日本の方々の前で投げることを上回るものは、最後までなかった

田中将大

野球

大リーグ屈指の人気球団、ヤンキースで活躍してきた田中将大。8年ぶりの古巣復帰となるプロ野球 楽天への入団会見で、素直な思いを打ち明けた。

「正直な話をすると、やはりヤンキースと再契約してまだプレーがしたいという思いがあった。しかし、代理人を通じて話を聞いている中で、かなり早い段階で『これはもう別々の道を歩んでいかなければいけない』と感じた」

ワールドシリーズを制し、チャンピオンリングを手にするという目標は果たせなかった。ヤンキースとの再契約が難しくなった一方、別の球団からアメリカでの7年間を高く評価したオファーもあったという。

「本当にさまざまなことを、今まで考えたこともないくらい考え、悩んで悩んで悩み抜いた」

そんな田中に古巣の楽天からも復帰のラブコールが寄せられた。8年前、みずから決めた球団初の日本一の瞬間は今も特別だという。

「自分の野球人生の中での大きな出来事であるのは、間違いない。大リーグでの登板前に自分のモチベーションや集中力を上げるために見るビデオがあるが、7年間ずっと、日本一の瞬間を入れてもらっていて、毎試合それを見てゲームに入っていた」

大リーグか、それともプロ野球か。春のキャンプが始まる直前の2021年1月28日、ついに決断を下す。悩み抜いたすえの結論は明快だった。

「楽天でプレーして、また日本の方々の前で投げることを上回るものは、最後までなかった」

背景にあったのは、東日本大震災と東北の人たちへの思いだ。

「震災から10年という数字は、やはり自分にとって意味のあるタイミングではないかと思う。今でも一緒になって頑張りたい気持ちは、もちろん変わらずにある。また近くに、今まで以上に近くにいられることで、僕に何かできることがたくさんあるかもしれない」

震災から2年後、24勝負けなしという圧倒的なピッチングで日本一の立役者となった。あの光景を再び、仙台、東北の人たちとともに。力強く決意を語った。

「こだわりたいタイトルは、日本一。正直、(日本一の)2013年で、みなさんの印象が止まっている部分はあると思う。すごく求められている部分、ハードルは高いと思うが、そこをまた跳び越えてやろうというのも自分の中でのやりがいの一つでもある。本気で日本一を取りにいきたい」

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