1次リーグ 日本代表 第1戦 対ドイツ

11月23日水曜日、日本代表対ドイツ代表戦の試合結果。サッカーワールドカップ2022試合情報。過去の日本戦結果、予選での戦績、最新の戦いぶりなどの評価や注目選手など最新情報をお伝えします。

目次

    日本×ドイツ タイムライン

    ドイツとは

    ドイツは世界ランキング11位。ワールドカップは18大会連続20回目の出場で、西ドイツ時代も含めて過去に4回、ワールドカップで優勝しています。
    (※世界ランキングは10月6日現在)

    2014年ブラジル大会は優勝も…

    2014年のブラジル大会では、若手とベテランがかみ合って戦力が充実し、フォワードのミュラー選手が5得点を挙げるなどの活躍もあって西ドイツ時代も含め4回目の優勝を果たしました。
    決勝進出8回、4強以上13回はいずれも最多ですが、前回、ロシア大会は史上初の1次リーグ敗退となりました。

    現在のスタイル

    強豪 バイエルンミュンヘンでプレーする選手を軸に、高い位置からのプレスと縦への鋭い攻撃が持ち味です。
    最後尾には現代サッカーのGK像を確立したと言われるノイアー選手が立ちはだかります。
    19歳の新鋭ムシアラ選手はしなやかな動きと軽妙なドルブルで切り札的存在。また左利きの長身FWのハバーツ選手も注目で、勝負を諦めない精神的強さが伝統です。

    FWミュラー選手(左) GKノイアー選手(右)

    ドイツ代表 日程・結果は、こちらから

    予選の戦いぶり

    ヨーロッパ予選では、2連勝のあと第3戦で北マケドニアに1対2で敗れましたが、その後は連勝を続け、去年10月に開催国を除いて一番乗りで本大会の出場権を獲得しました。

    ヨーロッパ予選

    対戦日 対戦国 結果
    3/25 アイスランド ○3-0
    3/28 ルーマニア ○1-0
    3/31 北マケドニア ●1-2
    9/2 リヒテンシュタイン ○2-0
    9/5 アルメニア ○6-0
    9/8 アイスランド ○4-0
    10/8 ルーマニア ○2-1
    10/11 北マケドニア ○4-0
    11/11 リヒテンシュタイン ○9-0
    11/14 アルメニア ○4-1

    日本との対戦成績

    日本は、これまで強化試合で2回対戦し、1敗1引き分けの成績です。

    ドイツ代表メンバー26人

    10日、ドイツのハンジ・フリック監督が記者会見を開いて、ドイツの代表メンバー26人を発表しました。

    このうち、12年前の南アフリカ大会で初出場ながら得点王に輝いたドイツ1部リーグの強豪、バイエルンミュンヘンに所属する33歳のミュラー選手は4大会連続4回目の出場となります。

    また、ゴールキーパーには、36歳のベテランで、同じくバイエルンミュンヘンのマヌエル・ノイアー選手が選出されたほか、中盤の要として活躍が期待されるヨシュア・キミッヒ選手やジャマル・ムシアラ選手、イルカイ・ギュンドアン選手なども選ばれました。

    ドイツ代表は、今月16日にオマーンとの強化試合を行い、23日の日本との初戦に備える予定です。

    ポジション 代表メンバー
    GK マヌエル・ノイアー(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    GK マーク アンドレ・テアシュテーゲン(スペイン1部・バルセロナ)
    GK ケビン・トラップ(ドイツ1部・フランクフルト)
    DF アルメル・ベラ コチャップ(イングランドプレミアリーグ・サウサンプトン)
    DF マティアス・ギンタ―(ドイツ1部・フライブルク)
    DF クリスティアン・グンター(ドイツ1部・フライブルク)
    DF ティロ・ケーラー(イングランドプレミアリーグ・ウェストハム)
    DF ルーカス・クロスターマン(ドイツ1部・ライプチヒ)
    DF アントニオ・リュディガー(スペイン1部・レアルマドリード)
    DF ニコ・シュロッターベック(ドイツ1部・ドルトムント)
    DF 二クラス・ズーレ(ドイツ1部・ドルトムント)
    MF ダービト・ラウム(ドイツ1部・ライプチヒ)
    MF ヨシュア・キミッヒ(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    MF カイ・ハバーツ(イングランドプレミアリーグ・チェルシー)
    MF レオン・ゴレツカ(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    MF マリオ・ゲッツェ(ドイツ1部・フランクフルト)
    MF ジャマル・ムシアラ(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    MF ユリアン・ブラント(ドイツ1部・ドルトムント)
    MF ヨナス・ホフマン(ドイツ1部・メンヘングラートバッハ)
    MF リロイ・サネ(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    MF イルカイ・ギュンドアン(イングランドプレミアリーグ・マンチェスターシティー)
    FW ニクラス・フュルクルク(ドイツ1部・ブレーメン)
    FW セルジュ・ニャブリ(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    FW トーマス・ミュラー(ドイツ1部・バイエルンミュンヘン)
    FW カリム・アデイェミ(ドイツ1部・ドルトムント)
    FW ユスファ・ムココ(ドイツ1部・ドルトムント)

    NHKサッカー解説 山本昌邦さんに聞く~日本選手の経験値にこれまでと格段に違い

    NHKサッカー解説 山本昌邦さん

    2002年日韓大会でコーチを務め、日本の初の決勝トーナメント進出に貢献。
    世界に挑む歴代日本代表の姿を間近で見続けてきた山本昌邦さん(2004年アテネオリンピック日本代表監督)は、世界における日本代表の“立ち位置”について、次のように話しています。
    (取材・構成 アナウンサー 曽根 優)

    山本さん

    ベスト8という新しい歴史的なところにたどり着ける状況になっていると思います。何より大きいのは、選手個々が確実にレベルアップしていること。かつては国外でプレーしていれば『海外組』と呼ばれましたが、その頃とは選手が経験している舞台のレベルが違います。これこそが日本の進化を表しています。ヨーロッパチャンピオンズリーグ(世界最高峰のレベルと言われる)の試合に鎌田大地選手(ドイツ フランクフルト)がいたり、守田英正選手(ポルトガル スポルティング)がいたりするわけです。その強豪チームの中で各選手がどういう立場にいるかということも、かつてとまったく変わっています。

    鎌田大地選手

    山本さん

    そういう選手は自信を持っていると思います。遠藤航選手(ドイツ シュツットガルト)は、データで見てもドイツ1部リーグという非常に高いレベルの中で、すごくボールをインターセプトして奪っています。バイエルンミュンヘン(リーグ10連覇の王者)の中盤の選手よりも遠藤選手の方がデータを見たらいいというような。そういう自信を今の日本選手は当然のように持っています。

    遠藤航選手

    ベスト8の目標達成へ カギは“3つのS”

    選手個々が世界における経験値を確実にあげてきた日本。目標に掲げる初のベスト8入りのためには、まず1次リーグを突破する必要があります。山本さんがカギとして挙げたのは“3つのS”です。

    山本さん

    『初戦』 『先制点』 『セットプレー』
    (それぞれの頭文字を取って)
    この『3つのS(=スリー・エス)』がカギとなるでしょう。
    前回ロシア大会の決勝トーナメント進出は、まさしく『初戦・先制点・セットプレー』」がポイントでした。
    (※コロンビアとの初戦。前半6分に香川真司選手のペナルティーキックで先制
    後半28分にはセットプレーのコーナーキックから大迫勇也選手が追加点。初戦に勝って勝ち点3を獲得した)

    ワールドカップ ロシア大会(2018年) 1次リーグ初戦 コロンビア戦

    山本さん

    先制点を取ると相手が焦って追い込まれていきます。現代サッカーでは相手に徹底的に分析されると流れの中で簡単には崩せず、セットプレーが重要になります。そして先制点は特にワールドカップのような大舞台では非常に重たいものです。また初戦に勝利した約8割のチームが決勝トーナメントに進むことができています。こういうデータに基づいていけば、初戦は単なるリーグ戦3試合のうちの1試合ではないのです。だからこそ初戦ドイツ戦の結果は大切なんです。

    ドイツの強さは〝隙のなさ〟

    日本の初戦の対戦相手ドイツはワールドカップで4回の優勝を誇り、近年では2014年ブラジル大会決勝でアルゼンチンを破って優勝。サッカー界では言わずと知れた強豪です。ヨーロッパ予選は10試合を戦って9勝1敗、36得点4失点という圧倒的な成績で突破しました。今のドイツ代表を山本さんはどう見ているのでしょうか。

    ベルナー選手(右) 味方選手のゴールを祝福

    山本さん

    本当に隙を作らないチームというか、どんなに内容が悪くても最後には勝つという感じがします。悪くても結局失点しないというところが彼らの強みであり、全員が怠ることなく忠実に合理的にプレーしています。とても勝負強いチームです。加えて今のドイツ代表は前線でボールを奪い、素早く攻めるところがすごく強みになっています。前線からのプレスでハーフウェーラインより前(相手陣)でボールを奪ってしまうような圧力が、予選ではすごく得点に繋がったと思います。

    ドイツの強さを支えるMFキミッヒとは

    MF キミッヒ選手

    山本さん

    ドイツは前線で圧力をかけてボールを奪うと、その後の周囲の連動が速いんです。加えて一瞬のパスの精度も非常に高いです。そうした中で日本が警戒しないといけないのがミッドフィルダーのキミッヒ選手です。バイエルンミュンヘンに所属する27歳のキミッヒ選手はフィールドの中央でプレーすることが多いのですが、サイドでもプレーでき、攻撃的にも守備的にもプレーすることができます。その卓越した戦術眼と高い技術でゲームをコントロールできます。またボールを奪った後のパスの出し手として最も怖い選手です。前と後ろのつなぎ役としてもドイツにとって非常に重要です。チームが苦しい時間帯に守備でも頑張れます。守備で主導権を握りたい時に、前線が相手にプレスをかけに行っても後ろの選手が緩んでいたら相手にパスをつながれてしまいます。前の選手を動かしつつ、後ろのどこでボールを奪うのかというところの中心になる選手でもあります。

    日本はドイツのプレスをかいくぐれ!

    山本さん

    ドイツは得点力がありますし、奪ってからゴール前への迫力が凄いです。その回数をいかに減らすかが、日本にとってすごく重要です。守備から速い攻撃へ転ずることやサイドを崩してのクロスボールに迫力ある選手が突っ込んでくるといったプレーの質が素晴らしいです。現代のサッカーは、攻撃と守備とが明確に分かれておらず、攻守の切り替えが一体化していますよね。そこはドイツも強いのでボールを失わないことが大事です。相手のプレスをかいくぐる力は日本にあると思います。うまくパスを散らし、ゴールキーパーもパスワークを使って打開する。それは森保監督が一番得意としていることだと思います。日本の選手は技術があるので、ボールをいったん握り、自分たちが持つ時間を増やしたい。ボールを持つ時間が増えれば失点のリスクも減りますからね。

    狭いエリアの局地戦では勝てる

    山本さん

    やはり日本の『速さ』を生かしたいですね。ドイツに限らず、今回の1次リーグの対戦相手は基本的にみんな攻めてきてくれるわけです。日本がボールを取った後にスピードのある選手がショートカウンターで仕上げる。そういうタレントは日本にいっぱいいます。その前線のスピードが攻撃のポイントではないでしょうか。加えてドイツのディフェンダーの顔ぶれを見ると、細かなステップワークのターンとかワンタッチで3人目が動くようなプレー、そこに日本人の俊敏性を生かせば、狭いエリアで相手を崩すことが可能だと考えます。局地戦に持っていけば日本の強みを出せると。スピードがあるというだけではなく、狭いエリアで俊敏に動くことのできる選手、伊東純也選手(フランス スタッド・ランス)といった彼らの『速さ』はドイツが苦手とするところだと思います。

    伊東純也選手(真ん中)

    セットプレーのキッカー選定は大事

    山本さんが目標達成へのポイントとして挙げた「3つのS」の1つ「セットプレー」。互いに相手を分析し尽くすワールドカップのような大舞台であればあるほど、流れの中で相手を崩し切ることは難しくなります。セットプレーが勝負を決するシーンを多くのサッカーファンが目にしてきました。歴代の日本代表には中村俊輔選手(横浜FC)や遠藤保仁選手(ジュビロ磐田)をはじめとする優れたキッカーが存在しました。

    山本さん

    ワールドカップで得点を取るためにセットプレーは非常に重要です。中でもキッカーは大事な存在ですが、なかなかいないのもまた事実。このため相馬勇紀選手(名古屋グランパス)などを代表に招集しているのではないかと思っています。相馬選手はセットプレーのキッカーとして優秀です。ことし7月に行われた東アジア選手権でもキッカーを務めましたし、右足でも左足でも精度の高いキックができます。またキックのスピードとパンチ力がないと、ワールドカップレベルでは相手のディフェンス能力が高いので跳ね返されてしまいます。今大会は選手の登録人数が23人ではなく26人と増えていますから、特別なキックを持っている選手を1人入れてくるかもしれないですね。

    相馬勇紀選手

    勝負はロースコアで決まる

    山本さん

    ロースコアの1-0、2-1の勝利、あるいは1-1、0-0の引き分け、みたいなことが日本の可能性だと思います。引き分けを最初から狙うということではありませんが、引き分けでも悪い結果ではないということを認識しながら戦う必要があります。先制点がずっと入らず相手にも与えていないという状況は、まあまあ悪くないということです。立ち上がりの時間に、彼らの出力、パワーは凄いと思います。その時間にコンタクトプレーとか相手の圧力でボールを失ったりすると一気に流れを持っていかれます。最初の15分を過ぎると相手のパワー、スピードは1回落ちるので、そうすると日本がボールを動かしながらサッカーができる時間帯になります。ですから15分以内の失点は、絶対にしてはいけません。逆に先制をすれば有利になります。それまでは我慢が必要です。

    日本代表 強化試合 ブラジル戦(2022年6月)

    ともに大事な初戦。ドイツは初戦でどういう戦いを見せるのでしょうか。

    山本さん

    ドイツは日本戦で勝ち点3を取りに来ると思います。次がスペイン戦ですから。スペインとどう真剣勝負をするのかというところと、日本とコスタリカには勝って決勝トーナメントに進むということを見据えているのではないでしょうか。ですからドイツが初戦からパフォーマンスをピークに持ってくるとは思いません。徐々に状態を上げていこうという感じでしょうか。メンバーを多少入れ替えるかもしれないですね。決勝まで7試合と想定するとタイトなスケジュールなので、どこかで選手をうまく全員使っていかないと決勝にたどり着くことができません。少しけががあったり、コンディションが万全ではない選手は日本との初戦には使いにくいと思います。

    ドーハの悲劇から新たな歴史を!

    ワールドカップやオリンピックという大舞台を日本代表のコーチや監督として経験した山本さん。森保一監督が選手時代に経験した「ドーハの悲劇」(※1993年のワールドカップアメリカ大会アジア最終予選の日本対イラク、試合終了間際にゴールを許して引き分け、日本はワールドカップ初出場を逃した)の時も日本サッカー協会のスタッフとして現地に滞在。相手チームの戦力分析などに尽力しました。

    「ドーハの悲劇」も経験 森保一監督

    山本さん

    あのドーハの地で試合が終わってグラウンドに倒れ込んだ日本代表。そのドーハに戻ってきて何か運命的なものを感じます。そういうものは支えになるというか、1つのエネルギーになるような気がします。森保監督がチームをまとめていく時に、自分がそこで体験したことを伝えて、その歴史を今のみんなで動かそうじゃないかと言えます。そうやってみんなの力を1つにする卓越した指導力が森保監督にはあります。あのドーハで、日本サッカーの新しい歴史が積み上がれば本当に素敵なことじゃないですか。

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