日経平均株価最高値 バブル期知る証券マンは何を感じたか

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日経平均株価が2月22日、バブル期につけた終値としての史上最高値を34年ぶりに更新しました。長年証券業界で働き、バブル崩壊・リーマンショックを目撃した証券マンはこの日、何を感じたのか?ある証券マンの言葉から、株高の背景と行方を探ります。

終値3万9098円68銭で最高値を更新(2月22日)

2月22日「株式市場再生の扉が開いた」

田部井美彦さん

証券業界に35年余り身を置き、市場動向の分析などを行っている田部井美彦さん。株価が最高値を更新し、終値が3万9098円68銭まで上昇した2月22日、証券会社が集まる東京・兜町で次のように語りました。

証券会社 投資調査部長 田部井美彦さん
まさに日本再生、日本株式市場の再生の扉が開けられたのかなと。株価を形成していく、その原点がきょうという日になればいいなと

大納会で最高値つけたバブル期の兜町

この日、終値3万8915円でバブル期の最高値をつけた

株価がバブル期の最高値をつけた1989年、田部井さんは今とは別の証券会社に入社して2年目でした。連日株価が上昇し、兜町は活気にあふれていたといいます。

当時を振り返る田部井さん。こちら側の通りには…
かつて「証券会社さんがどーんとあって。所狭しと並んでいて」(資料映像)
「うなぎ屋さんとかいっぱいあって、昼時になると煙が立ち込めて、すごい状況になっていた」(資料映像)

私もよく覚えているが(終値)3万8915円、最高値、まさに大納会で最高値、『こんなすごいことはない』『来年期待できるぞ』と。『ヨイヨイヨイだから4万4400円、来年は4万4400円を目指してみんなで頑張ろう!』みたいな感じ

バブル崩壊 そしてリーマンショック

しかしその後、バブルは崩壊し株価は急落。リーマンショック後の2009年には約7000円にまで落ち込みました

田部井さんは、先の見えない株価に希望を失った時期もあったといいます。

もう私はこの業界を定年退職で去るまで(最高値更新は)もう無理だろうなと。だって(日経平均)株価7000円とかいってるんですよね。こんな(株価を)つけたときには、『この業界で働いていていいのかな』と何回思ったことか

今回はバブルではない?

田部井さんは今回の株高はバブルとは違うとみています。

企業の業績が伴っていて割高感がないこと、株主にしっかりと利益を還元する企業が増え、海外を含めた投資家が評価していることなどが、その理由だといいます。

日本の企業が変わってきている。企業が株主を向いてきている。いろいろな条件が重なる中で、この数字(株価)をつくってきた。これから先すぐにどんどん上がっていくとはもちろん思わないが、この先10年も想像できるような扉が開いたのではないか

“期待先行”の株高か 真価問われる企業

株価上昇を巡ってはさまざまな見方があります。田部井さんが語る「扉が開いた」という言葉で想起されるのは、長く続いたデフレからの脱却というキーワードです。

デフレからインフレに変わると物価が上がる世の中になります。物価が上がると賃金の引き上げ要求が強まります企業がそれに応え続けてゆくには、否応なく利益を上げなければならなくなります

利益が増えれば株価も上がりやすくなるわけですから、今回の株価上昇の背景にはそうした期待の高まりがあるということかもしれません。

ただ、現段階ではあくまで“期待先行”の株高です。企業はこれから人材や研究開発に積極的に投資してイノベーションを生み出し、収益力を向上させて期待に応えていく必要があります。

(経済番組 梅本肇、解説委員 神子田章博)
【2024年3月15日放送】
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