日本を勝たせる選手に

田中碧

サッカー #苦しいとき

サッカー日本代表はワールドカップカタール大会で優勝経験のあるドイツとスペインを破って決勝トーナメント進出を決めた。
スペイン戦で決勝ゴールを挙げたのが田中碧だった。

初めてのワールドカップを終えた田中。

「勝ったときやゴールが入ったときは、今まで経験してきた試合とは別世界にいるくらい嬉しく、自分の感情がこんなに揺さぶられるのかと思った。日本の皆さんと喜びや悔しさを分かち合えるところもワールドカップだと感じた」


田中はワールドカップが始まる直前、苦しんでいた。
精度の高いパスを駆使して攻撃を組み立てるミッドフィルダーとして、この1年で日本代表の中盤に欠かせない存在になっていたが、去年9月、本番を想定して主力メンバーで臨んだアメリカとの強化試合では先発から外れた。

現実を突きつけられ「すごく立ち位置がはっきりした感があるし、いざこういう状況が起きるとやっぱり悔しい。ここからどうはい上がっていくか」と唇をかんだ。
試合を組み立てるだけでなく、自分でも勝負を決めなければならない。

地道に鍛えてきた走力を生かして攻撃参加の頻度を増やし、積極的に得点を狙いに行った。同じポジションを担うほかの選手のけがもあって、ワールドカップのドイツ戦とスペイン戦で先発のチャンスが巡ってきた。

そしてスペイン戦。

同点で迎えた後半、みずからパスを出したあとゴール前に走り込み、味方が折り返したボールを体を投げ出して押し込んだ。
この泥臭い決勝ゴールこそ田中が取り組んできた攻撃参加が実を結んだものだった。

「ゴール前に入ることを意識して取り組んできたからこそ、あそこに走り込むことができた。決してきれいなゴールではなく、かっこいいゴールでもないかもしれないが、積み上げてきたものが実ったゴールだった。試合に出た時に自分が点を決めるというのは信じ続けてやってきたので、その結果、点が取れたのかなと」


それでも日本は決勝トーナメント1回戦でクロアチアに敗れ、目標のベスト8には届かなかった。

得点と勝利で味わった格別な喜びの後の敗戦の悔し涙。
初めてのワールドカップで「短期間でいろんな感情に出会った」と言う。
そして、世界最高峰の舞台で感じたのは「『化け物』しかいない」ということ。
27歳で迎える次のワールドカップで新しい景色を見るために。
田中はより厳しい環境に身を置き、みずからを磨いていく決意でいる。

「日本を勝たせる選手、自分がいることでチームが勝つような選手になる。技術もフィジカルも頭の部分もそうだし、メンタル的なものも全部、上げていかないといけない。
そのためにはより高いレベルでサッカーをしないといけないしどのチームでも結果を残し続けて中心選手になっていかないといけない。そういうことを継続すれば自分の新たなステージが見えるだろうし、新たな自分にも出会えると思う」

サッカー #苦しいとき