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地震 水害 避難 知識

豪雨災害 避難所生活で知ってほしいこと

西日本を中心とした記録的な豪雨の被災地では、多くの人が避難所での生活を余儀なくされています。慣れない生活で疲れがたまる中、厳しい暑さなどによって体調を維持するのが難しい状況だと思います。避難所で生活する人たち、そして、サポートする人たちに知ってほしい注意点と対策です。
(ネットワーク報道部)

2018年7月放送の西日本豪雨ニュースに関連する内容です

目次

    トイレを我慢せず水分を

    被災地では日中の最高気温が各地で30度を超えるところが相次いでいます。

    まず、水分をこまめに補給してください。
    トイレは我慢しないでください。

    便秘やぼうこう炎などになったり、脱水症状につながったりするおそれもあります。

    東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町の保健師に聞いたところ、慣れない避難所の生活では「トイレに行きづらい」と食事や水分をとることを控えようとする人もいるということです。

    トイレを我慢しないためにできるいくつかの工夫です。

    医療関係者などでつくる東京のNPO法人、「日本トイレ研究所」のホームページによると例えば、ゴミ袋や新聞紙を大量に用意して、袋に新聞紙を入れたものを簡易型のトイレにして、袋ごと捨てる方法が有効です。

    バケツなどの水で、トイレを流す場合は、排せつ物だけを流し、紙を別の場所に捨てるようにしないと、配管が詰まるおそれがあります。

    女性などが使いやすいように、囲いなどを作ってプライバシーを保つようにしたり、お互いに声をかけあったりして、トイレに行きやすい環境をつくることも大切だということです。

    NPOは、こうした情報を「日本トイレ研究所」のホームページで公開しています。アドレスはhttps://www.toilet.or.jpです。

    高齢者や小さな子ども連れの避難者には目配りを

    7年前の東日本大震災では、被災地の避難所や仮設住宅で熱中症になる人が相次ぎました。屋外で活動するボランティアも熱中症とみられる症状を訴えるケースも出ました。

    宮城県南三陸町の保健師によりますと、高齢者は体温の調節機能が落ちてくるため、暑さを自覚しにくく、体温が上がっていることに気づかず、熱中症になりやすいということです。

    また、「みんな災害で大変だから」という思いから、体調が悪いにもかかわらず、そのことを周囲に言わないままにする人が多くいるということです。

    周りにいる人たちが高齢者や小さな子どもを抱える親などに定期的に声をかけて体調が悪化していないか、サインを見逃さないことも大切です。

    速乾性のタオルをぬらして首元に

    うちわなどであおぐだけでも熱中症の対策になるそうですが、疲れがたまっている高齢者などの中には、それすら難しいこともあるということです。

    災害時の避難所の実態に詳しい、「災害リスク評価研究所」の松島康生代表は速乾性のタオルを水でぬらして、首元にあてるだけでも体温を下げて熱中症の対策になるとしています。

    一方で、乾きにくいタオルでは体を必要以上に冷やしてしまう可能性があるため、注意が必要だということです。

    冷房の無い避難所は風通しよく

    また、松島さんによりますと、冷房がない避難所は、風通しをよくすることが大切ですが、体育館などの小窓には網戸がなく、蚊やハエなどが入ってくるため、窓を開けないままのこともあるそうです。

    そうした場合は虫の侵入を防ぐことができる網目のものを窓のそばに置いて、虫の侵入を防ぎ、風通しをできるだけよくすることも大切だとしています。

    さらに避難所から外出する際には帽子をかぶったり、定期的に日陰に入ったりするよう勧めています。

    食中毒に注意を

    熊本地震では避難所になっていた熊本市の小学校で、避難していた人たちなどが腹痛などの症状を訴えました。避難所の昼食に提供されたおにぎりから食中毒を引き起こす細菌、「黄色ブドウ球菌」が検出されたことから、保健所は、このおにぎりが原因の集団食中毒と断定しました。

    宮城県南三陸町の保健師は、おにぎりを握る際などは使い捨ての手袋やラップフィルムなどを使って握ることが大切で直接、素手で握ったり、食品に触れたりしないでほしいとしています。

    大事な食べ物 でも捨てるという選択肢も

    さらに、作った食事を長時間、置いたままにしないようにすることも大切だと話しています。

    また食事が残った場合、冷蔵庫に入れたり、食品を再加熱したりして温度管理を徹底して保存することが大切だということです。

    冷蔵庫などがない場合は、提供されたものの食べなかった食事は、食中毒を防ぐためにも思い切って捨てるという選択肢も必要だとしています。

    「もったいない」と食べきれなかった食事を長時間、手元に置く人もいますが、食中毒を予防するためには時には必要な判断だということです。

    感染症の予防を

    国立感染症研究所は、避難所で広がりやすいインフルエンザや急性胃腸炎などの感染症の予防方法をホームページにまとめています。

    ・空気が乾燥する避難所ではマスクの着用 「せきエチケット」の徹底を
    ・せきやくしゃみをする際に手で口を覆うとその手から感染が広がるため、必ずタオルなどで口を覆う
    ・覆うものがなければ、自分のひじの内側で口元をおさえる
    ・人のほうを向いてせきやくしゃみをしない
    ・手を清潔に保つため水がない場合には避難所に速乾性のアルコール消毒剤やウェットティッシュなどを置く
    ・食事の準備や食前、排せつのあと、赤ちゃんのおむつを交換したあとには必ず手洗いや消毒を

    体を動かす

    避難所で体を動かさない生活が続くことで、心身の機能が低下する、いわゆる「生活不活発病」に注意が必要です。

    「日本理学療法士協会」は予防方法を示したマニュアルを作り、協会のホームページで公開しています。

    ・体を動かすことを心がける
    ・日中ずっと横にならない
    ・歩きやすい通路を確保するため、身の回りを片づける
    ・一度に多くの運動をせず少ない量を回数多く行う
    ・歩くことができない人は、ひざの曲げ伸ばしをするなど体の状態に応じた簡単な運動をする

    「日本理学療法士協会」は、「生活不活発病は、本人も気づかないうちに症状が進行していく。避難所では、周りの人も高齢者の状態の変化に気を配ってほしい」と話しています。

    ホームページのアドレスは、http://www.japanpt.or.jp/です。

    頑張りすぎないで

    避難所生活が長引けば、体だけでなく心の疲れもたまります。「不自由なことや体の疲労があっても、わがままを言ってはいけない」と我慢していませんか。

    何か困ったことがある場合は、行政の担当者やボランティアなどに相談し、ひとりで抱え込まないようにしてください。

    避難所で生活する際やボランティアとして避難所で活動する機会があったときは、具合が悪くなる兆候がある人がいないかどうか、自分自身が気づかない間に体調を崩していないかどうか、注意してください。

    松島さんは「避難所では周囲の目があるが自宅に避難している高齢者などは周囲が気づきにくい。自宅に避難している高齢者は特に熱中症に注意が必要で、見回りなどが大切になってくる」と話しています。


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