差し出されたものに乗っかってプロゴルファーをやる時代ではもうない

池田勇太

ゴルフ

スーツ姿で周りに指示を出し、スマートフォンを操る。その姿はおよそプロゴルファーに見えなかった。 男子の国内ツアーで21勝をあげている池田勇太。選手会の事務局長として、史上初めての“選手会主催の大会”実現に奔走していた。

「自分たちの働く場所は自分たちで。ゴルフ界に旋風を巻き起こす大会を作る」

選手である池田が練習を後回しにしてまで大会開催に意欲を燃やす背景には、人気の低迷が続く男子ゴルフ界の厳しい現状がある。大会数は最盛期の半分ほど、2020年は新型コロナの影響でわずか6大会と、14大会が開催された女子ツアーの半分以下だった。

「ただ差し出されたものに乗っかって、今までどおりプロゴルファーをやる時代ではもうないんだと思います」

スポンサー探しやコロナ対策など、大会を主催するために課題と向き合う中で気づかされたことがたくさんあるという。

「厳しい世の中でも男子プロゴルファーのためにトーナメントを開催して下さっている方々がいるということ。トーナメントを開催することがどんなに大変なことで、どんなにお金がかかるか、そういうものを感じた」

こうして開催にこぎ着けた、2021年5月の選手会主催の大会。選手たちのアイデアが随所に取り入れられたかつてない大会となった。
それが最もあらわれたのが最終日の最終ホール。選手の意見をもとに設定されたピンの位置は、グリーン奥の最も傾斜がきつい場所に。これが勝負の行方を左右する見せ場となった。
最終ホールで多くの選手がスコアを落とし、劇的な決着につながったのだ。大会のあと池田の表情は充実感に満ちていた。

「試合が減るから大変だよねって、口で言うのは簡単だが、そうではなく考えなければいけない時代だと思う。感謝の思いを持って大会に出場していく、みんながその思いを持ってくれれば、これからどんどんゴルフ界も変わっていくのかなと思います」

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