パナソニック 人事担当者に聞く

「お客さんのためになっている?」から問い直す

2021年04月01日
(聞き手:石川将也 白賀エチエンヌ)

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創業100年を超える巨大メーカー、パナソニック。新たな価値を生み出そうと変化のまっただ中です。家電だけじゃないビジネス。ユーザー視点で考える「デザイン思考」の導入。パナソニックの変化を就活生が聞きました。

MaaS

学生
白賀

よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

パナソニック
西尾さん

まず挙げていただいたのがMaaS。これってそもそもどういう意味ですか?

MaaSというのは「Mobility as a Service」という言葉の略です。

対応いただいたのは、パナソニック 採用担当の河野安里沙さん、石黒正大さん、西尾藍さん、王瑞さん(左上から時計回り)

乗り物ってただ人を運ぶ道具ではなくて、ひとつのサービスとしてあり方が変化しているんです。

MaaS

自動車を所有する「モノ」としてではなく、利用する「サービス」と捉える考え方。すでに実用化されているカーシェアリングのほか、車と公共交通機関、ホテルでの宿泊などをひとつなぎに提供するサービスなどを指す。

なるほど、ではMaaSをニュースに選んだ理由は何ですか?

世の中がどんどん変化している中で、自動車業界でも100年に1度の大変革が起こっていると言われています。

パナソニックは車メーカーじゃないからこそできる大変革への貢献があるんじゃないかと、自動車業界にも役立とうとしているんです。

なぜパナソニックが自動車に?

パナソニックって家電の会社っていうイメージがすごく強いと思うんですよね。

学生
石川

そう思ってました、正直。

でも、実は家電の領域って売り上げ全体の3割ぐらいなんです。

自動車以外にも、例えばロボティクス×AIみたいなことをやってたり、精密機器やソフトの開発もやっています。

あとは住宅もつくっていて、その家の中の床材やトイレ、お風呂なども扱います。

えっ、そうなんですか?

パナソニックがつくる 溶接用ロボット

多分みなさん車と家電って全く別物っていう考えがあると思うんですけど。

パナソニック
河野さん

車って電気で走るようになったとたん、広い意味では家電みたいなものなんですよ。

電気を使っているから。

すると、ガソリン車ではなかったことも起こってくるんですよね。

例えばネットワークにつながれば、悪い人にハックされちゃう可能性もあります。

でもパナソニックはパソコンやテレビなどの情報機器をずっと作ってきたんですよ。

情報機器ってネットワークにつながることが前提なので、セキュリティーの知見をいかして自動車メーカーさんと協業していくことができます。

なるほど。

さらに、自動運転ってなってくると極論、運転席がいらなくなるじゃないですか。

そうすると、車が「移動するリビングルーム」のような暮らしの空間になるんです。

リビング空間の心地よさだったら、パナソニックが100年培ってきた事業の知見をいかせます。

実際に何か進めているプロジェクトってありますか?

もっと先の話になりますが、完全自動運転が実現した未来の移動空間というコンセプトで、「SPACe_L」というモビリティを作っています。

車の中を1つのリビングルームとして捉えるっていうご提案です。

開発中の「SPACe_L」 車内には運転席がなく、大画面で映像も楽しめる

窓がディスプレイになっていて動画やショッピングを楽しめたり、車内のセンサーが血流や体温を検知して、その人に適した室温にしたりします。

すごい。それができたら強みになりそうですね。

アイデアベースではあるんですけど、今できることじゃなくて未来にあったらいいなっていうものを起点にしていて。

アイデアの種になるダイヤの原石みたいな技術が社内にあるので、それを掛け合わせてどれだけおもしろい事業をつくれるかと考えています。

デザイン思考

次に「デザイン思考」ということですが、デザイン思考って何なのかというところから教えてください。

「デザイン思考」は、もともとはデザイナーやアートディレクターの行動や考え方の1つです。

パナソニック
王さん

ユーザーの立場・顧客のニーズに寄り添って、共感を満たすことを大事にしています。

デザイン思考
デザインに関わる人たちの考え方。常にユーザー視点でものを考えることや、まずプロトタイプをつくってみること、「なぜ?」と理由や背景を考え続けることなどが重要だとされる。ビジネスの世界でも戦略段階から役立てようと注目が高まっている。

なるほど。では、なぜデザイン思考に注目しているんですか?

多分、何十年か前までは「最高の品質のものを最高の形で出す」っていうのが、世の中から求められたことだったと思うんです。

けど今、家電量販店とか行っても大きく機能が差別化されているものってあまりなくて、ほとんど一緒だから値段が安いものを選ぶ人も多いんじゃないでしょうか。

そうかもしれません。

例えば電子レンジなら温められたらいいという人も多いのに、いろんな機能がついていて押したことないボタンもありますよね。

いろんな機能を追加していった結果、操作が複雑になって使いにくくなってしまったんです

でも、「それって本当に今の時代のお客さまのためになってるの?」って振り返った結果、考え方から変えないといけないってなったんです。

ユーザーの視点に立って「モノ(製品)」だけでなく「コト(体験)」までつくる、「デザイン思考」が重要視されています。

なるほど!

メーカーとか電機業界の仕事の進め方で何か足りない部分があったんですか?

デザイン思考では、仮説検証しながらアップデートしていくっていうのが、1つのポイントになっているんですね。

デザイン思考を学ぶ社内ワークショップ

完成度が7割、8割でも、1回、商品として出してみる。

そして、お客さんのコメントをもらって、またアップデートしてっていうのを繰り返して1人1人のお客さんにとってよりよいものを作るというような。

でも、これまでの歴史とか社会的責任もあって、完璧じゃないものを出すっていうことに対するハードルが特にメーカーは高いんです。

そうだったんですか。

ビジネスって計画どおりに進めようとしても、それがそのまま大きくなるって多くはないと思うんです。

パナソニック
石黒さん

例えばアマゾンはもともと本だけを取り扱っていたけど、今はすごく幅広い商品を手がけていたりとか。

ウーバーももともとは高級リムジンの配車サービスだったのが、食べ物まで運び始めて。

こうして、お客様がどういう使い方をしているか常に検証していく。

挑戦のサイクルをあげるっていうか、そういう視点って大事なんですよね。

デザイン思考ってメーカー全体で求められているんですか?

価値を提供する相手が存在しないと、ビジネスってできないじゃないですか。

なので、全ての業界に必要ではないのかなと思っています。

学生目線ですと大切なのは分かるのですが、抽象的でどうやって身につければいいか分かりません。

多分学生さんって気付いた時からスマホがあって、何でも調べたらグーグルの中に答えがあるっていう状態じゃないですか。

けど、これから必要とされる、まだ世の中にないものってグーグルの中にないですよね。

そうですよね。

じゃあ、何が大事かっていうと「観察」することです。

スマホをずっと見るってことから離れて、例えばカフェで「この人作業しづらそうだな」「何に困っているんだろう」と観察してみる。

まずは人に興味を持って、何か見えていない「ペイン」があるかもと癖をつけるっていうことは学生のうちでもできるかもしれません。

ぜひ、日々心がけてみます。

すごく刺さりました!

田中将大投手 日本復帰

最後のニュース、田中将大投手の日本復帰を挙げてもらいましたが、こちらはどうしてですか?

僕が野球が好きだからです 笑

本当は田中投手を通じて、キャリアの話をしたくて。

田中投手の楽天復帰会見(画像:共同通信社)

田中投手のどういうところがキャリアと結び付くんですか?

復帰会見でおっしゃっていたんですが、田中投手はもともとはニューヨーク・ヤンキースに残ってプレーを続けたいって意向だったけど、それがかなわない現実に直面されたんですね。

必ずしも自分がやりたい環境で挑戦ができなかった時、どう整理して次のキャリアを考えようとしたのかなってところがすごく興味深いなって思ったんです。

たしかに。

これ学生さんもそうなんですけど、就職活動をしてる時って第1志望の会社があっても必ずしも結ばれるわけではなくて、違う道に行くこともあるかと思うんです。

田中投手は自分がどんな思いを大事にしたいのかということにすごく向き合っていて。

日本の野球ファンの前で投げられるっていうワクワクとか、あとは東日本大震災からちょうど10年。

自分にとって何か意味があるタイミングなんじゃないかって感じたと。

そういった目的をつくる能力、「意味づけ力」がすごい長けてるんだって思ったんです。

そうなんですね。

社会人も一緒ですが、いつでも無条件にやりたい仕事に挑戦できるわけじゃないですから。

そこに対する「意味づけ力」ってすごくポイントですね。

キャリアってどういう基準で選べばいいんだろうって悩んでいる就活生も多いので、参考になります。

あと、楽天で今年は絶対優勝するんだって思いもいいですよね。

3年先こうありたいとかビジョンを描くことは大切ですが、そのとおりにならないこともあります。

はい。

そんな中でも、まず目の前のことに一生懸命全力で戦うってすごい大事なんですよね。

この不確実な時代にこそ、積極的に飛び込んでいける柔軟な意思決定、そのうえでやるからにはやりきるっていう意志

キャリアに向き合う中できっと参考になると思います。

とはいえ就活生にとって、果たしてこの選択が自分にとって満足できるのかって判断するのはすごく難しいと思うんです。

そうですね。やってみないと分からないところがありますし、入社してから見えてくるものもあると思います。

自分がワクワクして挑戦してみたいか、気持ちがどうドライブされてモチベーションを高く持てるかっていうところが1歩目としては大事なんだろうなと思います。

個人的には自分がやった仕事で誰かが喜んでくれるって、すごくシンプルですけど大事な切り口なんじゃないかなと思っていて。

「あー、何かいいことしたな」「何か嬉しかったな」そんな小さい積み重ねでもいいと思うんです。

誰かを喜ばせるって大切なことですね。

ありがとうございました!

編集:加藤陽平 撮影:堤啓太

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