目指せ!時事問題マスター

1からわかる!景気【上】好景気、不景気、景気後退って何?

2020年01月10日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈 西澤沙奈)

年が明けるとビジネスシーンで必ず話題になるのが「ことしの景気は?」。景気によって企業の業績が大きくかわるし、採用人数にも大きく影響するので、学生にも影響大。

そこで、今回の1からわかる!は「景気」について、経済部の大西デスクにそもそもから聞いてきました。

そもそも、景気って?

学生
西澤

よろしくお願いします!

そもそもから聞いていいですか?景気って、何なんでしょうか?とても、漠然としていて・・・。

なんとも正体が見えませんよね。

大西
デスク

漠然としてるんだけれども、実は皆さんの生活や就活にとっても、深い関係があるんです。

大西英嘉デスク

1993年入局。経済部では、国土交通省、財務省、鉄鋼メーカーなどを現場の記者として取材。現在は、コンビニやデパートなどの小売業や食品メーカーなど、消費者と距離が近い業界をデスクとして担当。

就活に引きつけて言うと、一般的に景気が良い時って、物がたくさん売れて企業はもうけて仕事もたくさんある

だから、人もたくさん必要で、採用を増やしますと。実際、今は学生優位の「売り手市場」って言ってるよね。

景気が良いか悪いかって言ったら、方向としては良いっていうことなんだろうと思います。

学生
勝島

良い方向ということなんですけど・・・、そもそも景気が良いとか悪いというのが、どういう状態かわからないんです・・・。

そうだよね。じゃあ、そもそもから説明します。

景気の良い状態って、まずいろんな物がたくさん売れるようになります。

で、物がたくさん売れると次にどうなると思います?

学生
伊藤

もっと物を作れる。

もうけが出る。

そう、結果的に企業はもうかるよね。

企業がもうかると、どうなります?

お給料が上がる!

はい、そのとおり。給料とかボーナスも上がるよね。

皆さんのお財布の中身が豊かになるとどうなりますか。

もっと物を買うようになる。

そう。こういうサイクルでもっと物が売れるようになると、もっと企業がもうかって給料も増えていって。

そのサイクルを繰り返すのが、「経済の好循環」っていいます。

政府が「経済の好循環をつくる」って言っているのは、このことなんです。

景気が悪い時は、この逆を考えればいいよね。

物が売れません。すると、企業は…?

もうからない。

そう。もうからないだけじゃなくて、物が売れないから仕事もあまりない。すると、採用を減らす

それだけじゃ足りなければ、リストラってなっちゃいますよね。雇用にやっぱり、響いてくる

給料も上がらないので、もっと物が売れなくなる。こういうサイクルが続いてしまいます。

景気がわかるデータとは?

今の景気はどんな状況ですか?

回復が続いているとされているんだけど、ちょっとこの先どっちに行くかわからない、微妙な時期にあると思います。

良いか悪いかどっちつかずな状態なんですか。あまり実感がないです。

どういう数字を見て判断するんですか?

今の景気がどういう状態にあるのかは、政府が毎月、「月例経済報告」っていうのを出してるんです。

月例経済報告

政府の公式な景気認識。個人消費や設備投資、輸出入などの指標をもとに、毎月、関係閣僚会議で了承を得て公表される。

今の景気はどうかっていう政府のオフィシャルな見解はこれなんだよね。

例えば10月だと・・・。

2019年10月の月例経済報告

「輸出を中心に弱さが長引いているものの、緩やかに回復している」(10月の景気判断)

すっごい微妙・・・。

おみくじみたい。

これ読むと、景気が良いか悪いかどっちか、なんかよくわからない感じがしない?

なんか、ごまかしているような感じ。

「輸出の弱さ」なのか、景気自体の弱さなのか・・・。

すごくまどろっこしいよね。景気は良いんだけど、すごい微妙だなっていうのを表しているからこうなる。

「輸出に弱さ」っていうのは、例えば国内で作った自動車をアメリカに売るとか、そういう動きが弱くなっているという意味。

そういう状況はあるけれども、全体でみると「景気は緩やかに回復している」と。

なるほど。

でもね、これはあくまで政府の見方であって、本当に今、拡大が続いているのかってわからないんですよ。

えっ、そうなんですか?

それを決めるのは、別の組織。内閣府の「景気動向指数研究会」。

学者とかが集まって、だいたい1年後に判定するんですよ。

結局1年たって、こうでしたって出すんですか。

1年たたないとわからない。ある程度、データが集まって判断をする。

それくらい難しいってことなんです。

事前にちょっと勉強したんですけど、「月例経済報告」に書いてあることと、「景気動向指数」という数字では言ってることにずれがあると。

景気動向指数

景気に敏感だとされる28項目の経済指標の動きをもとに、機械的に景気の基調判断を導く。2019年8月に判断を「悪化」に下方修正し、最新の10月分まで「悪化」のまま。

「景気動向指数」って景気の状況をみる指標のひとつでね。

景気動向指数って何かっていうと、景気の波の矢印の方向がどっちなのか、その方向を見極めるための指数なんですよ。

景気に敏感ないろんな統計を加工して指数を出してるんだけど、景気は今どうなのかっていうのは一致指数の赤のところを見てほしい。

ちょっと下がってるよね。

ほんとだ。

「景気動向指数」だと、基調判断としては、景気後退の可能性もあるという判断が出てる。

これは機械的に出るから裁量の余地はない。

「景気動向指数」は機械的に決まる・・・。

じゃあ、「月例経済報告」は話し合いで決めるんですか?

もちろんデータもたくさん使ってるけど、総合的に判断するのは機械じゃなくて人間です。だから裁量の余地は多少ある。

そのメンバーは総理大臣に財務大臣でしょ。あと日銀の総裁。そうそうたる日本の経済政策をつかさどる人がみんな出る場で決まる。

人が決めるからこそ、判断としては重たいものなんだ。

そこで「回復している」って言われたら、してるのかなって思うかも。

そこはわからないけれども、景気は気からっていうからね。

じゃあ、今の景気を知りたい時は、どちらを見たほうがいいと思いますか?

専門的な観点からいうと「景気動向指数」。景気の方向がどっちなのかっていうのは「景気動向指数」のほうが正確かな。

街角の景気を知るには「景気ウォッチャー調査」

どうしても景気のデータって数字ばっかりで無味乾燥でつまらなく感じてしまうんだけど。

ひとつだけ、ちょっと肌触りを感じられるものがある。それは、「景気ウォッチャー調査」っていうもの。

景気ウォッチャー調査

内閣府が実施する、小売店やタクシー運転手など2000人余りに景気の実感を聞く調査。10月の調査では「良い」と答えた人から「悪い」と答えた人を引いた指数が36.7となり、8年5か月ぶりの低水準に落ち込んだ。

全国のいろんなタクシー運転手さんとか、スナックのママさんとか、アパレルの小売の店員とかに「今の景気どうですか?」って全国で聞きまくってる。

へー!けっこう身近ですね。

わりと今の時代を映し出している。

例えば、自動車販売店だと、あおり運転のニュースがあって「ドラレコが売れまくってます」とか、ラグビーワールドカップがあるんで「ビールがよく売れてます」とか。

これも月に1回調べているんですか?

そう。全部インターネットでも見れますよ。

やっぱり気になるのは、採用を絞り始めたっていう回答だね。

それは見るべきかも。

就活生は特にどの項目に注目するといいですか?

例えば、関東の企業に就職するなら関東の人材派遣業のコメントとか見てみるとおもしろいかもしれないね。求人の動きとか。

「景気ウォッチャー調査」2019年 9月調査結果

ほんとだ。なかなか人が集まらないって書いてあります。

景気の肌触りが感じられるよね。

ここまでは、そもそも景気とは何か聞きました。バブル景気やリーマンショックの実態や、これからの景気の行方について、以下の記事で解説しています。ご覧ください。

1からわかる!景気【中】バブル景気・リーマンショックって何?

1からわかる!景気【下】オリンピック後は?就活への影響は?

 

編集:加藤陽平

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