皇室の課題

皇室には、皇位継承の安定性をどのように保っていくのかという大きな課題が残されています。

皇位継承者

皇位継承後の皇室は、天皇陛下と上皇さまのほか、16人の皇族で構成されています。

このうち皇位を継承できるのは男性皇族の3人で、皇位継承順位は、
▽1位が皇嗣となられた秋篠宮さま、
▽2位が秋篠宮ご夫妻の長男で中学1年生の悠仁(ひさひと)さま、
▽3位が上皇さまの弟で83歳の常陸宮(ひたちのみや)さまとなります。天皇陛下や秋篠宮さまの子の世代では、悠仁さま1人です。

今の制度のまま、将来、悠仁さまが即位された場合、悠仁さまに男のお子さまがなければ皇位継承者がいなくなるおそれがあります。

皇族数の減少

皇族数の減少という課題もあります。

現在の制度では、女性皇族は天皇や皇族以外の男性と結婚すると皇室を離れることになっています。

皇室の6人の未婚の女性皇族のうち5人は成年に達していて秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまは小室圭さんとの婚約が内定しています。

皇族は天皇陛下を支え、被災地のお見舞いや国際親善など、さまざまな分野で役割を担っていますが、このままでは数が足りなくなり、皇室がこれまでどおりの活動を続けられなくなることも予想されます。

これまでの議論

こうした課題を受けて皇室制度を改めるための議論がたびたび行われてきました。

平成17年には、当時の小泉総理大臣の私的諮問機関が、▽女性とその子どもの女系にも皇位の継承を認めることや、▽女性の皇族が天皇や皇族以外の人と結婚した場合でもそのまま皇族にとどまり、「女性宮家」を創設することなどを盛り込んだ最終報告書をまとめ、政府はこれに沿って皇室典範の改正案の検討を行いました。

有識者会議の吉川弘之座長(左)から報告書を受け取る小泉首相

しかし、皇室にとって41年ぶりとなる男のお子さまとして悠仁さまが誕生されたこともあり議論は立ち消えになりました。

平成23年には、宮内庁長官が女性皇族が結婚で皇室を離れ、皇族の減少につながっている現状を解消することが緊急性の高い課題だという認識を政府に伝えました。

これを受けて政府は、有識者へのヒアリングを行ったうえで論点整理を公表し、女性皇族が結婚後も皇室にとどまれる「女性宮家」の創設の検討を進めるべきだとしたうえで、皇族ではなくなっても、国家公務員として皇室の活動に参加できる案も盛り込みました。

政府は皇位継承の問題とは切り離して検討を進めましたが、「女性宮家」は女系天皇の誕生につながるとして慎重な意見が根強くあったほか、戦後、皇籍を離れた旧宮家の男系男子の子孫から希望する人の皇族復帰を検討するべきだといった意見も出されました。こうした中で政権が交代し、制度の改正には至りませんでした。

しかし、上皇さまの退位などを検討した政府の有識者会議は平成29(2017)年の最終報告で、退位のあと、皇族数の減少への対策が一層先延ばしにできない課題になってくると指摘し、「速やかに検討を行うことが必要であり、今後、政府をはじめ、国民各界各層において議論が深められていくことを期待したい」としました。

有識者会議の今井敬座長(右端)から最終報告を受け取る安倍首相(平成29年(2017)4月)

そして、上皇さまの退位に向けた特例法をめぐっては衆参両院の委員会が安定的な皇位継承を確保するための課題や「女性宮家」の創設などを、特例法の施行後、つまり上皇さまが退位されたあと、速やかに検討することなどを求める付帯決議を可決しました。

公務の負担増 今後の議論は

皇位継承後は、天皇皇后両陛下は上皇ご夫妻が担われてきた公務を原則としてすべて受け継ぐとともに、皇太子夫妻として臨んできた公務の一部も引き続き担われています。

秋篠宮ご夫妻も両陛下が臨まれてきた公務の多くを受け継ぐ一方で、以前から出席してきた行事にも引き続き臨まれるなど、忙しさが増しています。

皇族数の減少を背景に皇室における公務の負担が増加している現状も踏まえ、今後、皇室制度をめぐる議論がどのように進むか注目されます。

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