アメリカ 個人消費に向かい風?

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アメリカでは11月下旬から始まった年末商戦が終盤を迎えています。インフレが続く中でも個人消費は堅調に推移してきましたが、FRB=連邦準備制度理事会が続けてきた利上げなどの影響が徐々にあらわれ始めています。

年末商戦佳境も…気になるデータ

まもなくクリスマスを迎えるニューヨークでは、年末商戦が終盤を迎え、多くの買い物客でにぎわっています。

買い物客の一人は次のように話しました。

物価高にもかかわらずアメリカの消費は今のところ堅調に見えます。しかし気になるデータも出ています。

全米小売業協会によると、11月と12月の小売業の売り上げの増加率は3~4%と4年ぶりの低い水準にとどまると予想されています。

学生ローン再開 家計を圧迫

消費の減速につながる要因の一つと見られているのが、このほど再開された学生ローンの返済です。

ワシントンに住む会社員のマイケール・ジェームズさんは、通っていた私立大学の学費が日本円で年間500万円近くに上りました。これを賄うために借りた約1100万円のローンを抱えています。

マイケール・ジェームズさん
約1100万円のローンを抱えている

コロナ禍の支援策として返済が猶予されてきましたが、10月から毎月5万円余りの返済が始まり、家計を圧迫しています。クリスマスに家族に贈る贈り物などの出費は減らす計画だといいます。

マイケール・ジェームズさん
「食べ物も高価だし、贈り物を買うのも高い。状況は厳しい。特に日用品などの購入をこれまでより減らす必要がある」

上昇続ける自動車ローン金利

さらに、FRBが続けてきた利上げが影を落としています。高い金利の影響が出ているのが、自動車の市場です。

自動車ローン金利の平均(新車)は、利上げが始まった2022年3月から上昇を続け、23年10月には7.6%に達しました

ローン金利の上昇で新車に手が届きにくくなる中、寄付された車を修理して低所得者層に安く譲る活動をしているメリーランド州のNPOでは、申し込みがこれまでと比べて2~3倍に増えているといいます。

車を安く譲り受けた利用者。申し込みは2~3倍に

寄付された車を安く譲るNPO マーチン・シュワルツ理事長
「彼ら(低所得者層)は自動車ローンの審査で承認されるのが、とても難しくなっている」

2024年の個人消費はどうなる?

専門家は、FRBの金融政策の動向によっては、消費が減速しかねないと指摘しています。

米国野村証券 雨宮愛知 シニアエコノミスト
「FRBがなかなか利下げを始めない、あるいは始めたとしても、非常に緩やかにしか始めないということであれば、金利の負担は非常に高水準に維持されたままになる。雇用者報酬の伸びの鈍化、物価水準が高止まっていることを考慮すると、やはり来年の個人消費はそれほど明るくない」

FRBが今後どのようなペースで利下げを行っていくのか、アメリカの消費の動向は日本からの輸出にも影響を与えることになるので、今後の展開が注目されます。
(アメリカ総局 江﨑大輔)
【2023年12月21日放送】
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