2021年02月15日
(聞き手:伊藤七海 本間遙)
私たちの身近にあるようで、実は詳しく知らない地方公務員の仕事。どんな仕事をしているの? やりがいってどんなところ? 人口約150万人の政令指定都市、神戸市の人事担当者に話を聞きました。
学生
本間
そもそも、地方自治体で働くってどういうことか分からなくて。
どんなことをしているのか教えください。
あらゆる分野の仕事ができるというのが大きな特徴かなと思っています。
神戸市
粟田さん
民間だと金融やメーカーなどいろいろな業種ごとに分かれていて、出向や転職がないかぎり基本的にはその業界の仕事に携わり続けることが多いと思うんです。
一方、地方自治体の場合は民間のそれぞれの業界にリンクするような部署があるので、異動を通じてあらゆる分野の仕事を経験することができます。
神戸市役所なら、例えば商工業や観光なら経済観光局という部署、道路や河川などのインフラは建設局という形ですね。
僕は4年目になるんですけど、最初は区役所で子ども・子育て支援関係の仕事を3年間していました。
今は職員の採用試験や説明会等を行う部署に移っています。
学生
伊藤
ちなみに、公務員と民間企業との違いって何だと思いますか。
やっぱりサービスの対象が企業や消費者などに限定されていないところかなと思いますね。
公務員の場合は、神戸市役所なら神戸の市民や企業、団体など全て。
または神戸に観光等で来られる方全員が対象になってきます。
粟田さん自身はなんで神戸市役所を就職先として選んだんですか。
私が神戸市出身というのもあるんですが、仕事がすべて「神戸市を良くする」ことにつながっているのが大きなやりがいになると感じました。
あとは、どこの自治体でもそうなんですけど、基本的にはその自治体の中で仕事をすることになるので、ライフプランを立てやすいと考えました。
たしかにそうですね!
「就活生が知っておくべきニュース」として「通年採用」、「行政のデジタル化」、「新型コロナウイルス」の3つを挙げていただきました。
まずは「通年採用」を選んだ理由を教えてください。
民間企業では通年採用を始めているところが増えていますが、神戸市も2021年の秋から「通年募集枠」という名称で年間を通じた採用活動を始めることになりました。
神戸市
玉田さん
神戸市の「通年募集枠」
大学卒なら27歳以下、大学院卒なら29歳以下を対象に年間を通じて試験に申し込める。合格発表は年に4回。自治体が大学卒対象の通年募集を行うのは全国で初めて。
一般的な就活の時期って春先あたりがメインですよね。
でも、留学中の学生とか、部活動が忙しくて今までは4年生じゃなくて5年生に就活をしていたような学生とか。
研究で忙しくてその時期は就活が難しいなっていう学生の中にも、公務員になりたい人がたくさんいるのではと思っていまして。
そういった学生にも試験を用意できればと、年間を通じて募集を受け付けます。採用の時期は年2回です。
いろいろな活動をしてきた学生を入れて、柔軟な考えの職員を増やそうということですか。
今までできていなかったというわけではないんですが、これからさらに複雑化するであろう行政課題を解決していくには、さらに幅広い視点を持った人に来てもらいたいというのはあります。
そもそもの採用のスケジュールを教えていただきたいです。
就活ルールってあると思うんですけど、だいたい3月に大きな説明会があって、6月ぐらいまでに選考が終わるスケジュール。
一方、一般的な公務員試験っていうのは4月から順次始まって行きます。
地方公務員の場合は試験が始まるのは6月下旬くらいで、終わるのが8月末くらいかな。
民間企業の就活よりはちょっと後ろになっています。
もともとのスケジュールだと夏までかかるんですね。
これまでの採用のしかたでの危機感というのはありましたか。
民間企業って(採用が)どんどん早期化していますよね。
大学1年生から選考に乗れますよみたいな企業があったり。
「リファラル採用」っていって、先輩社員の紹介で採用するような取り組みをしている民間企業もあったりしますよね。
けど、公務員っていうのは公正かつ公平な試験でやっていきましょうっていうルールがあります。
はい。
そうするとリファラル採用みたいなことは当然できないですし、国が定めたルールを自治体が破るっていうのはできない。
ルールを守りながら、いかに必要な人に来ていただくかっていうところは課題として感じています。
幅広い人材を集めようと、「通年募集枠」のほかにも「特別枠」という制度を導入しています。
特別枠?
特別枠
一般枠とは別に設けられた公務員試験の対策を必要としない採用枠。民間企業への就職を希望している学生にも採用の間口を広げようと、一部の自治体が設定している。
公務員試験の勉強が必要な「一般枠」のほかに、そういった対策がいらない枠を設定しているんです。
一般枠と比べると募集人数は少ないのですが、民間企業を併願しつつ神戸市を受けることができますし、試験の時期も民間にあわせて早めに実施しています。
私もその特別枠で入りました。
学生にとってはチャンスが広がるっていうことですか。
そうですね。学生さんにとって選択肢が増えるという意味ではメリットが大きいのではないかと思ってます。
デジタル化、やっぱり課題になっているんですか。
これから人口減少が進んで社会の課題がますます多様に複雑になる中で職員の数も減っていくと、今までどおりにやっていたら間に合いません。
デジタルの力を活用して生産性を上げ、ひいては市民サービスの向上や街の魅力向上につなげていく必要があると。
デジタル化が進むと人の仕事がなくなってしまうんじゃないかと不安があるのですが。
単純労働的な業務は減っていくと思います。
例えば住民票を取りに行きたいなって思ったら、区役所に出向いて身分証明書を提示し、お金を払って受け取るというのが今までのやり方でした。
けど、今はマイナンバーカードがあったらコンビニでとれるんですよ、住民票って。
はい。
そうやってどんどんデジタル化が進んでいったら、市民の方がそもそも区役所に行く必要もなくなります。
今まで人がやっていたところを機械が補っていくことで、人手が減ることは出てくるかなと思います。
ただし、対面が必要な仕事やクリエイティブな仕事は絶対残り続けると思います。
よりクリエイティブなところ、政策を立案する部署などにシフトしていくっていうのが今後の流れになります。
デジタル化を進めていく中で何か課題が見えてきたりしましたか?
例えばハンコをなくすって言っても、法律でこの業務にはハンコが必要ですって決まってる分野もあります。
そういった法律の制約があったり、初期投資の費用がどうしてもかかってきたりします。
デジタル化だけしていけばいいっていう話でもありませんので、どう優先順位をつけていくかっていう部分ですね。
あとは、高齢者の方など機械が苦手な方もいるので、そういった方への配慮もしながらやっていかないといけない。
そうですよね。
市民の方にいろいろとご理解やご協力をいただくことがあるとは思います。
でもデジタル化が進めば、今まで漠然と続けていた「なんでこんな手続きしてるんやろ」ってことも、ガラッと解決するのではと思っています。
最後に「新型コロナウイルス」ですが、みなさんの仕事にも変化はありましたか。
コロナのような緊急事態の場合、公務員は市民のダメージをいかに軽減するか、立て直すためにどうしていくのかを考えることが必要です。
部局横断、オール神戸市としてどういう対応ができるのか。
マンパワーも(その部署に)いる職員だけでは難しい部分があるので、別の仕事をしている人がコロナ対応に従事する取り組みも進めています。
地方自治体だからこそ貢献できたことってありますか。
やはり地域のため、市民のため、企業のためにどういう対応ができるかっていうのを考えます。
例えば10万円の給付金。神戸市って150万人も市民がいるので、いかに早く支給するかが課題でした。
神戸市独自のシステムを作って乗り越えることができたんですが、こうした取り組みを通じて少しでも市民の役に立てたのではないかと思います。
コロナをきっかけに欲しい人材で改めて大事だなって思った要素ってありますか。
コロナって、今まで誰も想定してなかったことかなと思います。
新たな社会的な変化に対応して、柔軟に政策に反映する力が必要だなっていうのは痛感させられました。
最後に、働いていてやりがいや喜びを感じる瞬間というのがあったら教えてください。
いろいろ職場を経験しましたが、それぞれで大きなやりがいから小さなやりがいまで、様々なやりがいがあると思っています。
例えば役所の窓口に来られる方って何かお困り事があるのがほとんどなんですよね。
「こうしたらどうですか?」って真剣に考えてお手伝いをさせてもらって、最後に「ありがとう」の一言をいただいた時。
こういったひと言だけでも、やりがいを感じますね。
公務員の仕事って、どこまでいっても市民の方、市内の企業のためっていう理念がぶれないので、続けていてよかったなと思います。
本日はありがとうございました。
ありがとうございました!
編集:加藤陽平
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