実感がわかないので何回も金メダルを見たい

入江聖奈

ボクシング

東京オリンピック、ボクシング女子で日本選手初のメダルとなる金メダルを獲得したフェザー級の入江聖奈。決勝で判定勝ちが告げられた瞬間は、大好きだというカエルのようにリング上で跳びはねた。

鳥取県出身、日本体育大学3年生の入江。小学生の時、ボクシングの漫画「がんばれ元気」の主人公に憧れ競技をはじめた。運動神経は決していいほうではなく、鉄棒の逆上がりや、マット運動を苦手にしていた。

入江が育ったジムの会長で、小学生の頃から指導してきた伊田武志(日本ボクシング連盟女子強化委員長)は「センスや天才的な何かを持ってたかというと、全くない。普通の女の子。しかし、並々ならぬ努力をしてきている。たとえつまらない練習であっても、コツコツと積み上げて、やり続けられる強い精神力を持っている」と語る。

足りないところはある。そこを努力で乗り越える。努力ができるという才能が、入江選手を表彰台の最も高いところに押し上げたのかもしれない。

「本当に運動音痴。運動が苦手な子でも、努力を諦めなかったら、何かつかむことができるということを、教えてあげられたと思う」

2021年8月3日。東京オリンピック、女子フェザー級決勝。

「勝って歴史の扉を全部開けたい」

そう意気込んで臨んだ。
第1ラウンドは、踏み込んでパンチを当てるなど入江が優位。しかし第2ラウンドは相手に押される展開に。最終第3ラウンドは打ち合いの中で、入江がうまく相手の攻めをしのいでボディーへのパンチや左右の連打を決めた。
判定は5対0。入江が金メダルをつかみとった。

「夢みたいで何回もほっぺたをつねりました。今も夢の中のような気がします。実感がわかないので何回も金メダルを見たい」

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