5年前の自分からどれだけ成長したか示す

遠藤航

サッカー

東京オリンピックに臨むサッカー24歳以下の日本代表のメンバーに頼もしい「先輩」が加わった。
ドイツ1部リーグ、シュツットガルトでプレーする28歳の遠藤航だ。体格差のある相手にも当たり負けしない体の強さと素早い寄せで次々とボールを奪う。年齢制限のない日本代表でもボランチとして欠かせない存在だ。
オーバーエイジ枠でのオリンピック出場を打診され、快諾した。

「自国開催でできることはすごく光栄なこと。選んでもらったことに応えたいし、誇りと責任を持ってプレーしたい」

遠藤はオリンピックに特別な思いがあるという。
原点にあるのはキャプテンとして臨んだ5年前、2016年のリオデジャネイロ大会の苦い経験だ。大会の初戦でナイジェリアに敗れたことが響き予選リーグで敗退となった。

当時、J1の浦和レッズでプレーしていたが、成長のために厳しい環境に身を置く必要があると感じ、2018年にヨーロッパに渡り、みずからを高めてきた。
そして昨シーズンはドイツ1部リーグで「デュエル」と呼ばれる1対1の局面での勝利数がリーグ最多の「476」をマーク。
屈強な選手がそろうドイツ1部リーグでも身長1m78㎝の日本人が「個」で勝負できることを数字で示した。

「ボールを奪う感覚はかなり洗練されたと思う。どんな相手でも自分のところでしっかりボールを奪いきるところは見せたい」

森保監督からは「経験の浅い選手にプレーで示し、コミュニケーションを取りながら、成長を促してほしい」と精神的な柱としても期待されている。
遠藤がチームに合流した6月の強化合宿の中でその姿勢が示された場面があった。

6月3日、年齢制限のない代表との試合で0対3で敗れた後のことだ。ロッカールームでこの日、センターバックに入った橋岡大樹に真剣な表情でこう伝えた。

「浅野にぶち抜かれんなよ。あれは潰さないとダメよ」

フォワードの浅野拓磨にスピードで振り切られ、ピンチを招いたシーンを振り返ってのものだった。

「特にビハインドの展開だとセンターバック2人で速く強く守らないといけない。最終的には『個』の勝負だということは、もっと若い選手たちに伝えていかないといけない」

もちろん口だけではない。プレーでも存在感は絶大だった。6月12日のジャマイカ戦はコースを狙った技ありのミドルシュートで追加点をもたらした。
その得点は遠藤自身が相手ディフェンダーの縦パスを鋭く読み、ゴールに近い位置でボールを奪ったことが起点となった。
「ボール奪取」とともに遠藤が大切にしている「前」への意識がつながったものだ。

「ドイツ1部リーグに移籍して、海外の選手がどんどん前にボールを奪いに行く姿を見てきた。そういう環境でプレーしたからこそ、『今、奪いに行ける』という感覚の幅が広がり、奪いきる感覚も身に付けることができた。一人一人の意識で変われると思うし、意識を変えるためには、そういう選手を間近で見ないといけない」

ドイツで鍛え上げたみずからのプレーを見て、若い選手に何かを感じ取ってもらいたいと考えている。
前回の大会よりも実力と自信をつけて臨む東京オリンピック。ピッチ内外でチームを引っ張り、必ずメダルをもたらすと誓っている。

「リオデジャネイロで悔しい思いをしたので、もう一度リベンジしたい。5年前の自分からどれだけ成長したか、それを示す大会になる。オリンピックにかける思いは強い」

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