2019年06月14日
行事への出席や有権者回り、さらには…、政治家の土日はとても忙しいのです。そんな中、“土日は休みます!”と宣言した市長がいます。そんなこと、ホントにできるのですか?
土日は休みたい!?「充電の時間に」
「4月から土日の行事はちょっと控えさせていただこうかと…ゆっくり充電の時間に充てたい」。
ことし3月末、新年度を前に行われた定例の記者会見。
“働き方改革の一環として翌4月から土日の来賓行事への出席を原則取りやめる”
福島県郡山市の品川萬里市長の発したことばに、聞いていた記者たちは一種の衝撃を受けました。
選挙で選ばれる市長。来賓行事と言えば、有権者と直接意見を交わしたり、顔を見せたりする場として、みずからへの支持を固める意味でも政治家にとっては重要なイベントの1つ。
そこに出ないなんて…現在2期目の品川市長はことし74歳。丸々1日休める日はほとんどないと聞いてはいましたが、体力的にも大変なのだろうか…。私は、決断の裏にある市長の思いや狙いをもっと知りたいと思い、取材を始めることにしたのです。
忙しすぎる市長の土日
「来賓行事の取りやめは去年の秋頃から考えていた」と語る品川市長。
土日は本当に忙しいのです。
郡山市に取材したところ昨年度1年間、市長が土日や祝日に出席した行事の数は341回。
このうち、市が主催する行事は62回。こちらは4月以降も変わらず出席を続けています。
これに対し、来賓行事は279回で市主催行事の4倍以上です。
福島県の中心部に位置し、東北新幹線の駅がある郡山市。利便性のよさから、さまざまな団体がイベントを行うため、来賓として呼ばれることが多いのだそうです。
お呼ばれする場合は、基本的には、担当の秘書職員や公用車のドライバーも一緒に動いてきたため、職員もなかなか休めませんでした。
「働き方改革」の流れの中、市長は、みずからができることを検討した結果、職員の負担が減る今回の決断に至ったのだそうです。
密着してみた!
私は、品川市長に頼み、1日密着取材のOKをもらいました。
取材日の5月のある土曜日。自宅のインターホンを鳴らすとスーツ姿であらわれた市長。周りには公用車も秘書の姿もありませんでした。
「きょうは公務が1件だけだから、JRで会場まで行く」とのこと。この日は、取りやめられない、市長としての仕事があるので出勤。でも1人で出席し、職員は休ませるというパターンの1日でした。
さっそく市長に「1人で大丈夫ですか?」とやや失礼な質問をぶつけてみると…。
「秘書やドライバーには週休2日を楽しんでもらおうかと。NHKには『鶴瓶の家族に乾杯』ってあるけど、僕が考えているのは、土日は『家族で乾杯』。こうした過ごし方をしてもらいたいね」。
むむむ、NHKの番組にかけてくるとは…。来賓行事に出なくなった4月以降、ひとりで移動する機会も多くなっているそうです。
市長の自宅から最寄りのJRの駅までは約2km。坂道も多い道をヒーヒー言いながら歩く私を横目に、足取り軽やかにスタスタと歩く市長。その姿から、体力的な理由で来賓の出席を取りやめたわけではない、とうかがい知ることができました。
これまで出席してきた来賓行事はどうしたのかと尋ねると、市長の代理で幹部が出席することもなく、必要があれば祝辞を送って対応しているとのことでした。
“休みは1年間で数えるほどだった”
今年は、10連休となった大型連休。市長自身も、7日間休みを取りました。
実は、昨年度1年間、完全オフの休みは両手で数えるほどしかなかったそうです。
市長は、もともと旧郵政省の官僚でした。当時から、激務の日々で、仕事ばかりの生活に慣れてしまい休みの日があってもどう過ごすか、なかなかいい案が思い浮かばないという品川市長。
ことしの連休も「自宅待機です」と言うので、市内の温泉でゆっくりされたらどうですか?と提案してみたら、いいアイデアだね~全然思いつかなかったよ!と喜んでいただけました。
昨年度1年間に匹敵する数の休みを新年度1か月あまりで確保するという大きな変化。
その効果か、東京から小学校入学前のお孫さんが遊びに来てくれる回数も増えたとか。
働き方改革の旗振り役ですねと尋ねると「市長がやっているから右に習えではなくて、市長の行動をどう活用するのか。市の幹部や職員が自分たちで考え、自分で日ごろの時間設計をして欲しい」とのことでした。
職員の土日の勤務時間が半減!
市長が来賓行事の出席を取りやめてから1か月あまり。随行する職員の働き方には、どのくらいの効果が出たのでしょうか。
「これが去年とことしの土日の職員の総労働時間の比較です」。
秘書課長の佐藤直浩さんが見せてくれた1枚の紙。
そこに記されていたのは「199時間半」と「97時間」という数字。市長に随行する職員とドライバーあわせて7人の土日の総労働時間は、去年の同じ時期と比べて半減していました。
「私たちが社会に出た頃、バブルの頃は『24時間戦えますか』というCMが流行した時期でした。でも今は、若い人が少なくなってくる中ですから、持続的な社会を築くため、労働環境を良くすることは非常に大事だと思っている」(佐藤直浩課長)
市長の随行担当のひとり、力丸悟さん(34)。幼稚園児から中学生まで3人の子の父親でもある力丸さん。
4月以降、土日に家族の反応に変化はあったのか聞いてみると…「近くの公園で遊ぶ時間も増えて子どもたちは喜んでくれていると思う。市長秘書の仕事もやりがいはありますが、家族も大事です」とのこと。
奥様と市長、どっちが大切ですか?と失礼な質問をさせていただいたところ「それは恥ずかしいので勘弁して下さい…!」。顔を真っ赤にして照れる姿、奥様に直接見ていただきたかったです。
1日密着してみて・・・
今回、市長に1日密着してみて、時間の過ごし方がとても理にかなっている!と思いました。この日は、昼の公務終了後、会場近くの市のフットサル場や観光物産館に寄って、市民と会話を楽しみ、しっかりと政治家としての活動も行っていました。
市民との会話を大切にするあまり、予定していた帰りの電車に乗り遅れてしまった市長。次の電車まで1時間以上駅で待ちぼうけ…というオチまでつけていただきました。
土日の催し物や式典の取材をしていると、来賓の挨拶が続き、いつになったら終わるの?と思うことが、正直よくあります。参加者に目を向けてみると、全然話を聞いていない人や目を閉じてうつらうつらしている人の多いこと…、もっと簡略できないのかなと思ってしまうことがよくあります。
品川市長の提案した働き方であれば、随行する職員やドライバーの休みも確保でき、市長も時間に縛られず自由に動き回ることができるので、新たな過ごし方として参考になるのではないかと感じました。
最終的な形は「半年後」に結論
品川市長は、働き方改革について、「試行期間」として秋頃まで半年程度続け、このやり方を維持するかどうか最終的に判断するそうです。
今回、私は福島県内のほかの12市長にもアンケートをお願いし、郡山市と同様、来賓行事の欠席を検討しているか尋ねましたが、いずれの市長も「検討はしていない」との回答でした。
「市民と直接対話できる重要な機会だから」との意見が多数を占めました。
取材した品川市長は、最近、至る所で「ワークライフバランスならぬ、ワークオブライフ」ということばを使っています。
みずからの生活のためにどう働くか。仕事のために休日にリフレッシュするのではなく、休みを楽しむために、どう仕事するか、発想の転換が必要だとの意味だそうです。前代未聞!?の市長の働き方改革。半年後の結論に注目してください。
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