東北で唯一のプロ野球の球団。そこは忘れてはいけない

則本昂大

野球

2022年、プロ10年目を迎えるプロ野球、楽天の則本昂大。東日本大震災の発生から10年となった2021年シーズンはやり残したことがあった。

「節目の年で田中さん(田中将大)も大リーグから帰ってきて、優勝したい気持ちが強かったけれど3位で終わってしまった。震災から10年がたって、記憶が薄れてきている部分はあると思う。忘れないという気持ちも含めてことしこそ優勝しか目指さない」

関西で生まれ育った則本。プロ1年目だった2013年、球団初となる新人での開幕投手を務め、シーズン24勝を挙げた田中に次ぐチーム2位の15勝を挙げた。この年、楽天は初のリーグ優勝を果たし、日本一に上り詰めた。

復興へと歩む東北が楽天の日本一に沸き、多くの笑顔を見ることができた。
その光景は今も胸に刻み込まれている。

「ファンの皆さんが涙を流しながら喜んでくださっていた。本当に僕たちの優勝を待ち望んでいたんだなと思った」

あれからチームは優勝から遠ざかっている。
新人で日本一を経験した則本も今では立場が変わり、チームを引っ張る存在になった。

「正直、1年目は背負うものもないまま、ただ先輩方の流れに乗っかってやって、最後に日本一になれてうれしい気持ちだけだった。これだけ長くこのチームにお世話になり、たくさんの経験をしてチームを背負ってやっていきたい気持ちがある」

入団以来、毎年欠かさず田中のもとでトレーニングを積み、技や野球への姿勢を学んできた則本。その教えを今度は後輩に伝えていこうと踏み出している。

田中から自立し、みずから若手を連れてシーズンオフの自主トレーニングを行うようになったのだ。

「田中さんから学んだトレーニングの種目や練習に向き合う姿勢は刺激的な部分が多かったので、それをしっかり後輩に伝えていきたい。自主トレを一緒にする仲間が活躍してくれると自分が成績を残すよりもうれしいし、後輩たちの人生を背負ってやっている」

プロ通算100勝まであと4勝で迎える2022年シーズン。「さらっと達成したい」という則本の胸には”東北人”として成し遂げたい、ただ1つの目標がある。

「自分は震災を経験しているわけではない。だけど今、東北に住んでいて、まだまだ復興しきったとはいえないと思う。僕たちは東北で唯一のプロ野球の球団。それは忘れてはいけないし、選手一人一人が常に思って、もう一度優勝してファンの皆さんと一緒に喜びたい」

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