決勝トーナメント1回戦で惜敗

日本代表がワールドカップ史上初のベスト8進出をかけた5日の決勝トーナメント1回戦、相手は前回のロシア大会で準優勝したクロアチアでした。世界ランキングも日本の24位に対し12位と格上。中盤には世界的なビッグクラブでプレーする選手がそろい、フィジカルも強力な相手でしたが日本は粘り強く戦いました。
前半43分にコーナーキックからの前田大然選手のゴールで先制。後半10分、相手に高い打点のヘディングシュートを決められて同点とされたもののその後は得点を与えずペナルティーキック戦へ。ここで日本は競り負けました。
日本にとってベスト8は悲願

実は日本にとってベスト8進出がかかる決勝トーナメント1回戦への挑戦は今回が4回目でした。ここまでの3回もすべて敗れていて日本サッカー協会はいまだ届かぬベスト8以上を「新しい景色」と位置づけてきました。
そして今大会の1次リーグはドイツ・スペインという優勝経験のある世界屈指の強豪にいずれも逆転勝ち。ついに悲願達成かと期待が高まっていました。
もう1つの“新しい景色”見せてくれた

クロアチア戦で敗れはしましたが、試合後、森保監督は選手とスタッフを集めて円陣を組み、「ベスト16の壁は破れず、新しい景色を見ることはできなかったと言われるかもしれないが、ドイツやスペインというワールドカップで優勝した経験があるチームにも勝てるという新しい景色を見せてくれた」と今大会で日本として大きな前進があったと強調しました。
優勝経験がある2チームと1次リーグで同じグループに入ったのは日本にとって今大会が初めて。過去に例のない厳しい戦いを強いられながら、その2チームに勝ってグループ首位で決勝トーナメントに進みました。森保監督の言うとおり日本が、ベスト8とは違う別の「新しい景色」にたどりついたと確かに言えると思います。
一転 日本の実力を認めるコメント

思い起こせばワールドカップの組み合わせ抽せんが行われたことし4月。スペイン・ドイツ・日本などが同じグループになったことについてスペイン代表のルイス・エンリケ監督は当時、ドイツについては「すばらしいライバルだ」と話した一方で、日本については「長い間同じ監督だということは知っている」と述べるにとどまり、歯牙にもかけていないことを隠そうともしませんでした。
日本はドイツに勝った後、そのスペインにも逆転勝利。試合後のエンリケ監督は「日本がアグレッシブな守備をしてきた時に、困らないチームは世界のどこにもないだろう」と日本の実力を一転して認めるコメントを出しました。
世界の強豪倒す強さはどこに

では、その日本サッカーが進歩を示せた要因はどこにあったのか。
1つには、まずは1人で局面を打開できる選手が出てきたことです。森保監督は日本が組織として強くなっていくためには選手の「個」の力が上がることが必要だと考えてきました。
1次リーグ第3戦のスペイン戦で、堂安律選手が左足のミドルシュートでマークした同点ゴールは、時速120.04キロを記録し、1次リーグ全体のゴールの中で2番目の速さで、世界トップクラスの質のゴールとも言えるものでした。

クロアチア戦の後半から途中出場した三笘薫選手は、延長前半の終了間際に自陣でボールを持つと得意のドリブルで長い距離を1人で持ち上がり、みずからミドルシュートを打ち、相手ゴールを脅かしました。
パワーや高さでも世界に対応

クロアチア戦ではこれまで課題とされてきた守備面での成長も見られました。同点とされたあと、クロアチアは持ち味の高さを生かしてロングボールを放り込み、得点を奪おうとしてきました。体格差のある相手に日本が苦手としてきたやり方でした。
それでも、イングランドプレミアリーグのアーセナルでプレーする冨安健洋選手などを中心に不利な空中戦を挑まれてもなんとか耐えてしのぎました。
森保監督は「これまでであればロングボールで押し込まれて、そこから押し切られたという日本サッカーの歴史があったと思うが、選手たちが新しい時代を見せてくれて、相手が日本に対してパワーや高さでも十分に世界に対応していけるところを見せてくれた」と話しました。
強く狙ったところに決める部分には差

ただ、前回のワールドカップでは3試合連続で延長戦を制して準優勝した試合巧者のクロアチアに勝負強さを見せつけられたのも事実です。
ペナルティーキック戦では日本の選手3人が外したのに対しクロアチアの選手たちはプレッシャーがかかる状況でも確実に決めてきました。
森保監督は「きょうの試合に関しては相手のゴールキーパーがすばらしかったが、ボールを強く狙ったところに決めるという部分では日本と世界のトップを走るチームとは差があると感じた。強く狙ったところに蹴れれば駆け引きができる。今後の日本サッカーにおいては1つポイントとして改善していかなければいけない部分だと思う」と話しました。
さらに、「われわれが試合をコントロールしてより優位に試合を進めるという部分も日本サッカーのレベルを上げていくポイントの1つだ。すべてが一気には変わらないが、地道に積み上げていくことが大事だと思う」と話していました。
今度はどんなチームを

日本サッカー協会は2050年までにワールドカップでの優勝を果たすことを掲げています。
今大会で日本が前進したのは間違いないでしょうが、キャプテンの吉田選手が「本当に強いチームしかベスト8には行けない」というように、さらに一歩を進めるためにはやはり悲願のベスト8の達成は避けて通れない目標です。
これまでにない収穫と、紙一重で届かなかった課題をどう生かすのか。
日本が今度はどんなチームを作り、「新しい景色を」見に行こうとするのか。
引き続き取材を重ねたいと思います。