な増加傾向を示さず、フィリピン以外でも拡大傾向を示していないとして、2021年6月、国内でも「注目すべき変異株」に位置づけを変更しました。

世界各地では新型コロナウイルスの遺伝子配列がデータベースに公開されていて新たな変異ウイルスが次々に報告されています。

WHOは各国に対し、ウイルスの広がりを見る調査や戦略的な検査、ゲノム解析などを通じて、対策を強化し続けてほしいとしています。

(2021年7月28日現在)