「みんなの選挙」は「子ども選挙」と同じ!

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5月16日のラジオ「マイあさ!」で「みんなの選挙」プロジェクトについてお伝えしまして、多くの反響をいただきました。
(※記事はこちらです)

いただいた反響より:
「ロービジョン、弱視のものです。『みんなの選挙』は障害のある私たちも一緒になって作っていくのだということ。とても大切なメッセージをいただきました。今後もさまざまな番組の中で、『みんなの選挙』プロジェクトが紹介されることを心から願っています」

「めしだこぶまき」さん:
「今聞くのも勉強になるけど、選挙前にこういう特集やっていたかな?」

「うろんころんススムちゃん」さん:
「議員に選挙制度を決定させるから、改善が進まないのではないかな。誰が決めるのがいいのかな?」

野村正育アナウンサー:
杉田デスク自身も緑内障による視覚障害があって、人の顔や文字を目で読み取ることが難しい状況なんですが、杉田さん、寄せられた皆さんの声どう聞きましたか?

杉田デスク:
厳しいご指摘もいただきましたけれども、うれしいご意見も、非常にどちらもありがたいと思っています。私、長い間、選挙の取材をやって来ましたけれども、どうしてもやっぱり、どちらが勝ちそうだとかですね、支持団体がどんな動きをしてるとかですね、そういういわゆる情勢ですね。そういったことに、関心が集中してしまうというところがあったんです。

野村アナウンサー:
それも大事なことですけれどもね…

杉田デスク:
ですので、このプロジェクトを始めるまで、こんなに障害があるために、投票すること自体に壁を感じてるという人がいるということを気づかなかったんですね。ですので今、特集サイトなどで役に立つ情報ということで発信しておりますので、ぜひ参考にしていただけたらなというふうに思います。

試合のルールを選手が決めるのは無理がある?

野村アナウンサー:
寄せられた声の中で「選挙制度は誰が決めればいいのか」というのはありましたけど、これについては杉田さんどうですか?

杉田デスク:
そうですね。選挙の大きな仕組みというのは公職選挙法という法律で決まっているものですから、それを変えるとなりますとね。国会の意思決定っていうのが必要になるんですね。ですけれども、やっぱり、国会議員っていうのは、その選挙を勝ち抜いてきた当事者ですので、その人たちが選挙のルールを決めるというのは、なかなか難しいものがあるんですよね。

実は統一地方選挙が終わって、4月下旬からですね、私、この公職選挙法を担当します特別委員会っていうのが衆議院と参議院にあるんですけれども、こちらの議員の人たちと、意見交換をしたんですね。

そうしたらその方たちも与野党問わずに、この問題、大変関心がありましてね。「大事な問題だね」という感想だったんです。でも今、直ちに何か法律を変えていこうということには、なかなか見通しが立っていないという状況なんですよね。

やっぱり試合のルールを選手自身が作るという難しさがあって、どうしても「これを変えると、どこどこの政党が有利になるんじゃないか?」とか、「自分たちの政党にとって何か問題はないか?」とか、そういったことになってしまうということなんですが、これは、一人一人の投票という憲法で保障された権利をどう使うかという問題ですので、そういう観点で議論が進むことを期待したいと思います。

選挙の説明は難しい

福島佑理キャスター:
杉田さんは、先月ある学会で「みんなの選挙」について講演したところ、うれしい反響があったそうですね?

杉田デスク:
日本政治法律学会という学会で「みんなの選挙」について、研究者や学生さんを相手に、質疑も交えて90分ほど話をしたんですね。その中で、私が話したテーマのひとつが、「知的障害のある方がどうやって、投票先を選ぶための情報を得ることができるか」ということだったんですよね。

といいますのも、そのような人たちにとって、なかなか「ふだんの選挙とか、政治のニュースっていうのが難しくてわからない」と。「だから、投票行くのもあきらめます」っていうような声が実はとっても多いということなんですね。

そこで私、統一地方選挙について自分で書いた原稿を、知的障害のある奈良﨑真弓さんというかたにチェックしてもらうということをしまして、その様子を動画で会場でも流しました。

このようなやりとりです。

(杉田デスク)「まもなく4年に1度の統一地方選挙の投票が行われます」
(奈良﨑さん)「杉田さん、『地方自治体』が分かんないかもしれません」
(ディレクター)「統一地方選挙が分からないから…」
(杉田デスク)「ああそうか…」

(杉田デスク)「横浜市の有権者は、市長と議員を訪ねました…」
(奈良﨑さん)「『有権者』ということが分かんない」

※記事はこちらをごらんください

野村アナウンサー:
確かに、『統一地方選挙』とか『有権者』とか、あらためてひと言で説明するとなると難しいかもしれませんね…。

子どもにわかりやすく説明する難しさと同じ

杉田デスク:
コンパクトに説明するのって難しいですよね。「統一地方選挙とは、たくさんの地方選挙が行われます」とか、そのような形で言いかえていったんですけれども。そのパネルが終わったあと、ある研究者の方に声をかけてもらって、その言葉がとっても印象的だったんですね。

福島キャスター:
どんな言葉だったんですか?

杉田デスク:
それは「『みんなの選挙』は『こども選挙』と同じですね」という言葉だったんです。

福島キャスター:
「『こども選挙』と同じ?」

杉田デスク:
この研究者の方は去年、神奈川県の茅ヶ崎市で行われた「こども選挙」というプロジェクトのメンバーだったんですね。この「こども選挙」というのは、実際の市長選挙に合わせて子どもたちも候補者たちに自分たちで考えた質問を投げかけて、その回答を見て、自分たちも投票するという取り組みです。

その研究者の方は、中心メンバーの子どもたちに「選挙とは何か」とか、あるいは「市長の仕事ってどんなこと?」っていうようなことをわかりやすく説明するという役割を担ったということなんですね。

そんな経験から、子どもたちに政治や選挙に関心を持とうと呼びかけることも、障害のある方たちに投票に行きましょうと話をすることもつながっているんだ。同じ意味なんだっていうふうに感じたということなんですね。

野村アナウンサー:
その茅ヶ崎の「こども選挙」のニュース、私も見たんですが、その中で選挙が終わったあとに、小学6年生の男の子が「茅ヶ崎市は前は自分が住んでいるところとしか思っていなかったけれど、こども選挙が終わったあとは、自分の大切なものみたいな感じでよりよくしたいと思いました」というふうに話していましたね。

杉田デスク:
そうですね、とても印象的な言葉だったんですけれども、その研究者の方からは「『みんなの選挙』の取り組みによって多くの方が政治に向き合い、町や国や世界を大切に思う。そんな機会が増えることを、願っています」と激励してもらいました。

「みんなの選挙」というのはですね。もともと、障害のある方たちを支援するということで始めたものですけれども、そこにとどまらず、選挙に壁を感じているすべての大人、選挙は関係ないと感じているすべての人たち、そしてこれから投票に行くという子どもたちに向けても、役に立つ情報を発信していきたいと感じました。

各地に広がる「みんなの選挙」

野村アナウンサー:
さて「みんなの選挙」、各地で動きが出ています。NHKの各放送局が伝えた新しい動きをご紹介します。

まず福岡放送局からですが、北九州市では知的障害のある人が不安なく投票できるよう模擬投票を実施したり、投票所でどんなサポートが必要か紙に書いて渡せるようにする選挙支援カードを作ったりしました。市と親の会が4年前から意見交換を続けてきたもので、今回の統一地方選挙では新たに投票できるようになった人が出るなど効果を上げています。

福島キャスター:
そして福島局からは、来月、7月に行われる福島市議会議員選挙に向けて、知的障害のある有権者にも、候補者の人となりや主張をわかりやすく伝えて選挙権の行使を後押ししようと、福島市選挙管理委員会と障害者の親らの団体が連携し、簡単な言葉でつづった選挙の広報紙を制作することになりました。

野村アナウンサー:
各地の動きが、「みんなの選挙」、選挙をみんなで考える取り組みにつながっていけばと思います。

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